副腎ホルモン産生異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
200500854A
報告書区分
総括
研究課題名
副腎ホルモン産生異常に関する調査研究
課題番号
H17-難治-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 憲二(旭川医科大学医学部 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 光弘(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 諸橋 憲一郎(自然科学研究機構基礎生物学研究所)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所)
  • 柳瀬 敏彦(九州大学大学院医学研究院)
  • 田中 廣壽(東京大学医科学研究所先端医療研究センター)
  • 柴田 洋孝(慶応大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
副腎ホルモン産生異常症に関する診断法と治療法を開発することを研究目標とする。
研究方法
Yeast two-hybrid法を用いたcDNAライブラリーのスクリーニングや、培養細胞を用いた遺伝子の発現阻害実験、ステロイドホルモン受容体のリガンド結合領域の分子生物学的・構造学的解析、トランスジェニックマウス作成等の分子生物学的・分子遺伝学的手法に加え、アンケート調査による全国調査や、血漿活性レニン濃度との比較検討などを合わせて行う。
結果と考察
Ad4BP/SF-1に胎仔副腎特異的エンハンサーの同定、ヒトHDL受容体CLA-1の転写を促進する転写因子の同定。ステロイド合成酵素の遺伝子発現調節におけるフィードバック機構の存在と塩誘導性キナーゼの重要性、ステロイドスルファターゼがStAR蛋白質を増やしてステロイドホルモンの生産を促進することが示された。除草剤atrazineによるヒトaromatase遺伝子の転写活性化が転写レベルで起こり、SF-1の外因性リガンドとして作用している可能性が示唆された。複合型ステロイド合成障害の原因としてのPOR遺伝子異常症は独立した疾患概念が必要と思われ、尿ステロイドプロフィル検査により対照と鑑別可能であることが示された。
わが国における副腎偶発腫の実態を報告すると共に、診断・治療指針の一案を示した。
アルドステロンが脳虚血障害を増悪させる可能性、心肥大進展にアルドステロン誘発性の活性酸素の関与が示唆された。
原発性アルドステロン症(PA)のスクリーニングはARR高値のみならず経口食塩負荷が有用であり、副腎静脈採血により診断は可能で、片側性病変での病側副腎切除の有効性が示された。
MDM2のミネラルコルチコイド受容体(MR)を介したヒト血管リモデリングへの関与と、RHA/CBP複合体のMR転写制御が示された。
グルココルチコイド(GC)がWntシグナルを抑制すること、血管内皮細胞ではGCによるグルココルチコイド受容体発現低下がGC抵抗性に関連すること、HEXIM1のGC応答性遺伝子発現制御機構が示された。
骨髄由来の間葉系幹細胞はステロイドホルモン産生細胞に分化する能力を有していることが示された。
結論
ステロイド合成障害の新たなメカニズムを明らかに、グルココルチコイド抵抗性の病態や、原発性アルドステロン症の診断、血管合併症の予防に関して新しい知見を得た。副腎偶発腫の診療指針案を作成した。骨髄由来の間葉系幹細胞がステロイドホルモン産生細胞に分化する能力を有していることが示され、再生医療の可能性を示すものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-26
更新日
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