食品中の残留農薬、汚染物質の摂取量等に関する研究

文献情報

文献番号
200501051A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の残留農薬、汚染物質の摂取量等に関する研究
課題番号
H15-食品-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 保博(財団法人残留農薬研究所化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 兵剛(自治医科大学地域医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分担研究1-1:TMDIがADIを大きく超える農薬について,主な農産物の加工調理に伴う残留農薬の量的変化を調べ,残留農薬のより精密な暴露量評価を可能にする。分担研究1-2:畜産水産食品中残留農薬の暴露量を評価する上で整備等すべき情報を整理する。分担研究2:暫定週間耐用量を超えるCd暴露を受けている被験者を多数含む集団で健康影響を調査し,より正確な摂取許容量算定に有用なデータを得る。
研究方法
分担研究1-1:今年度はマンゼブとカルボフランの他,エスフェンバレレートとマラチオンを対象に,米,小麦,大豆の精米化と炊飯,小麦製粉と製パン・製麺,及び豆腐製造に伴う原料農産物中残留農薬の収支と加工係数を測定した。分担研究1-2:畜産品からの暫定基準によるTMDIのADI比が高い農薬について,昨年度提案した方法で畜産品からのEDIを試算し,提案法の有効性を検証した。分担研究2:H16年度の追加調査で加わった被験者と以前の調査の被験者1960名から腎臓疾患の既往者や喫煙者などを除外した後に,血中および尿中のCd濃度と,尿中のα1-およびβ2-ミクログロブリン濃度との関連を,年齢を独立変数として多変量解析した。
結果と考察
分担研究1-1:マンゼブは5倍濃度処理区でも玄米では不検出であった。小麦粉には玄麦中残留量の約20%が移行した。玄麦からETUも検出されたが,>99%がふすまなどに除かれた。カルボフランは玄米中残留量の約40%が白米に残ったが,小麦粉に残ったのは玄麦中の<5%であった。分担研究1-2:昨年度提示した方法によるEDIは,調査した多くの薬剤でTMDIの<20%となり,提案法の有効性が示されたが,一部農薬では飼料への処理率を考慮することが必要であった。分担研究2:この調査した集団では,腎機能の低下に最も影響を与えるのは加齢であり,Cd曝露指標は有意な因子とはならなかった。
結論
米,小麦,大豆に由来する暫定基準相当量の調査農薬のTMDI(幼小児)はADI の1.2-2.4倍(マラチオンを除く)だが,実際の残留濃度と白米,小麦粉,豆腐への加工を考慮したEDIは,ADIを大きく下回った。畜産品について提案したEDI試算法は有効であったが,課題も残った。現行のPTWIを超えるCd曝露を受けてきたと考えられる集団でも,明らかな腎機能障害の増悪は見られなかった。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200501051B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の残留農薬、汚染物質の摂取量等に関する研究
課題番号
H15-食品-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 保博(財団法人残留農薬研究所化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 兵剛(自治医科大学地域医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分担研究1-1:TMDIがADIを大きく超える農薬について,摂取量の多い主要農産物の加工調理に伴う残留農薬の量的変化を調べ,残留農薬のより精密な暴露量評価を可能にする。分担研究1-2:畜水産食品中残留農薬の暴露量を評価する上で整備等すべき情報を整理する。分担研究2:国内で最も高い経口カドミウム(Cd)曝露を受けてきたと考えられる集団の腎機能障害の有無について調査する。
研究方法
分担研究1-1:12種農薬を対象に,日,米,または豪のGAPを参考に圃場で農薬処理した米,小麦,大豆の精米化と炊飯,小麦製粉と製パン・製麺,及び豆腐製造に伴う原料農産物中残留農薬の収支と加工係数を調べた。分担研究1-2:FAO,米,EU等で採用されている畜産品への残留基準の設定法を基にしたEDI算定法を提案した。暫定基準による畜産品からのTMDIのADI比が高い農薬についてEDIを算定し,提案法の有効性を検証した。分担研究2:2001年から全国8カ所(九州,近畿,関東,東北地方)の農家女性(20歳代?70歳代)の栄養とCd曝露を調査し,各年齢階層に分割して加齢に伴う腎機能低下を多変量解析を用いて,種々の交絡因子を調整して,現在の日本国内で食品からのCd曝露により腎機能障害が起こっているか解析した。
結果と考察
分担研究1-1:玄米,玄麦,大豆中残留農薬の白米,小麦粉,豆腐への移行率は<70%,<25%,<70%であった。米,小麦,大豆の3品目に由来する調査対象農薬の摂取量は,実際の残留濃度と白米,小麦粉への加工を考慮すると暫定基準に基づくTMDIから大きく下回った。これら加工品への移行率と農薬の物理化学特性との明確な相関は認められなかった(豆腐を除く)。分担研究1-2:提案した算定法によるEDIは多くの例でTMDIの<10-20%となり,実態に近づいた。分担研究2:調査した集団では,腎機能の低下に最も影響を与えるのは加齢であり,Cd曝露指標は有意な因子とはならなかった。
結論
加工影響は個別に調査することが必要と考えられる。玄麦から小麦粉,および玄米から白米への残留農薬移行率のデホルト値を提案した。畜産品について提案したEDI試算法は有効であったが,課題も一部残った。現行のPTWIを超えるCd曝露を受けてきたと考えられる集団でも,明らかな腎機能障害の増悪は見られなかった。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501051C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カドミウム暴露と健康影響に関する研究の成果は学会で高く評価され,分担研究者堀口には平成17年に日本産業衛生学会の奨励賞が授与された。研究成果は、Codex Committee on Food Additives and Contaminants (CCFAC)で、各食品のカドミウムの最大許容濃度を定めるために重要な評価資料となると考えられる。物理化学特性のかなり異なる各種農薬で,米,小麦,大豆の一次および二次加工に伴う残留農薬の量的変化と暴露量への影響を明らかにでき,学会発表でも関心を惹いた。
臨床的観点からの成果
暫定週間耐用量付近のカドミウムによる長期経口暴露は腎障害にほとんど影響しないことが明らにされた。
ガイドライン等の開発
カドミウムの研究成果は,次のJECFAおよび食品安全委員会で参考にされた:平成16年6月第63回JECFA ジュネーブ(カドミウム評価),平成17年2月第64回JECFA ローマ(カドミウムの曝露評価),平成17年12月2日食品安全委員会汚染物質専門調査会,平成18年3月14日食品安全委員会汚染物質専門調査会。
提案した畜水産品からの残留農薬の推定暴露量評価法は,暴露量評価に関する国内ガイドラインの開発に貢献すると期待される。

