がん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛薬の適正使用に関する研究

文献情報

文献番号
200501086A
報告書区分
総括
研究課題名
がん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛薬の適正使用に関する研究
課題番号
H16-医薬-065
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
平賀 一陽(国立がんセンター中央病院特殊病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 志真 泰夫(筑波メディカルセンター緩和医療科)
  • 本家 好文(県立広島病院緩和ケア科)
  • 安達 勇(静岡県立静岡がんセンター緩和医療科)
  • 鈴木 勉(星薬科大学薬品毒性学教室)
  • 井田 栄一(熊本ホームケアクリニック)
  • 矢野 眞吾(千葉大学大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者が緩和病棟、一般病棟、在宅医療を自由に選択できるための必要条件であるオピオイド鎮痛薬の適正使用によってがん疼痛が緩和されることを研究目的とした。
研究方法
医師が除痛困難であった体験(過去2年間のアンケ-トの回答から抽出)からがん疼痛治療のガイドラインのクリニカルクェッション(CQ)の作成と文献検索・構造化抄録を作成し、それらをもとにしてガイドラインを作成した。
結果と考察
①上記の構造化抄録をもとにオピオイド治療のガイドライン(案)を作成した。②塩酸モルヒネ水溶液を用いたレスキュードーズの使用実態を明らかにし、在宅医療や一般総合病院における緩和ケアチーム活動や医療者への薬剤指導・患者の教育などが大切であるとことが示唆された。③地域医師会所属の医師の6割は疼痛マネジメントに自信を持っていなかった。④疼痛治療の中心がオピオイド鎮痛薬であることは在宅ケアにおいても施設ケアにおいても同様の傾向であった。⑤熊本市のかかりつけ医は、「在宅ホスピス緩和ケアに専従する診療所」の開設およびその診療所の医師と相談できるシステムの開始を期待していた。⑥非ステロイド性抗炎症薬とオピオイドの中枢神経における相互作用を検討した結果、炎症性疼痛の発現は、COX-2阻害薬であるエトドラクならびにメロキシカムの繰り返し髄腔内投与によって著しく抑制されたのに対し、坐骨神経結紮による神経障害性疼痛はそれらの薬物を繰り返し髄腔内投与しても全く抑制されなかった。⑦モルヒネ代謝産物の消化管運動障害に関する薬理学的検討を行った結果、モルヒネの便秘の誘発にモルヒネの代謝産物であるM6Gが深く関わっていることが示唆された。
結論
がん疼痛治療におけるオピオイドの適正使用のためには臨床的、基礎的研究と普及・啓発活動が必要である。作成したオピオイド治療のガイドラインが緩和医療学会で認可され、オピオイド鎮痛薬の適正使用が推進されると、がん疼痛が緩和され、がん患者が緩和病棟、一般病棟、在宅医療を自由に選択できる可能性が多くなる。

