プライマリーヒト細胞を用いた化学物質曝露・遺伝子発現に関する研究

文献情報

文献番号
200501150A
報告書区分
総括
研究課題名
プライマリーヒト細胞を用いた化学物質曝露・遺伝子発現に関する研究
課題番号
H15-化学-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 昭夫(自治医科大学 臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 康雄(自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門)
  • 永井 秀雄(自治医科大学 外科学)
  • 安田 是和(自治医科大学 外科学)
  • 森田 辰男(自治医科大学 泌尿器科学)
  • 田中 亨(自治医科大学 病理診断部)
  • 間野 博行(自治医科大学 ゲノム機能研究部)
  • 篠原 歩(東北大学大学院 システム情報学)
  • 香山 不二雄(自治医科大学 保健科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
38,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、プライマリーヒト細胞を化学物質に曝露させた際の遺伝子発現プロファイルを DNAマイクロアレイを用いて網羅的に明らかにし、それに基づいて化学物質の安全性を、従来の毒性実験よりも正確かつ詳細に予測する新しい毒性評価法の確立に寄与できる遺伝子発現情報データベース構築を目的とする。
研究方法
1. 日本人プライマリーカルチャーの遺伝子発現における個体差
これまで11人分の患者由来の細胞をプライマリーカルチャーにすることができた。培養した後、基礎的な遺伝子発現を解析した。
2. 化学物質曝露遺伝子発現実験
10種類の化学物質について、経時的に発現データを得て、前年度までの化学物質データベースと併せて18種類の化学物質についてデータベース化した。
3. ヒ素化合物の細胞毒性メカニズム
arsenic trioxide発現実験により得られたデータをクラスタリングして、HMOX1遺伝子に注目し、機能解析を行い、ヒ素毒性メカニズムへアプローチを試みた。
結果と考察
1. 日本人プライマリーカルチャーの遺伝子発現における個体差
遺伝子発現における個体差を様々な角度から検討した。
2. 化学物質曝露遺伝子発現実験
18種類の化学物質について、経時的に発現データを得て、データベース化した。
3. ヒ素化合物の細胞毒性メカニズム
ヒト腎由来細胞株へHMOX1の発現を誘導することによりaresenic trioxideによる細胞毒性が軽減できた。HMOX1の機能よりarsenic trioxideの殺細胞活性が酸化ストレスであると推測し、arsenic trioxideによる活性酸素の生成を検討したところ、細胞が存在する系においてarsenic trioxideは活性酸素の発生を誘導していることが明らかとなった。ヒ素化合物の毒性の少なくとも一部は活性酸素種の発生によるものと結論づけた。
結論
化学物質曝露後のヒト初代培養細胞の網羅的遺伝子発現研究であり、日本人由来のこのようなデータベースは他に類を見ない。メカニズムへのアプローチにも有用である例が示された。このような遺伝子発現研究を行うための環境整備も行って来た。今後もデータベースを充実させることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200501150B
報告書区分
総合
研究課題名
プライマリーヒト細胞を用いた化学物質曝露・遺伝子発現に関する研究
課題番号
H15-化学-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 昭夫(自治医科大学 臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 康雄(自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門)
  • 篠原 歩(東北大学大学院 システム情報科学)
  • 永井 秀雄(自治医科大学 外科学)
  • 安田 是和(自治医科大学 外科学)
  • 森田 辰夫(自治医科大学 泌尿器科学)
  • 田中 亨(自治医科大学 病理診断部)
  • 間野 博行(自治医科大学 ゲノム機能研究部)
  • 香山 不二雄(自治医科大学 保健科学)
  • 徳江 章彦(自治医科大学 泌尿器科学 (本研究分担当時))
  • 齋藤 健(自治医科大学 病理診断部 (本研究分担当時))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、プライマリーヒト細胞を化学物質に曝露させた際の遺伝子発現プロファイルを DNAマイクロアレイを用いて網羅的に明らかにし、それに基づいて化学物質の安全性を、従来の毒性実験よりも正確かつ詳細に予測する新しい毒性評価法の確立に寄与できる遺伝子発現情報データベース構築を目的とする。
