エイズ発症阻止に関する研究

文献情報

文献番号
200500696A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ発症阻止に関する研究
課題番号
H15-エイズ-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 愛吉(国立大学法人東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田達雄(国立大学法人大阪大学微生物病研究所)
  • 三間屋純一(静岡県立こども病院)
  • 渡辺慎哉(国立大学法人東京医科歯科大学)
  • 宮澤正顯(国立大学法人近畿大学医学部)
  • 滝口雅文(国立大学法人熊本大学エイズ学研究センター)
  • 松下修三(国立大学法人熊本大学エイズ学研究センター)
  • 竹森利忠(国立感染症研究所免疫部)
  • 小柳義夫(国立大学法人京都大学ウイルス研究所)
  • 田中勇悦(国立大学法人琉球大学大学院医学系研究科医学部)
  • 石坂幸人(国立国際医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
89,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) ヒトゲノム多型性(SNPs)及びトランスクリプトーム、(2)HIV特異的細胞性及び液性免疫、(3)HIVの病態に関わる宿主側及びウイルス側の因子、などの研究を通じてエイズ発症阻止を目指した総合的な研究を行った。
研究方法
日本人HIV感染血友病者及びタイ国のHIV感染者コホートを解析した(塩田、三間屋、渡辺)。イタリアのHIV暴露非感染コホート研究と共同し、マウスとヒトの連鎖不平衡からHIV感染抵抗性遺伝子を同定した(宮澤)。HIV感染者に対する治療ワクチントライアルを実施した(岩本) 。
(倫理面への配慮)
三省合同の『ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針』および文科厚労省合同の『疫学研究に関する倫理指針』を遵守した。
結果と考察
(1)RANTESプロモーターの遺伝的多型RANTES –403Aが有意に高い死亡率と関連することを見出した。IL4-589Tのホモ接合の感染者は、それ以外の感染者と比べて未治療時の死亡率が低かった(塩田)。末梢血2 mlを出発材料として遺伝子発現解析を行えるようになった(渡辺)。ヒト第22染色体のSNPsが曝露非感染者群とHIV感染者群間で有意な頻度差があることを見出した(宮澤)。(2) HAART治療中に“治療ワクチン”として樹状細胞+ペプチドを投与した4名中特異免疫を誘導できなかった2症例はHAART開始前の最低CD4数が低く(50及び2/μl)、いったん免疫が荒廃した感染者ではワクチン効果がより不良である可能性が示唆された(岩本)。HLA-B*3501陽性患者のHIV遺伝子配列解析からCTLによる選択圧によると思われる特異変異を見出した(滝口)。HIV感染後10年以上未治療・未発症のHIV-1感染血友病患者では、HLA-B*1507の頻度が高く、HLA-B*5401の頻度が低い(三間屋)。(3)HIV感染抵抗性遺伝子CD63とその変異体の作用機序を解明した(小柳)。Vprによって染色体DNAの二重鎖切断(以下DSB)が誘導されることを明らかにした。患者血漿中からVprの検出方法を開発した(石坂)。ケモカイン受容体架橋により分化させ不活化HIV-1粒子で感作したDCは、R5 HIV-1抑制因子を産生するCD4+T細胞を誘導した(田中)。
結論
HIV抵抗性遺伝子やSNPsの同定、治療ワクチンの研究等で成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200500696B
報告書区分
総合
研究課題名
エイズ発症阻止に関する研究
課題番号
H15-エイズ-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 愛吉(国立大学法人東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田達雄(国立大学法人大阪大学微生物病研究所)
  • 三間屋純一(静岡県立こども病院)
  • 渡辺慎哉(国立大学法人東京医科歯科大学)
  • 宮澤正顯(国立大学法人近畿大学医学部)
  • 滝口雅文(国立大学法人熊本大学エイズ学研究センター)
  • 松下修三(国立大学法人熊本大学エイズ学研究センター)
  • 竹森利忠(国立感染症研究所・免疫部)
  • 小柳義夫(国立大学法人京都大学ウイルス研究所)
  • 田中勇悦(国立大学法人琉球大学大学院医学系研究科医学部)
  • 石坂幸人(国立国際医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) ヒトゲノム多型性(SNPs)及びトランスクリプトーム、(2)HIV特異的細胞性及び液性免疫、(3)HIVの病態に関わる宿主側及びウイルス側の因子、などの研究を通じてエイズ発症阻止を目指した総合的な研究を行った。
研究方法
日本人HIV感染血友病者及びタイ国のHIV感染者コホートを解析した(塩田、三間屋、渡辺)。イタリアのHIV暴露非感染コホート研究と共同し、マウスとヒトの連鎖不平衡からHIV感染抵抗性遺伝子を同定した(宮澤)。HIV感染者に対する治療ワクチントライアルを実施した(岩本) 。
(倫理面への配慮)