その他行政的観点からの成果
本研究で提案された畜水産品からの推定暴露量評価法,ならびに加工による残留農薬の移行率データは,残留基準設定に利用されてゆくものと期待される。また,カドミウム研究の成果は,食品中のカドミウムの規格を定めるのに不可欠であり,国際的な最大許容濃度基準ならびに国内基準を設定するための重要な評価資料となると考えられる。
その他のインパクト
精米,製粉によって,米,小麦中の残留農薬量のかなりの部分が非可食部に除去され,食用部分に残るのは一部であることが特性の異なる農薬で明確になったことは,消費者に安心感を与える。
食品中のカドミウムの許容基準はCCFACで定められる。これまでのJECFAの評価により米0.4mg/kg,大豆は許容濃度を定めないという方向でまとまりつつあり,この基準であれば,日本国内の食品衛生上の努力で管理は可能なレベルとなった。

発表件数

原著論文(和文)
4件
農産物中残留農薬の加工影響に関して,4報を準備中
原著論文(英文等)
4件
後出のほか,Toxicol Appl Pharmacol.,196(1):114-23,2004;Arch Toxicol.(in press). いずれも堀口ら
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本農薬学会残留分析研究会,日本食品衛生学会,日本衛生学会,日本産業衛生学会
学会発表(国際学会等)
3件
第11回国際農薬化学会議(2006),第5回欧州残留農薬ワークショップ(2004),第45回米国毒科学会(Society of Toxicology),
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本食品衛生協会主催シンポジウム「食品と健康」,2006年2月

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
H.Horiguchi, E.Ogura, S.Sasaki, et al
Dietary exposure to cadmium at close to the current provisonal tolerable weekly intake does not affect renal function among female Japanese farmers
Environmental Res. , 95 , 20-31  (2004)
原著論文2
H.Horiguchi, E.Ogura, S.Sasaki, et al
Environmentary exposure to cadmium at a level insufficient to induce renal tubular dysfunction does not affect bone density among female Japanese farmers
Environmental Res. , 97 , 83-92  (2005)
原著論文3
坂真智子,飯島和昭,西田真由美,狛由紀子,他
加工および調理による米試料中残留農薬の濃度変化
食品衛生学雑誌 , 49 (3) , 141-149  (2008)
原著論文4
坂真智子,飯島和昭,西田真由美,狛由紀子,他
加工および調理による小麦試料中残留農薬の濃度変化
食品衛生学雑誌 , 49 (3) , 150-159  (2008)
原著論文5
坂真智子,飯島和昭,西田真由美,狛由紀子,他
加工および調理による大豆試料中残留農薬の濃度変化
食品衛生学雑誌 , 49 (3) , 160-167  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-