医療機関における血液製剤の適正使用の推進に関する研究

文献情報

文献番号
200501125A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における血液製剤の適正使用の推進に関する研究
課題番号
H16-医薬-077
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
清水 勝(杏林大学医学部臨床検査医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 巌 康秀(杏林大学医学部麻酔科)
  • 高本 滋(愛知医科大学輸血部)
  • 比留間 潔(東京都立駒込病院輸血・細胞治療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 静注用免疫グロブリン(IVIG)の重症感染症への適応、予防的血小板輸血時の血小板濃厚液(PC)の一回投与量と術中の赤血球濃厚液の適応を検討し、使用指針の改正に資する。
研究方法
1)IVIGの適応:重症感染症への適応の判断基準とされる7項目(発熱、発熱期間、白血球数、CRP、血液培養、抗生物質の反応性と投与期間)の活用頻度と基準値の在り方を検討。
2)血小板輸血:5日以上の血小板減少が予測される血液疾患にPC5単位(u)と10uを投与し、輸血効果を前方視的に比較検討。
3)術中輸血:手術前、Hb最低時と術後に血清乳酸値を測定し、輸血の有無との関係を検討。また外科医のFFP輸血への意識調査を行なう。

結果と考察
1)IVIGの適応:対象は1,512例。大部分が成人。主な疾患は敗血症、肺炎、汎発性腹膜炎、中枢神経性感染症。7項目の使用頻度は血液培養(61%)と抗生物質の反応性(51%)を除く5項目では各々90%以上で、この5項目が該当する症例数は85%、その他は30?55%であったが、各項目の基準値による評価では数?10数%が該当するのみで、適正な評価基準の設定は困難であった。今後、疾患や病態を特定し、重症の判断項目と基準値をスコア化し、前方視的に比較検討する必要がある。
2)血小板輸血:17例に血小板数2万/μl未満でPC5u 26回、10u 16回投与。増加血小板数、輸血間隔、出血傾向等に有意差はなく、週2?3回の予防的輸血では5uPCでも安全に実施できると考える。
3)術中輸血:対象は48例。輸血群(37例)では術後のHb値が術前値よりも高く、過剰輸血の可能性があった。血清乳酸値は、Hb8.0g/dl未満ヘと低下した高度貧血群(25例、内輸血群21例)のHb最低値時でも正常範囲内にあり、かなりの貧血でも血圧が維持され一般状態が良好であれば、嫌気性代謝は生じ難いと考えられ、輸血を控えうる可能性が示唆された。また外科医の殆どはFFPの使用指針の主旨を理解していたが、FFPの性状等については理解不足であった。

結論
 IVIGの重症感染症への適応を判断し評価する客観的な方策を見出し、有効性について前方視的な比較試験が必要である。予防的血小板輸血には5uPCでも有効である。術中輸血は一般に過剰の可能性があり、血清乳酸値を輸血の判断に用いうることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200501125B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関における血液製剤の適正使用の推進に関する研究
課題番号
H16-医薬-077
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
清水 勝(杏林大学医学部臨床検査医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 巌 康秀(杏林大学 医学部 麻酔科)
  • 高本 滋(愛知医科大学 輸血部)
  • 比留間 潔(東京都立駒込病院 輸血・細胞治療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 需要増加の見込まれる静注用免疫グロブリン(IVIG),血小板濃厚液(PC)及び赤血球濃厚液(RCC)について,最も使用量の多い疾患を対象に適正使用の在り方を検討し,使用指針の改定に資する。
研究方法
1)IVIGの適応:使用実態を調査し,重症感染症への適応の在り方を検討する。
2)PCの適応:予防的血小板輸血での輸血トリガー値と一回投与量の輸血効果を,前方視的に比較検討する。
3)RCCの適応:手術例の手術前、Hb最低時と術後にHb値と血清乳酸値を測定し,出血量と輸血の適正性を評価する。また麻酔科医の使用指針,外科医の周術期FFP輸血への意識調査を行なう。
結果と考察
1)IVIGの適応:アンケート調査より,自己免疫疾患と感染症での使用量が多く,前者では適応拡大の傾向があった。重症感染症(主に敗血症、肺炎、汎発性腹膜炎)への適応の判断は,7項目(発熱、発熱期間、白血球数、CRP、血液培養、抗生物質への反応性と投与期間)によっていた。各項目個々の使用頻度は高いが、基準値による評価では該当例数が少なく,実際の投与は1?2項目によって行われていると考えられた。重症感染症の判断には,症例毎の選択項目や基準値の点数化等を導入し,前方視的無作為比較試験が必要である。
2)PCの適応:血液疾患64例に5uPC196回、10uPC153回投与した。輸血トリガ-値は半数が2.0万/μl以上であり,2.0万/μl未満と1.0万/μl未満の場合に両投与量群を比較すると、CCI,輸血間隔,出血傾向に差はなかった。現行の予防的輸血では5uPCでも安全であり,PCの削減に大きく寄与するであろう。
3)RCCの適応:手術患者48例の検討より,術中輸血は過剰な傾向にあり,術中出血量1,500g以下、Hb8.5g/dl以下でも,全身状態の安定時には,輸血をしないとの基準を提案する。これにより無用な術中輸血を避けうる。また麻酔科(施設)の使用指針への周知度は高いが,半数弱が指針に不満を持ち,また外科医の殆どはFFPの使用指針の主旨を理解していた。
結論
 IVIGの重症感染症への適応を客観に判断し、有効性の評価のためには前方視的比較試験を必要とする。予防的血小板輸血では5uPCの投与でも有効である。術中輸血はHb値8.5g/dl以下でも患者状態の安定時には避けうること,また麻酔科医と外科医への使用指針の周知度は高かった。

