包括化・後発品使用・診療ガイドライン使用の中での安全性確保を指向した医薬品実態調査と病院医薬品集選択の方法論のモデル構築

文献情報

文献番号
200501136A
報告書区分
総括
研究課題名
包括化・後発品使用・診療ガイドライン使用の中での安全性確保を指向した医薬品実態調査と病院医薬品集選択の方法論のモデル構築
課題番号
H16-医薬-050
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学医学部附属病院薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊賀 立二(国際医療福祉大学大学院)
  • 内田 英二(昭和大学医学部)
  • 川上 純一(富山大学附属病院薬剤部)
  • 熊谷 雄治(北里大学東病院 )
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 北條 泰輔(国立がんセンター中央病院)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の医療環境において、特定機能病院や大学病院は包括化制度の導入や後発医薬品の使用促進、国立機関の独立法人化による医療コスト削減の必然性など大きな変化を迎えている。そこで、本研究では、医薬品の有効性・安全性に関するエビデンスやDUSによる医薬品選択の決定要因を明らかとするとともに、DPCや後発医薬品の導入、診療ガイドラインが医薬品の選択や使用状況与える影響を明らかにすることを目的とした。
研究方法
医薬品の有効性・安全性に関するエビデンスやDUSによる医薬品選択の決定要因を明らかとするとともに、DPCや後発医薬品の導入、診療ガイドラインの利用が医薬品の選択や使用状況に与える影響について検討した。
結果と考察
日本と海外における抗菌剤のDUS、および共通プロトコールによる国内の6病院における抗菌剤のDUSを実施した。WHO-ATC/DDD(Anatomical Therapeutic Chemical classification system/Defined Daily Dose)で医薬品分類項目と単位を統一化することにより、文献情報からも施設間、国家間のDUSの可能性が実証された。医薬品使用の比較が可能となったので、施設間、国家間の相違を検討し、医薬品使用に影響を与える諸因子を解析する方法論を構築することができた。また、 全国の特定機能病院を含む146施設を対象としたアンケート調査を行った。施設内の医薬品選択において、経済性を重視する傾向はあるものの、薬剤経済分析の使用はまだ不充分であることが示された。後発医薬品については、銘柄間で薬物体内動態に偏差が大きく、品質確保が今後の課題として残っているものの、包括化医療により後発医薬品使用は促進されつつあった。さらに、臨床効果や医薬経済的効果に関するエビデンスレベルの高低に関わらず医薬品は何らかのエビデンスにより選択されていることが示された。
結論
施設間、国家間の医薬品使用の比較を可能とするため、ATC/DDDを用いたDUSの方法論を構築した。本邦では医薬品選択の決定要因は複雑であり、医薬品使用実態とそれに基づく臨床的・医療経済的アウトカムやエビデンスとの関連についての調査研究を実施した。一方、診療ガイドライン間が不統一である場合もあり、適切な医薬品選択を図るためには、適切な医薬品選択を図るためには、エビデンスやその評価方法を広め、医薬品選択要因として使う必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2006-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200501136B
報告書区分
総合
研究課題名
包括化・後発品使用・診療ガイドライン使用の中での安全性確保を指向した医薬品実態調査と病院医薬品集選択の方法論のモデル構築
課題番号
H16-医薬-050
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学医学部附属病院薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊賀 立二(国際医療福祉大学大学院)
  • 内田 英二(昭和大学医学部)
  • 川上 純一(富山大学附属病院薬剤部)
  • 熊谷 雄治(北里大学東病院 )
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 北條 泰輔(国立がんセンター中央病院)
  • 渡邊 裕司(浜松医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、転換期にある日本の病院において医薬品使用実態調査(drug utilization study: DUS)を行い、安全性や有効性の情報、包括化医療やジェネリック医薬品の導入を含む医療費、さらに臨床ガイドラインなど、医薬品選択に関わる種々の因子が医薬品の使用実態や選択に対して与える影響を明らかにすることを目的とした。
研究方法
DUSの方法論を確立するための調査を実施し、複数施設において共通プロトコールで抗菌薬使用を調査した。また、DPC(包括化医療)や国立機関の独立法人化に加え、診療ガイドラインやエビデンスが医薬品の選択やジェネリック医薬品の選択に与える影響について検討し、146施設を対象としたアンケート調査を行った。さらに、安全性情報や臨床効果に関するエビデンス、それに診療ガイドラインが医薬品の選択や使用量にどのように影響するかを検討した。
