医療事故発生後の医療機関の対応と粉争解決に関する研究

文献情報

文献番号
200501315A
報告書区分
総括
研究課題名
医療事故発生後の医療機関の対応と粉争解決に関する研究
課題番号
H17-医療-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐々 英達(社団法人全日本病院協会)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 飯田 修平(社団法人全日本病院協会)
  • 西澤 寛俊(社団法人全日本病院協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、医療事故が生じた後の医療機関の対応に着目し、医療事故調査、医療ADRについて、国内外の実態を明らかにし、あり方について提言を行う。また、提言に基づいてその実施を行い、日本における導入の可能性・問題点などについて検証を行う。本研究により、日本における医療事故調査、医療ADRのあり方が示され、医療界全体へ普及していくにあたっての方向性を示すことが期待される。
研究方法
①医療事故の概念整理 専門家のパネルにより有害事象、医療事故、医療過誤などの概念整理、他産業における事故調査制度のレビューを行った。②医療事故調査の事例検討:公表されている16の医療事故報告書について、組織構成、活動内容、取りまとめの方法、結果の公表、裁判での利用状況などについて分析した。③病院対象のアンケート調査:2108病院を対象にアンケート調査を実施し、506病院(24.0%)から回答を得た。90病院が最近3年以内に重大な医療事故を経験しており、規模の大きい病院ほど、重大な医療事故に遭遇しやすいこと、原因究明の際、院内の人材不足が問題となっており法律家を除き、必要な人材を欠いた状態で原因究明にあたっている可能性があること、患者や家族、当事者の職員ケアの方法が定まっておらず、対応に苦慮するケースが多いこと、現行の裁判制度の有効性には疑問を持っておりADR(裁判外紛争解決)に対する期待が大きいことが示された。④外国事例調査米国JCAHOにおける医療事故調査システム、米国ASRSシステムについて文献調査により明らかにした。
結果と考察
医療事故は決して稀な事象ではなく、各病院が遭遇することを想定した体制整備が必要なこと、医療事故調査においては、標準的な手法、当事者のケア、外部専門家の協力などに改善の余地が大きいことが示唆された。医療事故報告書の分析からも、基本的な情報を欠く、医療事故防止の観点からの改善策の推奨がなされていないものが多く見受けられた。現行の裁判制度の有効性には疑問を持っておりADRに対する期待が大きいことが伺われるが、ともに標準的手法に基づく事実確認、予防策の立案・実施に基づいて行われる必要があり、医療事故調査にあたっての標準的手法の確立が優先して解決されるべき課題であることが示された。
結論
医療事故調査については標準的な手法を確立するとともに、人材育成なども併せて検討される必要がある。また、医療事故調査委員会の法的位置づけを明らかにし、捜査資料の利用などの方策を検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-06-25
更新日
-