研究方法
1. RNA及びデータの質の評価
腎臓尿細管由来細胞を、形態・Glut2発現・γGTP発現で評価した。RNAの質の信頼性については、サンプル群のPercent Present及びハウスキーピング遺伝子(GAPDHおよびアクチン(HSA))の3'/5'比で評価した。
2. 日本人プライマリーカルチャーの遺伝子発現における個体差
これまで11人分の患者由来の細胞をプライマリーカルチャーにすることができた。培養た後、基礎的な遺伝子発現を解析した。
3. 化学物質曝露遺伝子発現実験
18種類の化学物質につき、経時的に発現データを得て、データベース化した。
4. ヒ素化合物の細胞毒性メカニズム
arsenic trioxide発現実験により得られたデータをクラスタリングして、HMOX1遺伝子に注目し、機能解析を行い、ヒ素毒性メカニズムへアプローチを試みた。
5. 転写因子検索ソフト
遺伝子発現の変化は、その遺伝子の転写を制御している転写因子の活性が反映されている場合が少なくない。我々の分担研究の一つとして上流配列を検索するソフトウェアを開発した。
結果と考察
1. RNA及びデータの質の評価
得られた初代培養細胞および発現研究に用いたサンプルの質を評価できるデータを示し、データの信頼性を評価できるようにした。
2. 日本人プライマリーカルチャーの遺伝子発現における個体差
遺伝子発現における個体差を様々な角度から検討した。
3. 化学物質曝露遺伝子発現実験
18種類の化学物質につき、経時的に発現データを得て、データベース化した。
4. ヒ素化合物の細胞毒性メカニズム
ヒ素化合物の毒性の少なくとも一部は活性酸素種の発生によるものと結論づけた。
5. 転写因子検索ソフト
転写因子検索ソフトを開発し、これを公開した。
結論
化学物質曝露後のヒト初代培養細胞の網羅的遺伝子発現研究であり、日本人由来のこのようなデータベースは他に類を見ない。このような遺伝子発現研究を行うための環境整備も行って来た。今後もデータベースを充実させることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501150C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人ヒト初代培養細胞を用い、化学物質曝露遺伝子発現プロファイルを 網羅的に明らかにし、化学物質の安全性を予測する新しい毒性評価法の確立に寄与できる遺伝子発現情報データベースを構築した。約39,000個の転写産物の発現情報を用い、18種類の化学物質曝露後の発現データについてデータベース化した。日本人ヒト初代培養細胞を用いた網羅的化学物質曝露遺伝子発現データベースとしては国内唯一のものである。
臨床的観点からの成果
日本人ヒト初代培養細胞は様々な規制のため、商業的に入手することは困難である。一方で、医薬品曝露に対する生体反応には人種差があることが様々なレベルで知られており、海外調整済みの初代培養細胞で得た発現情報は日本人とは異なる可能性が否定できない。本研究では、手術時にやむを得ず切除される非病変部の組織を処理し、日本人由来の初代培養細胞を得た上で、化学物質曝露・遺伝子発現研究に応用した。
ガイドライン等の開発
データベース構築が目的であるため、データの信頼性の確保・ノーマライゼーションの手順の標準化が重要である。本研究を通して様々なノーマライゼーションの応用範囲についてディスカッションを行った。遺伝子発現研究において、データの信頼性にはRNAの状態が大きな因子であることが明らかとなった。RNAの状態を評価し、また発現情報へ反映されているか否かについての基礎的な検討を行った。
その他行政的観点からの成果
化学物質曝露後のヒト初代培養細胞の網羅的遺伝子発現研究であり、日本人由来のこのようなデータベースは他に類を見ない。今後もデータベースを充実させることが望まれる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Koinuma, K., Yamashita, Y., Liu, W., et al.
Epigenetic silencing of AXIN2 in colorectal carcinoma with microsatellite instability
Oncogene , 25 (1) , 139-146  (2006)
原著論文2
Choi, Y.L., Moriuchi, R., Osawa, M., et al.
Retroviral expression screening of oncogenes in natural killer cell leukemia
Leuk. Res , 29 (8) , 943-949  (2005)
原著論文3
Fujiwara, S., Yamashita, Y., Choi, Y.L., et al.