公開日・更新日

公開日
2007-05-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200501086B
報告書区分
総合
研究課題名
がん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛薬の適正使用に関する研究
課題番号
H16-医薬-065
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
平賀 一陽(国立がんセンター中央病院特殊病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 志真 泰夫(筑波メディカルセンター病院 緩和医療科)
  • 本家 好文(県立広島病院緩和ケア科)
  • 安達 勇(静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科)
  • 鈴木 勉(星薬科大学薬品毒性学教室)
  • 井田 栄一(熊本ホームケアクリニック)
  • 矢野 眞吾(千葉大学大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌患者が緩和,一般病棟、在宅医療を自由に選択できる為の条件はオピオイド鎮痛薬の適正使用によりがん疼痛が緩和される事である。癌疼痛治療におけるオピオイドの適正使用の為には臨床的,基礎的研究が必要である。癌患者の痛みが除痛されていない原因となる問題点を抽出し、文献的検討を行い,癌疼痛治療のガイドラインの改訂を行う事,炎症性疼痛下におけるモルヒネとNSAIDsの併用効果について検討する事,便秘の発現にモルヒネの代謝産物であるM6Gの関与があるか検討する事などが研究目的である。
研究方法
医師に対してのアンケート調査用紙「除痛困難な体験について」を自由記載して頂く欄に記載されていた内容から癌疼痛治療のガイドラインのクリニカルクェッション(CQ)を作成した。CQから文献検索,構造化抄録作成を行い、その構造化抄録をもとにオピオイド治療のガイドライン(案)を作成した。起炎症物質であるCFAの足蹠皮下投与による炎症性疼痛モデルを用いて,炎症性疼痛下におけるモルヒネの鎮痛作用発現に及ぼすNSAIDsの影響を検討した。便秘の発現にモルヒネの代謝産物であるM6Gの関与があるか実験動物を用いて検討した。
結果と考察
モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルなどのオピオイド治療に関するCQを中心に作成した癌疼痛治療のガイドライン(案)を提示した。正常動物におけるモルヒネの脳室内投与により誘発される鎮痛作用は,非選択的COX阻害薬であるインドメタシンおよびCOX-1に選択性の高い阻害薬であるモフェゾラクの脳室内前処置により有意に増強された。炎症性疼痛モデルを作成した6時間後の脊髄では,COX-1のmRNA量に変化は認められなかった
が,COX-2のmRNA量が著明に増加した。坐骨神経結紮により引き起こされる神経障害性疼痛は,これらのCOX-2阻害薬を繰り返し髄腔内投与しても全く抑制されなかった。M6Gはマウスの回腸の縦走筋と輪状筋においてオピオイド受容体を介して収縮作用を示し,小腸輸送能ではモルヒネより3倍以上強い抑制を生じた。この結果から,モルヒネの便秘の誘発にM6Gが深く関わっている事が示唆された。
結論
作成したオピオイド治療のガイドラインが緩和医療学会で認可され、オピオイド鎮痛薬の適正使用が推進されると,癌疼痛が緩和され,患者が緩和病棟,一般病棟、在宅医療を自由に選択できる可能性が多くなる。

公開日・更新日

公開日
2007-05-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501086C

成果

専門的・学術的観点からの成果
正常動物のモルヒネの脳室内投与により誘発される鎮痛作用は,非選択的COX阻害薬であるインドメタシン及びCOX-1に選択性の高い阻害薬であるモフェゾラクの脳室内前処置により有意に増強された。炎症性疼痛モデルの脊髄では,COX-2のmRNA量が増加。坐骨神経結紮で引き起こされる神経障害性疼痛はCOX-2阻害薬を繰り返し髄腔内投与しても抑制されない。モルヒネ代謝産物のM6Gはマウスの回腸の縦走筋と輪状筋でオピオイド受容体を介し収縮作用を示し,小腸輸送能ではモルヒネの3倍以上強い抑制を生じた。
臨床的観点からの成果
全国のがんセンタ-・成人病施設、大学病院、がん診療施設などに入院中のがん患者の有痛率、除痛率、及び医師の診療態度に関するアンケ-ト調査を行い、がん疼痛治療が推進されていない原因となる問題点を抽出した。除痛率の目標としては平成16年度に調査した緩和病棟入院中の患者の除痛率80%を目指すべきである。文献的検討を行い、がん疼痛治療のガイドラインの改訂を行った。
ガイドライン等の開発
医師が回答したアンケ-トに記載されてあった内容から、がん疼痛治療のガイドラインのクリニカルクェッション(CQ)を作成した。CQから文献検索、構造化抄録作成を行い、その構造化抄録をもとにオピオイド治療のガイドライン(案)を作成した。作成したオピオイド治療のガイドラインが日本緩和医療学会で認可され、オピオイド鎮痛薬の適正使用が推進されると、がん疼痛が緩和され、がん患者が緩和病棟、一般病棟、在宅医療を自由に選択できる可能性が多くなる。

