骨髄異形成症候群に対する画期的治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200500884A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄異形成症候群に対する画期的治療法に関する研究
課題番号
H16-難治-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学内科学(血液))
研究分担者(所属機関)
  • 内山 卓(京都大学医学部)
  • 直江 知樹(名古屋大学医学部)
  • 大屋敷 一馬(東京医科大学内科学1)
  • 寺村 正尚(東京女子医科大学医学部)
  • 稲葉 俊哉(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 小川 誠司(東京大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は骨髄異形成症候群(MDS)の病態解明とこれに基づく画期的治療法の開発を目的とする。
研究方法
(1) ゲノム・蛋白レベルでのMDS原因遺伝子の網羅的探索
Affymetrix 社のSNPタイピング用オリゴヌクレオチドアレイを用いた高精度ゲノム解析システム(CNAG)を構築し、MDS症例のゲノム解析を行った。また、長鎖PCR支援マイクロアレイCGH法により7q-の候補遺伝子を同定した。一方、MDS好中球を用いたプロテオーム解析も施行した。
(2) 特異的遺伝子異常の解析
ヌクレオフォスミンNPM1およびテロメア制御遺伝子の変異を解析するとともに、MDS/白血病症例で失活する転写因子TELの機能解析を行った。
(3)画期的治療法の開発
臨床研究「低リスク骨髄異形成症候群に対するシクロスポリン療法」の効果予測因子としてT細胞のクロナリティーを解析した。
結果と考察
(1) ゲノム・蛋白レベルでのMDS原因遺伝子の網羅的探索
CNAGを用いてMDSで高頻度にゲノムコピー数の異常およびヘテロ接合性の消失(LOH) が観察される領域を同定した。また、7q-の候補遺伝子Miki、Kasumi、Titanを単離した。KasumiとTitanはDNA損傷修復に関与する可能性が示唆された。一方、MDS好中球で特異的に高発現しているCap Gは好中球遊走能に関与する蛋白であり、Thiol-specific antioxident proteinは活性酸素種の消去に重要な役割を担っている蛋白であった。
(2) 特異的遺伝子異常の解析
NPM1遺伝子の変異は約10%の症例で観察された。テロメラーゼの鋳型RNA部分であるhTERCの変異は観察されなかった。TELは骨髄球のアポトーシス誘導を促進した。
(3)画期的治療法の開発
微少T細胞クローンの頻度の低い症例がシクロスポリンに良く反応することが示された。
結論
今後ゲノム研究を展開するために有力なツールが開発され、分子病態研究も進展した。治療開発研究としては、国際的にも新規の「低リスク骨髄異形成症候群に対するシクロスポリン療法」の作用機序および効果判定に関する新知見が得られた。また、班研究の基盤整備を目的として、MDS検体バンク設立のための準備および班活動公開のためのホーム・ページ開設を行った。

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
-