筋萎縮性側索硬化症の最早期病変を求めて:運動ニューロンにおける蛋白合成系の異常と治療法開発の試み

文献情報

文献番号
200500785A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の最早期病変を求めて:運動ニューロンにおける蛋白合成系の異常と治療法開発の試み
課題番号
H16-こころ-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小柳 清光(財団法人東京都医学研究機構・東京都神経科学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 水谷 俊雄(東京都立神経病院・検査科)
  • 渡部 和彦(財団法人東京都医学研究機構・東京都神経科学総合研究所 )
  • 山崎 峰雄(日本医科大学第二内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新たな視点から筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態究明と治療法の開発を目指す。特に運動ニューロンの蛋白合成系の「最上流」にあると考えられるリボゾーム(r)RNA遺伝子の転写活性がなぜ減少するか、そのメカニズムを解明することと、蛋白合成系の、より「下流」にある、リボゾームRNAの減少、粗面小胞体の変化、Golgi小体の断片化などが、「一連の」変性であるか否か、病変のメカニズムを明らかにし、新規治療法開発を目指す。
研究方法
筋萎縮性側索硬化症剖検症例、および家族性ALSモデルであるSOD1遺伝子変異ラット、成体ALSモデルと考えられている顔面神経引き抜き損傷ラットを用いて、運動ニューロンのrRNA遺伝子転写活性と細胞変性との関連を解析する。顔面神経引き抜き損傷モデルを用いて、種々の神経栄養因子組み替えウイルスを開発し、また脳代謝改善薬T588などの低分子薬剤の治療効果の検討、および細胞治療を目指したシュワン細胞株、幹細胞株の樹立をめざす。
結果と考察
(1)  筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルと考えられるラット顔面神経引き抜き損傷の傷害運動ニューロンにおいて、損傷後わずか2時間でリボゾーム(r)RNA遺伝子転写活性が減少し、1日後にリボゾームが減少、2週間後に至ってニューロンが減少することを見出した。これは、rRNA遺伝子転写活性が運動ニューロン脱落と密接に関連していること、およびALSにおいても、個々のニューロン単位の変性は比較的素早く進行している可能性を示唆している。
(2)  ALS脊髄において初めて分裂細胞の存在を証明し、その主体がミクログリア、血管構成細胞であることと、病巣修復機序との関連性を報告した。
(3) ヒト変異SOD1トランスジェニックラットでは外傷で運動ニューロン死が増悪する事を見出した。
(4) 顔面神経引き抜き損傷に伴い神経幹細胞が出現増殖することを見出した。
結論
(1)ALS脊髄運動ニューロンで認められたrRNA遺伝子転写活性の減少は、運動ニューロン死の直接かつ最上流の原因である可能性を掴んだ。
(2)顔面神経引き抜き損傷モデルに対して、GDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子)組み替えウィルスなどが有効であること、ラジカルスカベンジャーMCI-186が保護効果を有する事を見出した。
(3)細胞治療を目指した、ラットシュワン細胞株、幹細胞株を樹立した。

公開日・更新日

公開日
2006-05-09
更新日
-