その他行政的観点からの成果
薬剤管理指導業務が開始され、緩和ケアチームの活動が院内で開始された前後でレスキュードーズ係数を比較した結果、後では有意により適正な係数(P<0.01)に近づいていたことが判明した。緩和ケアチ-ムの役割が肯定された。
 地域医師会の医師群では症状マネジメントに自信をあまり持っていない医師の割合は6割と多く、医師たちの希望は「患者・家族向けのパンフレットの作成」、「調剤薬局からオピオイド鎮痛薬の配達ができるようにする」の2つであった。
その他のインパクト
広島県内の保険薬局に対するアンケート調査の結果では、①麻薬管理上の問題点としては、経営面に影響のある余剰在庫に関する記載が多かった。②処方箋上だけの情報に限らず、医師間でやりとりされるような患者情報も必要であるとの意見も多かった。③在宅緩和ケアは必要なことであるという認識も高く、在宅緩和ケアを担う医療チームの一員として協力していきたいという声も多かった。④患者の自宅に薬剤を持参し服薬指導も行いたいが、マンパワーの面から現実には困難なことが多いとの指摘もあった。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
17件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
平賀一陽
肺合併症肺癌治療の副作用に対する最新治療法 癌性疼痛対策
呼吸器科 , 4 (3) , 186-190  (2003)
原著論文2
本家好文
どうする?在宅ターミナルケアは?
Medical Rehabilitation , 34 , 117-121  (2003)
原著論文3
Narita M, Suzuki M, Suzuki T et al.
Molecular mechanism of changes in the morphine-induced pharmacological actions under chronic pain-like state: suppression of dopaminergic transmission in the brain
Life Sci , 74 , 2655-2673  (2004)
原著論文4
Narita M, Kishimoto Y, Suzuki T et al.
Direct evidence for the involvement of the mesolimbic kappa-opioid system in the morphine-induced rewarding effect under an inflammatory pain-like state
Neuropsycho-pharmacology , 30 , 111-118  (2005)
原著論文5
土井千春、志真泰夫 他
オピオイドローテーション:その定義と考え方
ターミナルケア , 113 , 5-10  (2005)
原著論文6
志真泰夫
オピオイド鎮痛薬による痛みの現況と展望.がん患者と対症療法.
ディカルレビュ , 14 , 6-11  (2003)
原著論文7
T Fukui, K Hiraga. et al
Clinical Effectiveness of Evidence-based Guidelines for Pain Management of Terminal Cancer Patients in Japan
JMAC , 5 , 216-223  (2005)
原著論文8
篠 道弘、安達勇 他
がん疼痛治療を目的としたモルヒネ持続皮下注時におけるレスキュードーズとしての早送りの有効性と安全性の検討
医療医学 , 31 (7) , 559-562  (2005)
原著論文9
本家好文,他
がん疼痛マネジメントにおけるオキシコドン &#12316;オキシコドン徐放錠の臨床的特性と使用法の実際
がん患者と対症療法 , 16 (2) , 27-32  (2005)
原著論文10
本家好文
放射線科医がはじめた緩和医療
緩和医療学 , 7 (1) , 83-86  (2005)
原著論文11
Narita M., Usui A., Suzuki T et al.
Protease-activated receptor-1 and platelet-derived growth factor in spinal cord neurons are implicated in neuropathic pain after nerve injury.
J. Neurosci. , 25 , 10000-10009  (2005)
原著論文12
Suzuki T., Nurrochmad A., Ozaki M at al.
Effect of a selective GABAB receptor agonist baclofen on the &#61549;-opioid receptor agonist-induced antinociceptive, emetic and rewarding effects.
Neuropharmacology , 49 , 1121-1131  (2005)
原著論文13
Narita M., Suzuki M., N Suzuki T at al.
Involvement of spinal metabotropic glutamate receptor 5 in the development of tolerance to morphine-induced antinociception
J. Neurochem , 94 , 1297-1305  (2005)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-