α-dystroglycanのo-mannose型糖鎖と細胞外matrix結合に異常をきたす先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発

文献情報

文献番号
200500768A
報告書区分
総括
研究課題名
α-dystroglycanのo-mannose型糖鎖と細胞外matrix結合に異常をきたす先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発
課題番号
H15-こころ-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
清水 輝夫(帝京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 戸田 達史(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部)
  • 遠藤 玉夫(財団法人東京都高齢者研究・福祉財団 東京都老人総合研究所)
  • 寺島 俊雄(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 松村 喜一郎(帝京大学 医学部)
  • 千葉 厚郎(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
51,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
α-Dystroglycan(αDG)のO-mannose型糖鎖と細胞外matrix結合に異常をきたす先天性筋ジストロフィー群(α-dystroglycanopathy)の病態解明と治療法の開発のため、(1) αDGのO-mannosyl glycan(Sia-Gal-GlcNAc-Man-Ser/Thr)の合成各段階の酵素の同定、(2) 福山型先天性筋ジストロフィーの原因蛋白質fukutinの生理機能の解明、(3) 脳・末梢神経病態の解明、(4) 治療法の開発を行う。
研究方法
(1) O-mannosyl glycan合成の第1段階の酵素活性の生化学的測定法を確立する。(2) fukutinの生化学的糖転移酵素活性を検討し、fukutin結合分子を解析する。(3) 福山型モデルマウスの脳・末梢神経病態を病理形態学的方法で検討する。(4) 治療法に関連して、1)薬物治療のため、ジストロフィー筋のDG分解系metalloproteinase活性の関与とその阻害薬効果を検討する、2)遺伝子・細胞治療のため基盤研究を行う。
結果と考察
(1) O-mannosyl glycan合成の第一段階POMT活性はPOMT1/POMT2複合体であることが必須である。(2) Walker-Warburg症候群WWSで見つかった7種のPOMT1変異ではPOMT活性が完全に失活している。(3) fukutinには糖転移酵素活性はなく、POMGnT1と結合するGolgi体膜蛋白質である。(4) fukutin欠損キメラマウスの大脳皮質層構築異常と、末梢神経(根)および神経筋接合部の髄鞘異常がみられた。(5) βDG分解は分泌型metalloproteinase types 2と9で行われるが、α-dystroglycanopathyでは存在せず阻害薬による薬物治療の可能性はない。(6) 正常マウスの骨髄由来ES細胞を中胚葉へ分化・誘導すると沿軸中胚葉細胞群に筋原細胞があり、その骨髄移植法が有用の可能性がある。
結論
αDGのO-mannosyl glycan合成の第1段階酵素、fukutinの生理機能が解明され、先天性筋ジストロフィー(福山型、MEB、WWS)の遺伝子・蛋白質解析、RNAi実験から、O-mannosyl glycanは筋形成に決定的影響を持ち、筋のみでなく脳・末梢神経に発症することが結論された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200500768B
報告書区分
総合
研究課題名
α-dystroglycanのo-mannose型糖鎖と細胞外matrix結合に異常をきたす先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発
課題番号
H15-こころ-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
清水 輝夫(帝京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 戸田 達史(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部)
  • 遠藤 玉夫(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 寺島 俊雄(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 松村 喜一郎(帝京大学 医学部)
  • 千葉 厚郎(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
α-Dystroglycan(αDG)のO-mannose型糖鎖と細胞外matrix結合に異常をきたす先天性筋ジストロフィー群(α-dystroglycanopathy)の病態解明と治療法開発のため、(1)αDGのO-mannose糖鎖(Sia-Gal-GlcNAc-Man-Ser/Thr)の合成各段階の酵素の同定、(2)福山型先天性筋ジストロフィーの原因蛋白質fukutinの生理機能の解明、(3)脳・末梢神経病態の解明、(4)治療法の開発を行う。
研究方法
(1)当該糖鎖合成の各段階の酵素活性の生化学的測定法を確立する。(2)fukutinの酵素活性を検討し、fukutin結合分子を解析する。(3)フクチン欠損キメラマウスの脳・末梢神経を病理形態学的に検討する。(4)治療法に関連して、1)薬物治療のためジストロフィー筋のDG分解系metalloproteinase MMP活性の関与とその阻害薬効果を検討する、2)遺伝子・細胞治療のため基盤研究を行う。
結果と考察
(1)当該糖鎖合成の第二段階酵素POMGnT1の異常で、αDGのO-mannose糖鎖の形成障害→lamininとの結合不全となりmuscle-eye-brain病が発症する。(2)当該糖鎖合成の第一段階酵素POMT活性はPOMT1/POMT2複合体で、どちらか一方の欠損で(1)同様にWalker-Warburg症候群が発症する。(3)fukutinには糖転移酵素活性はなく、POMGnT1と複合体を形成し、当該糖鎖合成の第二段階(GlcNAc→mannose-O)に関与する。(4)fukutin欠損キメラマウスの末梢神経(根)および神経筋接合部に著変あり、また、大脳皮質では神経細胞がグリア境界膜を越えて過遊走している。(5)α-dystroglycanopathyではβDG分解系MMP活性の亢進はなく阻害薬治療の可能性はない。(6)正常マウスの骨髄由来ES細胞を中胚葉へ分化・誘導すると沿軸中胚葉細胞群に筋原細胞がある。その骨髄移植が有用の可能性がある。
結論
αDGのO-mannose糖鎖合成酵素POMT、POMGnT1が解明され、fukutinは酵素ではなくPOMGnT1と結合してGlcNAC添加に関与する。αDGのO-mannose糖鎖は筋形成に決定的影響を持つ。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500768C

