ダイオキシン類等による胎児期曝露が幼児の発達に及ぼす影響の前向きコホート疫学

文献情報

文献番号
200501146A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類等による胎児期曝露が幼児の発達に及ぼす影響の前向きコホート疫学
課題番号
H15-化学-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 洋(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 徹(東北大学教育学研究科発達障害学)
  • 岡村 州博(東北大学医学系研究科周産期医学)
  • 村田 勝敬(秋田大学医学系研究科環境保健学)
  • 堺 武男(宮城県立こども病院)
  • 斎藤 善則(宮城県保健環境センター)
  • 仲井 邦彦(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
53,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類、PCBs、メチル水銀などの環境由来化学物質は食物連鎖により魚に生物濃縮する。人は主にその魚の摂取を介して比較的高い曝露を受けており、中枢神経系が発生、発達期にある胎児および新生児において感受性が高いと考えられ、その健康リスクが危惧されている。本研究では環境由来化学物質による周産期曝露に起因した健康影響を明らかにするために、周産期における化学物質曝露をモニタリングするとともに、出生児の発達、特に認知行動面の発達を追跡する前向きコホート調査を計画した。
研究方法
599名の新生児の登録を得て調査研究を進めてきた。本年度は、生後18ヵ月で実施する新版K式発達検査およびBayley Scales of Infant Development(BSID)を終了するとともに、生後30ヵ月および生後42ヵ月における発達調査を引き続き進めた。化学物質曝露指標は、臍帯血PCBs分析を高分解能GC/MSにより継続した。母親毛髪総水銀、臍帯血および母体血甲状腺ホルモン関連指標の分析をすでに終了しており、食物摂取頻度調査から得た母親の魚摂取量を用いて、子どもの発達との関連性について重回帰分析による解析を実施した。
結果と考察
生後3日目に実施した新生児行動評価(NBAS)は、母親の総魚摂取量および背の青い魚の摂取量と、NBAS運動クラスターとの間にそれぞれ有意な関連性が見出され、母親の魚摂取が新生児の状態向上と関連することが示された。一方、母親毛髪総水銀はNBAS運動クラスターと負に相関し、メチル水銀曝露の負の効果を示唆するものと考えられた。臍帯血PCBsについては、NBASとの間に有意な関連性は観察されず、また臍帯血TSHと負の弱い関連性が認められた。次に、生後7および18ヵ月にて実施した発達検査(BSID)については、母親毛髪総水銀、臍帯血PCBs、母親魚摂取量のいずれも統計学的に有意な関連性は見出されていない。
結論
a) メチル水銀曝露による負の影響が新生児期に示唆されたが、b) PCBsによる胎児期曝露の影響は生後18ヵ月までの追跡では観察されなかった。その一方で、c) 母親の魚摂取は、少なくとも新生児期における児の状態の向上に寄与することが示唆された。本研究は子どもの発達を追跡するコホート調査であり、引き続き児の発達を追跡するとともに、化学物質の分析を継続する。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200501146B
報告書区分
総合
研究課題名
ダイオキシン類等による胎児期曝露が幼児の発達に及ぼす影響の前向きコホート疫学
課題番号
H15-化学-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 洋(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 徹(東北大学教育学研究科発達障害学)
  • 岡村 州博(東北大学医学系研究科周産期医学)
  • 村田 勝敬(秋田大学医学研究科環境保健学)
  • 堺 武男(宮城県立こども病院)
  • 斉藤 善則(宮城県保健環境センター)
  • 仲井 邦彦(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニール、メチル水銀など脂溶性および難分解性を有する環境由来化学物質は食物連鎖により魚に生物濃縮し、人は主にその魚の摂取を介して曝露を受ける。中枢神経系が発生、発達期にある胎児および新生児は化学物質曝露に対して感受性が高いと考えられ、その健康リスクが危惧されている。本研究では環境由来化学物質による周産期曝露に起因した健康影響を明らかにするために、周産期における化学物質曝露をモニタリングするとともに、出生児の特に認知行動面の発達を追跡する前向きコホート調査を計画した。
研究方法
599名の新生児の登録を得て調査研究を進めた。この3年間に、生後3日目の新生児行動評価、生後7および18ヵ月で実施する新版K式発達検査およびBayley Scales of Infant Development(BSID)を終了し、現在も生後30ヵ月および生後42ヵ月における発達調査を継続している。化学物質曝露指標は、臍帯血PCBs分析を高分解能GC/MSにより進めるとともに、母親毛髪総水銀、臍帯血および母体血甲状腺ホルモン関連指標の分析をすでに終了した。母親の魚摂取量は食物摂取頻度調査から求めた。これらの指標と子どもの発達との関連性について重回帰分析による解析を実施した。
結果と考察
生後3日目に実施した新生児行動評価(NBAS)は、母親の総魚摂取量および背の青い魚の摂取量と、NBAS運動クラスターとの間にそれぞれ有意な関連性が見出され、母親の魚摂取が新生児の状態向上と関連した。一方、母親毛髪総水銀はNBAS運動クラスターと負に相関し、メチル水銀曝露の負の効果を示唆するものであった。臍帯血PCBsは、NBASとの間に有意な関連性は観察されず、また臍帯血TSHと負の弱い関連性が観察された。次に、生後7および18ヵ月にて実施した発達検査指標(BSID)については、母親毛髪総水銀、臍帯血PCBs、母親魚摂取量のいずれも統計学的に有意な関連性は認められなかった。
