こころの健康についての疫学調査に関する研究

文献情報

文献番号
200500783A
報告書区分
総括
研究課題名
こころの健康についての疫学調査に関する研究
課題番号
H16-こころ-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 憲人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科)
  • 堀口 逸子(順天堂大学医学部)
  • 立森 久照(国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOの推進する国際的な疫学研究プロジェクト World Mental Health (WMH) に参加し,精神障害の現時点での有病率,生涯にわたる罹患率,社会生活への影響等を調査し,こころの健康対策の基盤を整備する。
研究方法
山形県上山市と神奈川県横浜市を調査地域とし,その一般住民の無作為抽出サンプルを対象に,精神疾患の疫学調査法である Composite International Diagnostic Interview (CIDI) 2000年版による訪問式面接調査を実施した。精神障害の頻度,「ひきこもり」と精神障害の関係,こころの健康問題による受診行動等について分析し,WMH参加国との国際比較も実施した。CIDI診断とStructured Clinical Interviews for DSM-IV (SCID) 診断との併存的妥当性を検討した。さらに調査結果のフィードバック試案を作成した。
結果と考察
二つの調査地域で700名以上のこころの健康に関する調査データを収集することができ,累計4,000名以上のデータ収集が完了した。
 調査時点までの生涯に,18%の地域住民が何らかの精神障害に罹患した経験があり,75歳までに住民の25%が何らかの精神障害を経験すると推定された。過去12ヶ月間に何らかの精神障害を経験した者は住民の7%であった。この有病率は欧米に比べて低く,中国の都市部とほぼ同等であった。重症あるいは中等症の精神障害を持つ者のうち約5人に1人しか医療機関を受診していなかった。この受診率は米国,欧州に比べ低く,中国よりやや高かった。
 大うつ病に関しては,CIDI群で11名,SCID群で8名が診断され,うち5名が両群で診断されていた。CIDIの方が包括的であり,SCIDとの一致率は必ずしも高くない可能性がある。
 「ひきこもり」体験のあるもののうち,その体験のあった当時に精神医学的診断のつくものは半数以下であり,生涯診断としても全く診断を持たないものも同数あったことが明らかとなった。
結論
こころの健康に関する疫学調査は順調に実施されている。今年度もデータ収集の目標数を達成し,累計4,000人を超えるこころの健康に関するデータが収集された。このデータを分析し,精神障害の頻度,「ひきこもり」と精神障害の関係,こころの健康問題による受診行動,諸外国と比べたわが国のこころの健康問題の状況などが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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