文献情報
文献番号
200501042A
報告書区分
総括
研究課題名
アクリルアミドの生成抑制及び毒性抑制に関する研究
課題番号
H15-食品-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
今井 俊夫(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
- 古賀 秀徳(日本スナック・シリアルフーズ協会)
- 広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
- 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
イモや小麦粉などを焼く,揚げることでアクリルアミド(AA)が生成され,広く加工食品中に含まれる。本研究では,AA含量の高い食品につき生成低減法を明らかにし,さらに生体に摂取されたAAの毒性抑制法を実験的に確立する。
研究方法
〔生成抑制〕AA前駆物質のアスパラギンと還元糖を比較的多く含むジャガイモの主要な加工用品種のスライス片を用い,フライ加工で応用可能な方法を検討した。〔毒性抑制〕(代謝)AAと代謝物のグリシドアミド(GA)のラット海馬神経細胞に対する細胞毒性,シナプス伝達に及ぼす作用を検討,抑制物質を探索した。(遺伝毒性)ヒトリンパ芽球細胞株TK6を用い,ラットS9,AAの代謝に関与するCYP2E1を高濃度に含むヒトS9存在下での細胞,遺伝毒性を比較し,さらにCYP2E1を高発現するヒト遺伝子導入細胞により細胞毒性を検討した。(神経・精巣毒性)SD系雄ラットにより,抑制効果を明らかにしてきた抗酸化あるいはCYP2E1阻害/第Ⅱ相酵素誘導物質の併用効果を検討した。(発がん)SD系雌ラットにMNUで処置後,AAと抗酸化物質のa-リポ酸,抗酸化/CYP2E1阻害/第Ⅱ相酵素誘導作用を有する18b-グリシルレチン酸などを投与した。
結果と考察
〔生成抑制〕フライ前の温水洗浄(70℃,2分)と低温加工(150℃)により生成率が80%低減したが,味覚,物性とのバランスの検討を要する。〔毒性抑制〕(代謝)AA,GAは高濃度で細胞生存率を低下させ,シナプス伝達を阻害したが,AAよりGAの作用が強く,α-リポ酸,ビタミンCなど抗酸化物質の前処置が抑制した。シナプス伝達阻害では,神経終末に強い作用を示した。(遺伝毒性)GAはAAより強い遺伝毒性を示すが,S9はAAの毒性を増強せず,遺伝子導入細胞も親細胞と違いを示さず,AAがCYP2E1により代謝されるという従来の報告と異なる結果が得られた。毒性抑制法の確立には,AAの詳細な代謝様式の解析を要する。(神経・精巣毒性)精巣障害の抑制につき,α-リポ酸とフェネチルイソチオシアン酸による相加作用が確認された。(発がん)MNUとAAのみの対照群に比べ,被験物質投与群では乳癌の発生頻度/数が低下した。
結論
生成抑制については,ジャガイモ製品における実際の低減化技術に応用可能な方法を示した。毒性抑制に関しては,抗酸化/CYP2E1阻害/第Ⅱ相酵素誘導物質の有用性が示された。
公開日・更新日
公開日
2006-10-10
更新日
-