我が国における尊厳死に関する研究

文献情報

文献番号
200501270A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における尊厳死に関する研究
課題番号
H16-医療-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松島 英介(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池永昌之(淀川キリスト教病院)
  • 内富庸介(国立がんセンター東病院)
  • 甲斐克則(早稲田大学大学院法務研究科)
  • 竹中文良(ジャパン・ウェルネス)
  • 田村里子(東札幌病院)
  • 平澤秀人(平沢記念病院)
  • 松島たつ子(ピースハウス病院)
  • 和田忠志(あおぞら診療所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
尊厳死をめぐる問題が盛んに論議されている中で、実際の終末期医療における患者やその家族の声を反映させることや、現場の医療スタッフが直面している問題を汲みとることにより、今後のわが国の尊厳死の問題を方向づける上で有効と思われる方策を探り出すことを目的として、本研究を実施した。
研究方法
問題を以下の4つに分けて検討した。すなわち、1.終末期における患者本人の「尊厳ある生」を達成するためのサポート、2.患者本人-家族間の意思の相違の問題、3.終末期のがん患者をめぐる医療現場の実態、4.終末期医療をめぐる法的な問題についてである。
結果と考察
終末期にあるがん患者本人の問題としては、「同病者間の交流」を求める希望が多いことから、こうした面に配慮したサポートシステムを構築していく必要があることがわかった。また、終末期の尊厳の低下を防ぐためには、抑うつの早期発見、早期治療導入が有用であることも示唆された。患者と家族の意思の相違については、終末期を過ごす療養場の選択の際に大きな問題があることがわかり、その背景に本人の意向確認・コミュニケーションの不足がある可能性が指摘された。また、認知症患者においても、急変時の処置については患者本人が判断すべきという意見が家族からは多いことより、判断のできるうちに本人と話し合いを持つべきであることがわかった。終末期のがん患者をめぐる医療現場の実態については、一般病院では告知後の対応についての課題が残されており、また緩和ケア病棟でも患者の希望に即した細かい対応ができておらず、さらに看護師自身も緩和ケアの実践において倫理的な課題に対してチームで取り組んでいく重要性が再確認された。尊厳死ガイドラインの中で中心となる人工延命治療の差控え・中断に際しては、患者の現実の意思表明または事前の意思表明(2年以内のもの)を中心に考えるべきであり、とくに事前の意思表明については、文書(リビング・ウィルやアドバンス・ディレクティヴ)のみならず多様な形式を採用すべきであると考えられた。
結論
尊厳ある死を達成するためには、医療現場ではまだまだ問題が多いことがわかった。また、患者本人の希望に沿った医療がどこまでできるか、患者と家族の意思の相違をどう扱っていくかも依然として大きな課題である。こうした点を踏まえた上でのガイドラインの作成が必要と考えた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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