文献情報
文献番号
200500795A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の分子病態の解明と新たな診断・治療法の開発
課題番号
H17-こころ-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
最先端の生物学的手法を用いて、統合失調症の病態を明らかにし、予防法や新たな診断・治療法を開発することを目的とする。
研究方法
1) 統合失調症患者と健常者を対象として血液サンプル(DNA、RNA、血漿)を収集し、知能・記憶、運動機能などの所見、プレパルス抑制テストを用いた感覚・運動ゲイティング機能の測定、MRIによる脳構造や脳機能所見などの多次元データを収集した。
2) 統合失調症の有力な遺伝子dysbindinの遺伝子変異マウスの解析を行った。
3) 患者と健常者のゲノムを用いて5万SNPsによる網羅的遺伝子関連解析や候補遺伝子研究による遺伝子の探索を行った。また、統合失調症患者20例、健常者20例の末梢血の網羅的遺伝子発現解析を行った。
(倫理面への配慮)「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「臨床研究に関する倫理指針」に準拠し、倫理審査委員会での承認を受けている。動物実験も倫理委員会の承認を得た。
2) 統合失調症の有力な遺伝子dysbindinの遺伝子変異マウスの解析を行った。
3) 患者と健常者のゲノムを用いて5万SNPsによる網羅的遺伝子関連解析や候補遺伝子研究による遺伝子の探索を行った。また、統合失調症患者20例、健常者20例の末梢血の網羅的遺伝子発現解析を行った。
(倫理面への配慮)「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「臨床研究に関する倫理指針」に準拠し、倫理審査委員会での承認を受けている。動物実験も倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
統合失調症およそ250例、健常者300例の血液サンプルを収集し、高次脳機能所見や脳画像所見を得た。これは今後貴重なバイオリソースとなる。統合失調症の知能や記憶の指数は80ー90と低く、運動機能も低下していた。日本の測定器によるプレパルス抑制テストを確立し、統合失調症の陽性症状との関連が強いことを明らかにした。健常者でも思考の偏倚等と関連しており、ハイリスク者の発見にも有用である可能性が示唆された。画像解析により、統合失調症における海馬傍回や前頭前皮質の構造異常や白質の異常を明らかにした。また、脳構造異常がいくつかの遺伝子変異(COMTなど)と関連することも見出した。
Dysbindinの変異マウスにおいて社会的行動などの異常を見出した。今後、脳内分子病態を検討することによりメカニズムを明らかにしたい。
網羅的遺伝子解析によって統合失調症と関連するSNPsを非常に多数同定した。候補遺伝子研究によって脳由来神経栄養因子(BDNF)や神経成長因子の受容体(ALK)がリスク遺伝子である可能性を見出した。末梢血の網羅的遺伝子発現については解析中である。
Dysbindinの変異マウスにおいて社会的行動などの異常を見出した。今後、脳内分子病態を検討することによりメカニズムを明らかにしたい。
網羅的遺伝子解析によって統合失調症と関連するSNPsを非常に多数同定した。候補遺伝子研究によって脳由来神経栄養因子(BDNF)や神経成長因子の受容体(ALK)がリスク遺伝子である可能性を見出した。末梢血の網羅的遺伝子発現については解析中である。
結論
1年間のfeasibility studyであったが、サンプル収集、高次脳機能障害や脳構造異常の解明、網羅的遺伝子解析、候補遺伝子研究などによって多数の成果を得た。今後さらに病態解明を行う上で貴重な基盤的成果となる。
公開日・更新日
公開日
2006-04-11
更新日
-