成果

専門的・学術的観点からの成果
福山型先天性筋ジストロフィー、muscle-eye-brain病、Walker-Warburg症候群など知能障害を伴う先天性筋ジストロフィーは筋膜α-dystroglycan 糖鎖の先天的形成障害のため発症する分子病態機序を解明した。
臨床的観点からの成果
知能障害を伴う先天性筋ジストロフィーの遺伝子診断法、蛋白質診断法を確立した。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
31件
その他論文(英文等)
16件
学会発表(国内学会)
156件
学会発表(国際学会等)
50件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Endo T., Toda T.
Glycosylation in congenital muscular dystrophies.
Biol. Pharm. Bull. , 26 , 1641-1647  (2003)
原著論文2
Endo T.
Human genetic deficits in glycan formation.
Proc. Japan Acad. , 80 , 128-139  (2004)
原著論文3
Endo T.
Structure, function and pathology of O-mannosyl glycans.
Glycoconjugate J. , 21 , 3-7  (2004)
原著論文4
Manya H., Chiba A., Yoshida A. et al.
Demonstration of mammalian protein O-mannosyltransferase activity: Coexpression of POMT1 and POMT2 required for enzymatic activity.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. , 101 (2) , 500-505  (2004)
原著論文5
Matsumura K., Zhong D., Arai K. et al.
Proteolysis of β-dystroglycan in muscular dystrophy.
Neuromusc. Disord. , 15 , 336-341  (2005)
原著論文6
Saito F., Blank M., Schroder J. et al.
Aberrant glycosylation of α-dystroglycan causes defective binding of laminin in the muscle of chicken musclar dystrophy.
FEBS Lett. , 579 , 2359-2363  (2005)
原著論文7
Kurahashi H., Taniguchi M., Meno C. et al.
Basement membrane fragility underlies embryonic lethality in fukutin-null mice.
Neurobiol. dis. , 19 , 208-217  (2005)
原著論文8
Chiyonobu T., Sasaki J., Nagai Y. et al.
Effects of fukutin deficiency in the developing mouse brain.
Neuromusc. disord. , 15 , 416-426  (2005)
原著論文9
Watanabe M., Kobayashi K., Jin F. et al.
Founder SVA retrotransposal insertion in Fukuyama-type congenital muscular dystrophy and its origin in Japanease and Northeast Asian populations.
Am. J. Med. Genet. , 138 , 344-348  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-