中小建設業者の安全意識向上に資する労働災害損失の計測手法の開発に係る研究

文献情報

文献番号
200501015A
報告書区分
総括
研究課題名
中小建設業者の安全意識向上に資する労働災害損失の計測手法の開発に係る研究
課題番号
H17-労働-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高木 元也(独立行政法人産業安全研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 嘉納成男(早稲田大学理工学部建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,075,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重要な政策課題である中小建設業者の自主的な安全活動推進には企業経営者の安全意識向上が不可欠であり、このためには労働災害損失が企業、社会等に及ぼす影響の大きさを示すことが有効である。本研究は建設労働災害損失について、事業者レベル・国民経済レベルから見た経済的損失の計測及び労働災害がもたらす建設産業のイメージ低下等の社会的損失の計測手法の構築等を試みる。
研究方法
(1)建設労働災害損失項目の設定(既往文献調査、建設会社ヒアリング調査等)、(2)建設労働災害損失事例調査(平成15、16年に発生した6事例の実態調査)、(3)労働災害損失アンケート調査(全国の完工高上位300社の建設会社対象。回収数138社、回収率は46%)、(4)既往文献調査、計量経済学専門家へのヒアリング調査等に基づく国民経済レベルでの労働災害損失額試算及び計測上の課題等の抽出、(5)建設労働災害がもたらす社会的影響について因果連鎖図に基づく要因分析。
結果と考察
(1)A.事業者の直接支出分、B.工事関係者の不動賃金、C.被災者の稼得能力喪失等に伴う所属会社の損失、D.営業活動・企業イメージ等に関する損失の4つに区分し、損失項目を設定した。(2)直接的損失は少額であっても企業は目に見えない多額の間接的損失を被っていることなどが明らかとなった。(3)設定した労働災害損失項目は概ね妥当と認められ、また企業にとって実用的な計測システムを開発することの重要性を再認識した。(4)国民経済レベルでみた労働災害損失の計測手法をa.被災者の労働損失日数に基づく生産力低下、b.個別事例に基づく損失の積み上げの2つのタイプに整理した。(5)労働災害の問題は、良質な労働者の確保を難しくする主要な原因であり、建設産業の問題に留まらず、日本国の社会資本整備に大きな悪影響を及ぼすといえる。
結論
事業者レベルの直接的な経済的損失の損失項目等は、労働災害損失事例調査及びアンケート調査による検証等を行い計測手法を確立できた。アンケート調査では、建設会社にとって実用的な労働災害損失計測システムのニーズが高いことが明らかとなった。国民経済レベルでみた労働災害損失については、実体経済にあった形で計測を行うためには、個別事例の積み上げによる事業者損失、労災保険給付等の推計が必要になる。一方、社会的損失については、今年度の分析結果を基に、次年度は意識調査等を実施し各要因の大きさ等について定量化を試みる。

公開日・更新日

公開日
2007-06-22
更新日
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