前庭機能異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
200500859A
報告書区分
総括
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
H17-難治-020
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 泰三(高知大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池園 哲郎(日本医科大学医学部)
  • 伊藤 壽一(京都大学医学部)
  • 久保 武(大阪大学医学部)
  • 鈴木 衞(東京医科大学医学部)
  • 工田 昌也(広島大学医学部)
  • 高橋 正紘(東海大学医学部)
  • 武田 憲昭(徳島大学医学部)
  • 古屋 信彦(群馬大学医学部)
  • 山下 裕司(山口大学医学部)
  • 渡辺 行雄(富山大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)メニエール病の発症・症状の悪化の背景因子となっているストレス要因を明らかにする。2)ストレスに対する生体反応を定量的に評価する方法を検討する。3)メニエール病の背景疾患である遅発性内リンパ水腫の発症率を検討する3)メニエール病の本態である内リンパ水腫が形成される機序を明らかにする。4)メニエール病の新しい治療法の開発をする。5)メニエール病の関連疾患である慢性外リンパ瘻の鑑別診断を確立する。
研究方法
1)メニエール病患者のストレスの種類とライフスタイルの予備調査を行い、疫学的調査の基礎データを得る。2)マイクロアレイによるストレス関連遺伝子の調査、HSPA1A遺伝子の発現調節領域に相当する部位のSNP解析などの遺伝子学的検索によって、ストレスと遺伝子発現との関連を調べる。3)若年片側聾症例の血漿ADH値を調査する。4)AQP2, 3, 4およびV2-R蛋白の発現をラットとヒトで検討する。5)侵害受容体であるTRPV-1,-4及び内耳特異蛋白であるCochlinの内耳局在を検討する。6)CochlinアイソフォームCTPを指標とした慢性外リンパ瘻の診断法を確立する。7)抗酸化剤の長期投与による難治性メニエール病症例の治療成績を検討する。8)正円窓経由による内耳に直接薬剤を投与するdrug delivery systemを確立する。
結果と考察
メニエール病症例は自己抑制行動と熱中行動、勝気が強い性格を持ち、各種ストレッサーに影響を受けやすい気質を持つことが判明した。遺伝子学的にも、メニエール病症例ではストレスに関連する遺伝子発現に特徴が観られた。AQP2, 3, 4およびV2-R蛋白はヒト内リンパ嚢にも発現し、内リンパ腔の水代謝がADH-アクワポリン系で行われていることが実験動物だけでなくヒトにおいても確証を得た。ADHはストレスホルモンであることより、メニエール病の背景因子にストレスがあることが傍証された。メニエール病との鑑別で慢性外リンパ瘻の診断は重要であるが、CochlinアイソフォームCTPを指標とすることにより診断法が確立した。治療法としては、抗酸化剤による良好な治療成績が確認された。
結論
メニエール病に成因と進行にストレスが関与することを支持する知見が臨床面のみならず、実験的にも得られた。今後、この成果が治療面に反映することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
-