難治性疾患の画期的診断・治療法等に関する研究

文献情報

文献番号
200500842A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患の画期的診断・治療法等に関する研究
課題番号
H16-難治-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 準一(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 三宅 幸子(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 小川 雅文(国立精神・神経センター武蔵病院神経内科)
  • 菊地 誠志(北海道大学大学院医学研究科神経内科学分野)
  • 横山 和正(順天堂大学医学部脳神経内科)
  • 野村 恭一(埼玉医科大学総合医療センター第四内科)
  • 太田 宏平(東京理科大学理学部教養)
  • 神田 隆(山口大学医学部脳神経病態学講座)
  • 楠 進(近畿大学医学部神経内科)
  • 堀 利行(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多発性硬化症(MS)のインターフェロン・ベータ療法は慢性期MSの国際標準治療となっているが、有効性や副作用の出方の個人差は大きい。本研究班では、DNAマイクロアレイ技術を用いて、同療法の適応決定やMSの鑑別診断に有用な血液診断法を開発することを目的としている。
研究方法
MS医療における血液診断法の重要性を明らかにするために、全国神経内科医施設に対してアンケート調査を行った。インターフェロン療法の実態を症例調査などによって明らかにした。インターフェロン治療開始時の副反応のメカニズムを解析するため、インターフェロン・ベータ添加により末梢血リンパ球に誘導される遺伝子発現変化を、DNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。MSの治療法選定や開発に貢献することが期待される基盤研究を進めた。
結果と考察
アンケート調査の結果、現在MSの鑑別が困難な症例を持つ施設が32%、DNAマイクロアレイによるインターフェロン作用効果予測法の開発に期待する施設が97%あることがわかった。インターフェロン療法を副作用などのために継続できなかった症例は、全国調査で約25%、国立精神・神経センター内で20%あった。インターフェロン・ベータはインターフェロンのシグナル伝達に関連する遺伝子群の他に、細胞死制御分子, 熱ショック蛋白など、多彩な分子を迅速に誘導することが判明した。特にMS病態を介在するTh1細胞活性を増強させるCXCR3リガンドケモカインや単球に働くCCR2リガンドケモカインの顕著な上昇、好炎症性サイトカイン (IL-6, IL-15, osteopontin, TNFアルファ, IFNガンマ)の上昇などは、インターフェロン療法早期の副作用に関連するものと考えられた。
結論
インターフェロン・ベータの導入に際しては、炎症性ケモカインやサイトカインが誘導されることが科学的に証明された。この結果から、海外で一般的になっている漸増法、あるいはステロイド併用療法などが望ましいことは明確であり、全国的に注意を喚起する必要がある。MSの診断技術は確立されているとは言えず、DNAマイクロアレイなどの方法を取り入れた研究を推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
-