Transforming activity of the lymphotoxin-beta receptor revealed by expression screening
Biochem. Biophys. Res. Commun , 338 (2) , 1256-1262  (2005)
原著論文4
Ishikawa, M., Yoshida, K., Yamashita, Y., et al.
Experimental trial for diagnosis of pancreatic ductal carcinoma based on gene expression
Cancer Sci , 96 (7) , 387-393  (2005)
原著論文5
Kaneda, R., Ueno, S., Yamashita, Y., et al.
Genome-wide screening for target regions of histone deacetylases in cardiomyocytes
Circ. Res. , 97 (3) , 210-218  (2005)
原著論文6
Kisanuki, H., Choi, Y.L., Wada, T., et al.
Retroviral expression screening of oncogenes in pancreatic ductal carcinoma
Eur. J. Cancer , 41 (14) , 2170-2175  (2005)
原著論文7
Koinuma, K., Kaneda, R., Toyota, M., et al.
Screening for genomic fragments that are methylated specifically in colorectal carcinoma with a methylated MLH1
Carcinogenesis , 26 (12) , 2078-2085  (2005)
原著論文8
Numata A, Shimoda K, Kamezaki K, et al.
Signal transducers and activators of transcription 3 augments the transcriptional activity of CCAAT/enhancer binding protein a in G-CSF signaling pathway.
J Biol Chem , 280 (13) , 12621-12629  (2005)
原著論文9
Ohki, R., Yamamoto, K., Ueno, S., et al.
Gene expression profiling of human atrial myocardium with atrial fibrillation by DNA microarray analysis
Int. J. Cardiol. , 102 (2) , 233-238  (2005)
原著論文10
Takada, S., Mano, H. & Koopman, P.
Regulation of Amh during sex determination in chickens: Sox gene expression in male and female gonads
Cell. Mol. Life Sci. , 62 (18) , 2140-2146  (2005)
原著論文11
Takayashiki N, Kawata H, Kamiakito T, et al.
Transcriptional repression of fibroblast growth factor 8 by transforming growth factor-beta in androgen-dependent SC-3 cells.
J Steroid Biochem Molec Biol , 96 (1) , 1-12  (2005)
原著論文12
Tsukahara M, Nagai H, Kamiakito T, et al.
Distinct expression patterns of claudin-1 and claudin-4 in intraductal papillary-mucinous tumors of the pancreas.
Pathol Int , 55 (2) , 63-69  (2005)
原著論文13
Shimada N, Ishii T, Imada T, et al.
A neutralizing anti-fibroblast growth factor 8 monoclonal antibody shows potent antitumor activity against androgen-dependent mouse mammary tumors in vivo.
Clin Cancer Res , 11 (10) , 3897-3904  (2005)
原著論文14
大島康雄, 藤村昭夫
日本人組織を用いたトキシコゲノミクス研究
臨床薬理 , 36 , 11-12  (2005)
原著論文15
Tsutsumi C, Ueda M, Miyazaki Y, et al.
DNA microarray analysis of dysplastic morphology associated with acute myeloid leukemia
Exp. Hematol. , 32 (9) , 828-835  (2004)
原著論文16
Choi YL, Makishima H, Ohashi J, et al.
DNA microarray analysis of natural killer cell-type lymphoproliferative disease of granular lymphocytes with purified CD3(-)CD56(+) fractions
Leukemia , 18 (3) , 556-565  (2004)
原著論文17
Koinuma K, Shitoh K, Miyakura Y, et al.
Mutations of BRAF are associated with extensive hMLH1 promoter methylation in sporadic colorectal carcinomas
Int J Cancer , 108 (2) , 237-242  (2004)
原著論文18
Kaneda R, Toyota M, Yamashita Y, et al.
High-throughput screening of genome fragments bound to differentially acetylated histones
Genes Cells , 9 (12) , 1167-1174  (2004)
原著論文19
Ohki-Kaneda R, Ohashi J, Yamamoto K, et al.
Cardiac function-related gene expression profiles in human atrial myocytes
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 320 (4) , 1328-1336  (2004)
原著論文20
Ohki R, Yamamoto K, Ueno S, et al.
Transcriptional profile of genes induced in human atrial myocardium with pressure overload
Int. J. Cardiol. , 96 (3) , 381-387  (2004)

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-