ヒト型遺伝毒性試験系の開発とそのバリデーション

文献情報

文献番号
200500966A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト型遺伝毒性試験系の開発とそのバリデーション
課題番号
H16-創薬-077
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 有(八戸工業高等専門学校)
  • 築舘 一男(エーザイ株式会社・研究開発本部)
  • 大内田 昭信(大鵬薬品工業・安全性研究所)
  • 高崎 渉(三共株式会社・安全性研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、最も有用性の高い生物学的材料を基にして、人に対する遺伝毒性を、科学的メカニズムから評価するため試験システムを構築することを目的とする。具体的には、ヒト培養細胞、ヒト代謝系を基礎とし、遺伝毒性の発現メカニズムを考慮した最適なエンドポイントの組み合わせからなるヒト型in vitro遺伝毒性試験法を構築し、そのバリデーションを行う。
研究方法
ヒト型試験系として、ヒトリンパ芽球細胞株WTK-1(ヒト細胞)、ヒトプールS9、ヒト高活性S9(lot#HLS-059)(ヒト代謝系)を用いた。対照としてラット非誘導S9、ラット誘導型S9も用いた。遺伝毒性のエンドポイントとして、コメット試験(COM)、小核試験(MN)、チミジンキナーゼ遺伝子をターゲットとした遺伝子突然変異試験(TK)を実施した。試験化合物として、代謝活性化を必要とする17化合物を選択した。陰性対照として生理食塩水、陽性対照としてサイクロフォスファミドを用いた。実際の試験は、日本環境変異原学会・ほ乳類変異原性試験研究会の協力により16の研究機関で分担して行った。

結果と考察
人に対する化学物質の遺伝毒性を正しく評価することを目的とし、ヒト培養細胞株WTK-1と、ヒト肝臓由来S9からなる新しいin vitro遺伝毒性試験系を確立した。3つのエンドポイント(COM、MN、TK)の最適試験プロトコールを検討し、バックグランドデータを評価した。16機関で安定したデータが得られたことから、遺伝毒性試験系として普及できうるものと判断された。試験系の検出能力をバリデーションするため17の代謝活性化を必要とする化学物質について試験を行った結果、ヒトに対して発がん性のあるCP、2-NA、Bentizineは本ヒト型試験で陽性を示した。また、発がん性のないAzobenzeneは陰性であった。これらの結果は、本試験系が、ヒトでの発がん性データとよく相関し、ヒト型試験としての有用性が示唆するものである。一方、2AAは逆にヒトでより高い陽性反応を示した。このタイプの化学物質のリスク評価には慎重になるべきことが示唆された。

結論
本共同研究で確立したヒト型遺伝毒性試験系は、簡便で、再現性があり、これまでの遺伝毒性試験結果と一致した。本試験系は、ヒト型遺伝毒性試験系として、人に対する安全性を担保しうる試験系であり、今後、医薬品開発に利用が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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