結果と考察
WHOの推奨するATC/DDDにより分類法や測定単位を統一することにより国家間などの比較を行うものであるが、日本においてATC/DDDを用いて施設間の比較によるDUSが可能であることが明らかとなった。さらに共通プロトコールを用いることにより精度の高い比較研究が望まれる。アンケート調査や様々なDUSより、医薬品の選択に経済性を重視する傾向はみられたものの、先発品と後発品の品質や情報量の差異や、診療ガイドライン間などの不統一性、安全性や有効性に関するエビデンスが不足している場合もあり、日本では費用対効果などの薬剤経済学的な評価方法やエビデンスを評価していく体制が未確立であることが示された。
結論
臨床効果や医薬経済的効果に関するエビデンスレベルの高低に関わらず、医薬品は何らかのエビデンスにより選択されている。しかし、日本では薬剤経済学的な評価方法が未確立であることが問題であり、適切な医薬品選択のための要因分析が今後も必要であることが示された。同様に、後発医薬品の品質等を評価し、医薬品を選択するための体制の構築が将来的に必要と思われる。
このように、DUSを含めたエビデンスによる医薬品選択の決定要因を明らかとするとともに医薬品選択の方法論について調査・議論し、さらには医薬品使用実態とそれに基づく臨床的・医療経済的アウトカムやエビデンスとの関連についての調査研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2006-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-11-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501136C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ATC/DDDや共通プロトコールを用いて施設間の比較によるより精度の高いDUSの方法論を確立した。また、有効性、安全性、および経済性を踏まえた薬物治療の「効率」がより重要視される傾向にある現在の医療環境を背景に、後発医薬品の採否を含めた施設内の採用医薬品の決定要因を解析し、薬剤経済分析や医薬品の評価方法が本邦では不足していることを指摘することができた。
臨床的観点からの成果
施設内医薬品の採否には医薬品の経済性を重視する傾向が示されものの、全体として、薬剤経済分析の使用はまだ不充分であった。後発医薬品が医療現場への浸透を妨げる要因として、品質や情報量が挙げられているが、その問題の内容を明確化することが可能となった。さらに、適切な医薬品選択を図るためには、自らエビデンスを作り、それを広め、逆にそれを医薬品選択要因として使う必要性を示せた。
ガイドライン等の開発
ガイドラインの開発には至らなかったものの、ATC/DDDや共通プロトコールを用いて施設間の比較によるより精度の高いDUSの方法論を確立した。また、後発医薬品の採用、選択に関して問題提起をすることができた。さらに、がん治療の支持療法における日本の承認用量と欧米のガイドライン推奨用量の違いに着目し、低用量における有用性を検証しているところである。
その他行政的観点からの成果
海外の事例として代替調剤について報告し、後発医薬品の経済効果や問題点を指摘してきた本研究期間終了時に、医療政策が大幅に変更され後発医薬品への代替調剤が可能となった。今後は、医療における薬剤経済分析方法や後発医薬品の評価方法の確立に、第三者による薬剤経済分析や教育システムの開発が必要と思えた本研究の成果が参照されたいところである。
その他のインパクト
内田らの演題「薬物Xの先発医薬品と後発医薬品における薬物動態の比較(第26回日本臨床薬理学会、2005)は多くの医療系マスコミで取り上げられた。また、津谷らによるフォーミュラリーアンケートは朝日新聞社の取材を受けた(未発行)。さらに、第12回日本薬剤疫学会総会にてWHO Collaborating Centre for Drug Statistics Methodology より専門家を招聘し、WHOの提唱するATC/DDDについてワークショップを開催する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
51件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
竹村麻耶, 川上純一, 足立伊佐雄, 他
わが国における医薬品使用実態研究へのWHO-ATC/DDDシステムの適用: 比較可能性の高い測定単位の重要性
医薬品情報学 , 7 (2) , 119-120  (2005)
原著論文2
川上純一
西欧地域の医薬品制度とオランダにおける薬剤師の活動 -オランダ・ライデン大学-
東京都病院薬剤師会雑誌 , 54 (3) , 169-175  (2005)
原著論文3
川上純一, 竹村麻耶, 足立伊佐雄, 他
日本における抗菌剤の使用状況に関する薬剤疫学的検討
薬剤疫学 , 10 (1) , 36-37  (2005)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-