公開日・更新日

公開日
2009-07-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501125C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 静注用免疫グロブリン(IVIG)は主に自己免疫疾患と重症感染症に投与されているが,後者の病態は多様であることから,その適応を客観的に評価することは困難であり,前方視的な比較検討が必要である。現行の予防的血小板輸血ではトリガー値を1?2万/μl未満とし,一回の血小板濃厚液(PC)の投与は5単位でも安全かつ効果的である。さらに,術中の赤血球濃厚液(RCC)輸血は一般に過剰傾向にあるが,嫌気性代謝亢進の指標である血清乳酸値の測定がトリガー値の決定に役立つ可能性がある。
臨床的観点からの成果
 IVIGの自己免疫疾患への適応は,学会等の指針に準拠していた。重症感染症とは主に敗血症が意識されており,IVIG投与は7項目の指標(発熱,発熱期間,CRP値,白血球数,血液培養,抗生物質の投与期間と反応性)中の少数項目の値で判断されていると推測された。現在の予防的血小板輸血でのトリガー値2万/μl以上,一回投与量10単位はいずれも過剰と考えられた。術中のRCC投与は術前後のHb値や血清乳酸値の結果から,一般状態の良好な場合には過剰と考えられた
ガイドライン等の開発
「血液事業部会適正使用調査会」における使用指針の改定時(平成16年10月~17年8月)に,本研究で行われた麻酔科医への使用指針に関するアンケート調査の結果である「術中輸血では人工膠質液をRCCよりも先に使用」との見解(約90%)を取入れ,また本研究班の行ってきた予防的血小板輸血についての検討から,輸血トリガー値を1~2万/μl未満と明確にすること等に役立てた。
その他行政的観点からの成果
 「アルブミン製剤及び免疫グロブリン製剤」の国内自給推進のためのワーキンググループの審議(平成18年3月8日)において,本研究班で行ったIVIGの使用量の現状に関する調査結果を口述し,参考に供した。また,予防的血小板輸血では,血液センターからのPCの供給に時間的な制約があるため,過剰輸血が一般化しているが,トリガー値と一回投与量の見直しは適正使用の推進上必須であり,また高単位PCの小分けも実施すべきであると考える。
その他のインパクト
 なし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
使用指針の改定、血漿分画の自給
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山本定光,神谷忠,柴田弘俊他
赤血球成分採血に関する検討
日本輸血学会誌 , 52 (1) , 44-51  (2006)
原著論文2
清水勝,竹中道子
HIV感染献血者の高危険性行為に関する調査と血液の安全性確保対策
日本輸血学会誌 , 51 (3) , 333-340  (2005)
原著論文3
竹中道子,清水勝,池田久實他
献血に関する意識調査(第2報)-献血時のHIV感染者対策について-
日本輸血学会誌 , 51 (3) , 320-326  (2005)
原著論文4
清水勝,竹中道子,池田久實他
献血者の献血に関する意識調査-特に本人確認と検査結果の通知についてム-
日本輸血学会誌 , 50 (3) , 453-461  (2004)
原著論文5
比留間潔,奥山美樹,大坂顯通他
血小板輸血トリガー値の実態調査
臨床血液 , 45 (11) , 1187-1191  (2004)
原著論文6
加藤栄史,高本滋,宇留間元昭他
静注用免疫グロブリン使用の現状―全国調査結果より―
日本輸血学会誌 , 52 (2)  (2006)
原著論文7
飯島毅彦,巌康秀,清水勝
麻酔科医の血液製剤の使用指針に対する意識調査―全国麻酔指導病院を対象としたアンケート調査―
臨床麻酔 , 55 (9)  (2006)
原著論文8
竹中道子、神谷忠、杉浦さよ子他
16、17歳(高校生)を対象とする400ml全血採血と成分採血の導入は可能か?―介入試験による高校生、教諭、父母の意識変化の検討―
日本輸血学会誌  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-