培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発

文献情報

文献番号
200500726A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発
課題番号
H17-肝炎-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(財団法人東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 曽根 三郎(東レ株式会社 医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
培養細胞で感染性ウイルスを産生するJFH-1株を用いて感染中和活性の定量法を開発し、HCVウイルス粒子の大量生産によるワクチン開発を行うことである。このために、ワクチン開発のための基礎技術を開発し、臨床試験を可能とするための検討を行う。
研究方法
1.中和抗体価測定のためのアッセイ系の開発
2.ウイルス粒子産生細胞の培養上清から回収したリコンビナントウイルスの精製と不活化
3.構造領域遺伝子のcDNA発現による中空粒子の作製
4.作製したワクチンによる免疫能の検定
結果と考察
感染中和活性測定系
 感染効率が高い細胞を用いて、ウイルスの感染力価を正確に測定できるようになった。この方法により患者血清中にJFH-1株によるウイルス感染を阻止する感染中和抗体が存在することを明らかにした。
ウイルス粒子の精製法の確立
 培養液からウイルスを回収精製する方法を検討した。シードウイルスを高感受性Huh7細胞に感染させて継代培養してウイルスを含む培養液を回収した。ウイルス精製のために様々な方法を試みた。
バイオリアクターによるHCV複製細胞の培養
 ウイルス感染細胞を3次元培養法により培養した。非感染細胞と異なる培養条件が必要とされることが明らかとなった。HCVの全長レプリコンを保持する細胞を3次元培養し、ウイルス粒子が産生されること、産生された粒子に感染性があることを確認した。
構造領域遺伝子cDNA発現によるウイルス様中空粒子の作製
 HCVの構造領域遺伝子をウイルスベクターあるいはプラスミドトランスフェクションで発現させたところ、単独で細胞に構造蛋白を発現させるよりもHCVレプリコン細胞にトランスで発現させた方がウイルス様粒子の産生効率が良いことが判明した。
結論
感染予防が可能なワクチンが開発できれば、医療従事者などのハイリスクグループに対処することが可能となる。中和抗体による感染防御が可能となれば、医療事故にも対処可能となる。予防用ワクチンを世界に先駆けて開発することができればHCVキャリアー率の高い国々への国際協力が可能となる。特に海外に多い薬物常用者のHCV感染やHIV感染者のHCV重感染の予防が可能となる。治療用ワクチンの開発も期待されている。HCVの新たな治療法となれば、多くの患者の社会復帰を可能にし、医療保険のコスト軽減に寄与できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
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