三省合同の『ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針』および文科厚労省合同の『疫学研究に関する倫理指針』を遵守した。
結果と考察
(1)RANTESプロモーターの遺伝的多型RANTES –403Aが有意に高い死亡率と関連することを見出した。IL4-589Tのホモ接合の感染者は、それ以外の感染者と比べて未治療時の死亡率が低かった(塩田)。末梢血2 mlを出発材料として遺伝子発現解析を行えるようになった(渡辺)。ヒト第22染色体のSNPsが曝露非感染者群とHIV感染者群間で有意な頻度差があることを見出した(宮澤)。(2) HAART治療中に“治療ワクチン”として樹状細胞+ペプチドを投与した4名中特異免疫を誘導できなかった2症例はHAART開始前の最低CD4数が低く(50及び2/μl)、いったん免疫が荒廃した感染者ではワクチン効果がより不良である可能性が示唆された(岩本)。HLA-B*3501陽性患者のHIV遺伝子配列解析からCTLによる選択圧によると思われる特異変異を見出した(滝口)。HIV感染後10年以上未治療・未発症のHIV-1感染血友病患者では、HLA-B*1507の頻度が高く、HLA-B*5401の頻度が低い(三間屋)。(3)HIV感染抵抗性遺伝子CD63とその変異体の作用機序を解明した(小柳)。Vprによって染色体DNAの二重鎖切断(以下DSB)が誘導されることを明らかにした。患者血漿中からVprの検出方法を開発した(石坂)。効率的なDC誘導法とR5ウイルス及びX4ウイルス双方に対し抵抗性を付与する実験系が確立できた(田中)。
結論
HIV抵抗性遺伝子やSNPsの同定、治療ワクチンの研究等で成果を挙げた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-12-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500696C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV感染に重要な宿主因子としてNup98及びCD63(+その変異体CD63dN)を同定した。核膜孔複合体の構成蛋白質であるNup98はウイルスcDNAの核内移行に必須である。CD63のN末端欠損変異体はCXCR4の細胞表面発現を完全に抑制し、HIV感染抵抗性に働く。野生型のCD63もHIV感染粒子の形成を100分の1以下に抑制する。HIV感染症の病態新興にかかわる遺伝子多型を発見した。
臨床的観点からの成果
“治療ワクチン”によって特異免疫を誘導できなかった2症例はHAART開始前の最低CD4数が低く(50及び2/μl)、いったん免疫が荒廃した感染者ではワクチン効果がより不良である可能性が示唆された。単球上のケモカインレセプターを架橋することによりTh1誘導性樹状細胞を培養誘導できることを発見した。これらの実験系を使って未知のR5 HIV抑制性CD4ファクターを発見できた。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
HIV感染症の病体振興に関わるゲノム多型性の発見、樹状細胞を用いた治療ワクチンの臨床試験等に関してマスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
0件
多数に及ぶこともあり、発表数を集計しなかった。
学会発表(国際学会等)
3件
分担研究者からは原著欧文論文業績だけを収集してきたため、主任研究者の関与するもののみ記載した。国際エイズ会議、米国レトロウイルス会議等で発表した。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
宮澤正顯教授:Resistance Genes:Supplementary Patent Application to PCT/GB2003/004493(December 23,2004)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamada, T., Watanabe, N.,Iwamoto, A., et al.
Antibody-dependent cellular cytotoxicity via a humoral immune epitope of Nef protein expressed on cell surface.
Journal of Immunology , 172 (4) , 2401-2406  (2004)
原著論文2
Furutsuki,T., Hosoya, N., Iwamoto, A., et al.
Frequent transmission of CTL-escape HIV-1 in highly HLA-A24 -positive Japanese population.
Journal of Virology , 78 (16) , 8437-8445  (2004)
原著論文3
Zhu, D., Taguchi-Nakamura, Iwamoto, A., et al.
Influence of single-nucleotide polymorphisms in the multidrug resistance-1 gene on the cellular export of nelfinavir and its clinical implication for highly active antiretroviral therapy.
