地域集団でのコホート研究による便中細菌診断妥当性の研究

文献情報

文献番号
200500739A
報告書区分
総括
研究課題名
地域集団でのコホート研究による便中細菌診断妥当性の研究
課題番号
H16-免疫-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
白川 太郎(京都大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 宏(東京大学 医科学研究所)
  • 出原 賢治(佐賀大学 医学部)
  • 古賀 泰裕(東海大学 医学部)
  • 園元 謙二(九州大学大学院 農学研究院)
  • 中山 二郎(九州大学大学院 農学研究院 )
  • 林 純(九州大学大学院 医学研究院)
  • 柴田 瑠美子(国立病院機構福岡病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化管細菌相と免疫能がアレルギー疾患発症児童では正常児童と成長につれどのように異なるのかを明らかにすることはアレルギーの発症機序を明らかにし、その予防対策を構築する上で必要であると考えられる。  
17年度には13-16年度の成果を踏まえて(1)便中の細菌の分子遺伝学的な検索により特異的な細菌群を特定する、(2)腸管免疫系のマウスにおける実験モデルの確立、(3)ヒト個体のアトピー性皮膚炎関連遺伝子解析との比較、(4)腸内細菌とアレルギーとの関連依関しての一般集団における疫学調査を熊本県小国町と石垣島で行った。
研究方法
1. 早期診断に向けての疫学調査
2. マウスにおける解析
3. 便の細菌相の検索
4. ヒトアトピー性皮膚炎関連遺伝子解析
5.オリゴ糖投与による予防効果の検討
結果と考察
1.石垣島での869名の縦断追跡疫学調査の結果から、アトピー性皮膚炎の児童のうちで、72%が治癒 していた。一方、正常であった児童から5.5%にアトピー性皮膚炎の発症が見られた。
2.炎症抑制部位ではTregの細胞数が増加し、IL-10を有意に高く産生していることが示された。
3. 追跡児童36名でのアレルギー疾患発症者6名を検討すると、総細菌数、ビフィズス菌の数は健常児童と差を認めなかった。4.アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織ではSCCA1, SCCA2の発現が、mRNAレベル、蛋白レベルともに増強していた。また皮膚組織をIL-4, IL-13で刺激すると、SCCA1, SCCA2の発現量は増大したが、そのほかのサイトカインにはその作用はみられなかった。
5.投与した14名中、13名に著名な改善が見られた。投与後にビフィズス菌の量は顕著な増加が見られた。そのほかの菌群では投与前後での変化は見られなかった。
結論
新生児以降の免疫の発達にはリンパ節が重要な役割を担っており、またそれらのリンパ節から発生するTreg細胞がアレルギー性炎症の抑制に重要な働きをしていることが示された。一方、その免疫を誘導する因子として消化管における細菌相の発育が消化管でのアレルギー反応に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。オリゴ糖投与により、顕著に食物アレルギーが抑制され、ビフィズス菌の増加が観察された。
これまでは、ビフィズス菌がアレルギー抑制に重要な働きをしていると考えられてきたが、大腸菌が実は初期段階で重要な働きをしており、その後ビフィズス菌への移行が起こることが、アレルギー予防に」重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-