結論
a) メチル水銀曝露による負の影響が新生児期に示唆されたが、b) PCBsによる胎児期曝露の影響は生後18ヵ月までの追跡では観察されなかった。その一方で、c) 母親の魚摂取は、少なくとも新生児期における児の状態の向上に寄与することが示され、魚摂取のリスク評価とリスクコミュニケーションの重要性が示唆された。本研究は子どもの発達を追跡するコホート調査であり、引き続き児の成長を追跡し健康リスクの確認を行う。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501146C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ダイオキシン類、PCBs、メチル水銀など環境由来化学物質による周産期曝露の健康影響を明 らかにするため、出生児の発達を追跡するコホート調査を進めた。メチル水銀曝露による負の影響が新生児期に示唆されたが、PCBsによる胎児期曝露の影響は生後18ヵ月までの追跡では観察されなかった。一方、母親の魚摂取は新生児期の児の状態向上に寄与することが示唆された。本研究は子どもの発達を追跡するコホート調査であり、引き続き児の発達を追跡するとともに、化学物質の分析を継続する。
臨床的観点からの成果
内分泌かく乱化学物質の曝露による子どもへの健康影響が危惧されている。今までの調査結果では、子どもの生後18カ月までの発達と、臍帯血PCBs濃度との間に統計学的な関連性は見いだされていない。ただし、母親のメチル水銀摂取と魚摂取は、生後3日目に実施した新生児行動評価(NBAS)において、それぞれ負及び正の関連性が観察されている。児の成長を追跡しさらに検証することが求められる。
ガイドライン等の開発
該当せず。
その他行政的観点からの成果
該当せず。
その他のインパクト
平成17年度厚生労働科学研究(化学物質リスク研究推進事業)シンポジウム「乳児の発育と化学物質」(平成17年11月富山、平成18年2月東京)にて成果を発表。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
42件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iwata T, Nakai K, Sakamoto M, et al.
Factors affecting had tremor and postural sway in children.
Environmental Health and Preventive Medicine , 11 , 17-23  (2006)
原著論文2
Satoh H, Nakai K, Suzuki K, et al.
A cohort study of effects of perinatal exposures to methylmercury and environmentally persistent organic pollutants on neurobehavioral development in Japanese children: Study design and status report.
RMZ-Materials and Geoenvironment , 51 , 512-515  (2004)
原著論文3
Nakai K, Nakamura T, Suzuki K, et al.
Organochlorine pesticide residues in human breast milk and placenta in Tohoku, Japan.
Organohalogen Compounds , 66 , 2567-2572  (2004)
原著論文4
Suzuki K, Nakai K, Oka T,et al.
Effects of perinatal exposure to environmentally persistent organic pollutants and heavy metals on neurobehavioral development in Japanese children: IV. Thyroid hormones and neonatal neurobehavioral status.
Organohalogen Compounds , 66 , 3150-3156  (2004)
原著論文5
Nakai K, Suzuki K, Oka T, et al.
The Tohoku Study of Child Development: A Cohort study of effects of perinatal exposures to methylmercury and environmentally persistent organic pollutants on neurobehavioral development in Japanese children.
Tohoku Journal of Experimental Medicine , 202 , 227-237  (2004)
原著論文6
Suzuki K, Nakai K, Oka T, et al.
Effects of perinatal exposure to environmentally persistent organic pollutants and heavy metals on neurobehavioral development in Japanese children: III. Maternal smoking confounds neonatal neurobehavioral status.
Organohalogen Compounds , 65 , 218-221  (2003)

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-