Antiviral Therapy , 9 (6) , 929-935  (2004)
原著論文4
Yokomaku, Y., Miura, H., Iwamoto, A., et al.
Impaired epitope processing and presentation as a major escape mechanism from CTL recognition in HIV-1 infection
Journal of Virology , 78 (3) , 1324-1332  (2004)
原著論文5
Nakayama, E.E., Iwamoto, A., and Shioda, T., et al.
A CCR2-V64I polymorphism affects stability of CCR2A isoform
AIDS , 18 (5) , 729-738  (2004)
原著論文6
Sakurai, A., Jere, A., Iwamoto, A., et al.
Functional analysis of HIV-1 vif genes derived from Japanese long-term non progressors and progressors for AIDS
Microbes and Infection , 6 (9) , 799-805  (2004)
原著論文7
Wichukchinda, N., Nakayama, E.E., Shioda, T., et al.
Protective effects of IL4-589T and RANTES-28G on HIV-1 disease progression in infected Thai females
AIDS , 20 (2) , 189-196  (2006)
原著論文8
Nakayama, E.E., Miyoshi, H., Shioda, T., et al.
A specific region of 37 amino acid residues in the SPRY (B30.2) domain of African green monkey TRIM5alpha determines species-specific restriction of simian immunodeficiency virus SIVmac infection.
Journal of Virology , 79 (14) , 8870-8877  (2005)
原著論文9
Mori, K., Sugimoto, C., Shioda, T., et al.
Influence of glycosylation on the efficacy of an Env-based vaccine against simian immunodeficiency virus SIVmac239 in a macaque AIDS model
Journal of Virology , 79 (16) , 10386-10396  (2005)
原著論文10
Munkanta, M., Terunuma, H., Mimaya, J., et al.
HLA-B polymorphism in Japanese HIV-1-infected long-term surviving hemophiliacs
Viral Immunology , 18 (3) , 500-505  (2005)
原著論文11
Matano, T., Kobayashi, H., Miyazawa, M., et al.
Cytotoxic T lymphocyte-based control of simian immunodeficiency virus replication in a preclinical AIDS vaccine trial
Journal of Experimental Medicine , 199 (12) , 1709-1718  (2004)
原著論文12
Kawabata, H., Niwa, A., Miyazawa, M., et al.
Peptide-induced immune protection of CD8+ T cell-deficient mice against Friend retrovirus-induced disease
International Immunology , 18 (1) , 183-198  (2006)
原著論文13
Ueno, T., Tomiyama H., Takiguchi, M., et al.
Functionally impaired HIV-specific CD8 T cells show high affinity TCR-ligand interactions
Journal of Immunology , 173 (9) , 5451-5457  (2004)
原著論文14
Ueno, T., Fujiwara, M., Takiguchi, M., et al.
Reconstitution of anti-HIV effector functions of primary human CD8 T lymphocytes by transfer of HIV-specific alphabeta TCR genes
European Journal of Immunology , 34 (12) , 3379-3388  (2004)
原著論文15
Matsushita, S., Yoshimura, K., Kimura, T., et al.
Spontaneous recovery of hemoglobin and neutrophil levels in Japanese patients on a long-term Combivir containing regimen
Journal of Clinical Virology , 33 (3) , 188-193  (2005)
原著論文16
Miura, Y., Misawa, N., Koyanagi, Y., et al.
Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand induces neuronal death in a murine model of HIV central nervous system infection
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America , 100 (5) , 2777-2782  (2003)
原著論文17
Maeda, K., Nakata, H., Koyanagi, Y., et al.
Spirodiketopiperazine-based CCR5 inhibitor which preserves CC-chemokine/CCR5 interactions and exerts potent activity against R5 human immunodeficiency virus type 1 in vitro
Journal of Virology , 78 (16) , 8654-8662  (2004)
原著論文18
Kawano, Y., Yoshida, T., Koyanagi, Y., et al.
A lentiviral cDNA library employing lambda recombination used to clone an inhibitor of human immunodeficiency virus type 1-induced cell death
Journal of Virology , 78 (20) , 11352-11359  (2004)
原著論文19
Takahashi, Y., Inamine, A., Takemori, T., et al.
Novel role of the Ras cascade in memory B cell response
Immunity , 23 (2) , 127-138  (2005)
原著論文20
Shimura, M., Tokunaga, K., Ishizaka, Y., et al.
Premature sister chromatid separation in HIV-1-infected peripheral blood lymphocytes
AIDS , 19 (13) , 1434-1438  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-