文献情報
文献番号
200501312A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床現場でのエビデンス適用・不適用決定の過程と結果に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H16-医療-048
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(財団法人聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
- 新保 卓郎(国立国際医療センター研究所医療生態学研究部)
- 小山 弘(京都大学医学部附属病院総合診療科)
- 松井 邦彦(熊本大学医学部附属病院総合臨床研修センター)
- 山城 清二(富山医科薬科大学総合診療部)
- 中村 清吾(財団法人聖路加国際病院乳腺外科)
- 福岡 敏雄(名古屋大学医学部附属病院救急・集中治療医学)
- 前田 健次(国立長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
診療現場での判断・決断上、質の高い臨床研究の結果(エビデンス)があったとしても、それが患者に適用されないこともある。本研究の目的は、エビデンスの適用・不適用の判断プロセスについてさまざまな角度から検討し、臨床判断の質的向上に資することである。
研究方法
インターネットを用いて、
①一般の人々及び医師を対象に、根拠に基づく医療(EBM)の理解度と症例シナリオでの判断
②医師がエビデンスを適用しないときの理由
③一般の人々が医療情報を適切に利用する度合い、とくに死亡率や罹病率を低下させるとのエビデンスが確立されている乳癌検診を受けない理由、などについてアンケート調査を行った。また、
④集中治療部でのカンファランスにおける判断プロセス(録音・テープ起こし・質的分析)
⑤平成17年の日本乳癌学会及び日本癌治療学会でのシンポジウム参加者を対象に、診療ガイドラインの利用・推奨適用に関する調査を行った。
①一般の人々及び医師を対象に、根拠に基づく医療(EBM)の理解度と症例シナリオでの判断
②医師がエビデンスを適用しないときの理由
③一般の人々が医療情報を適切に利用する度合い、とくに死亡率や罹病率を低下させるとのエビデンスが確立されている乳癌検診を受けない理由、などについてアンケート調査を行った。また、
④集中治療部でのカンファランスにおける判断プロセス(録音・テープ起こし・質的分析)
⑤平成17年の日本乳癌学会及び日本癌治療学会でのシンポジウム参加者を対象に、診療ガイドラインの利用・推奨適用に関する調査を行った。
結果と考察
アンケート調査では、EBMを知っている者は一般の人々で1.7%、医師は90%以上、診療ガイドラインについてはそれぞれ8.0%、80%以上であった。
新しい治療法のエビデンスがまだ確立したものでない場合、致死的な疾患の患者に対してそれを用いると答えた医師は70%、致死的でない疾患の患者に用いる医師は39%であった。エビデンス確立のための研究に参加する意向を有する医師は81%、RCTを実施するためには、医師、学会、世論、患者会などの意向が重要と考える医師は54?75%であった。
医師の経験上、エビデンスを実際は患者に適用しなかった理由は、診療環境の問題(74.1%)、効果が小さい(63.9%)、実践するのに自信がない(63.0%)、保険で認められていない(62.0%)、患者が好まなかった(61.1%)などが多かった。
乳癌検診の有効性を示すエビデンスは、症状がない自分には当てはまらないという者が多かった。日本乳癌学会での調査では、参加者の52%がガイドラインを一部修正して活用、33%がそのまま活用していた。
新しい治療法のエビデンスがまだ確立したものでない場合、致死的な疾患の患者に対してそれを用いると答えた医師は70%、致死的でない疾患の患者に用いる医師は39%であった。エビデンス確立のための研究に参加する意向を有する医師は81%、RCTを実施するためには、医師、学会、世論、患者会などの意向が重要と考える医師は54?75%であった。
医師の経験上、エビデンスを実際は患者に適用しなかった理由は、診療環境の問題(74.1%)、効果が小さい(63.9%)、実践するのに自信がない(63.0%)、保険で認められていない(62.0%)、患者が好まなかった(61.1%)などが多かった。
乳癌検診の有効性を示すエビデンスは、症状がない自分には当てはまらないという者が多かった。日本乳癌学会での調査では、参加者の52%がガイドラインを一部修正して活用、33%がそのまま活用していた。
結論
医師の立場からも患者の立場からもエビデンスの適用を妨げるさまざまな要因がある。今後、それぞれの要因について対応策を検討する予定である。
公開日・更新日
公開日
2006-10-03
更新日
-