文献情報
文献番号
200500715A
報告書区分
総括
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルスの新たな感染予防法の確立のための肝がん発生等の病態解明に関する研究
課題番号
H16-肝炎-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
林 紀夫(大阪大学大学院 医学系研究科消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 井廻 道夫(昭和大学 医学部第二内科)
- 榎本 信幸(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
- 各務 伸一(愛知医科大学 医学部消化器内科)
- 加藤 宣之(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科腫瘍制御学)
- 金子 周一(金沢大学大学院 医学系研究科がん遺伝子治療学)
- 小池 和彦(東京大学 医学部感染制御学)
- 坪内 博仁(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科健康科学専攻人間環境学講座消化器疾患生活習慣病学)
- 松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所感染機構研究部門分子ウイルス分野)
- 伊藤 義人(京都府立医科大学大学院 医学系研究科消化器病態制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ウイルス肝炎からの肝発がんにはウイルスによる宿主細胞機能の修飾とウイルス感染に伴う免疫学的な変調が関与している。本研究課題の目的は1)C型肝炎ウイルスによる宿主細胞機能の修飾を培養細胞レベルおよび個体レベルで解析しこれを発がん抑止法の開発に結びつけていくこと、2)肝がんにみられる特徴的な遺伝子発現を網羅的に明らかにし標的治療法の探索を行うこと、3)肝がんでみられる自然免疫・獲得免疫応答の特徴を明らかにし免疫治療の開発および新規の診断手法の開発を行うことである。
研究方法
HBV発現・増殖システムとして培養細胞あるいはトランスジェニックマウスを用いる。マイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行う。患者サンプルを用いて免疫学的解析を行う。
結果と考察
3年計画の2年目に当たる本年度において、HCV増殖に関与する宿主因子VAPの同定、脂質ラフト形成がHCV増殖抑制の新規ターゲットとなる可能性の提示、HCVコア蛋白によるSOCS1の発現抑制機構の解明、HCV感染・肝がんに特徴的な高発現遺伝子群の同定、プロテオーム解析による肝がんの新規診断法の開発、ガンキリンを標的とした肝がん遺伝子治療法の基礎的検討、肝がんにおけるNK細胞機能抑制分子としての可溶型MICAの同定、CD8免疫モニタリングシステムの開発、SHAP-HA複合体の新規腫瘍マーカーとしての有用性などの各分野において成果が得られた。
結論
肝がん発生を抑止するためのもっとも有効な手段はHCV感染を終息させることである。本年度の研究により宿主因子であるVAP蛋白やあるいは脂質ラフトの形成がHCV増殖抑制法の新たなターゲットになることが示された。慢性肝炎、肝がんにおける肝臓での遺伝子発現および血液蛋白を網羅的に解析することにより病態の理解がすすみ、また疾患の進行を早期に予測する発現パターンを明らかにできる可能性が示された。肝がんでは可溶型MICAが分泌されており、これが新たな診断マーカーとなる可能性が示された。可溶型MICAは免疫抑制活性を示す機能分子であり、肝がんを切除あるいはablation治療することにより患者の免疫機能を改善させる可能性があることが示された。肝がんにおける免疫モニタリングシステムが構築され、肝がんに対する特異的免疫動態を詳細に解析する手法が得られた。
公開日・更新日
公開日
2006-04-05
更新日
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