HIV感染症に合併する肝疾患に関する研究

文献情報

文献番号
200500691A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症に合併する肝疾患に関する研究
課題番号
H15-エイズ-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高松純樹(名古屋大学医学部附属病院)
  • 菅原寧彦(東京大学医学部附属病院)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院)
  • 森屋恭爾(東京大学医学部附属病院)
  • 西田恭治(東京医大病院)
  • 菊池 嘉(国立国際医療センター)
  • 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 髭 修平(北海道大学医学部附属病院)
  • 正木尚彦(国立国際医療センター)
  • 加藤道夫(国立病院機構大阪医療センター)
  • 酒井浩徳(国立病院機構九州医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 多剤併用抗レトロウイルス療法 HAARTの登場以降、HIV感染者の予後は著しく改善してきており、HIV感染者の死因も従来に比べて大きく変化してきている。最近の複数の統計によると、HIV感染患者の死亡のうちAIDS非関連死が約半数となっている。そして、非AIDS関連死の多くが慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症による死と報告されている。HIV感染者に合併する慢性HCV感染症の現状を把握し、治療法の開発を目指す。
研究方法
 我が国におけるHIV感染症に合併するウイルス肝炎の実態を把握するためのデータベースを作成する。HIV感染症に合併するC型肝炎に対するリバビリン併用(ペグ)インターフェロン(IFN)療法を中心とした抗ウイルス療法をデザインし実施する。
HIV・HCV重複感染症に対する生体肝移植を念頭において、肝移植ドナー選択のための評価法の開発、より安全なドナー肝手術法の開発を図る。
結果と考察
1)HIV感染症に合併するウイルス肝炎の実態を把握するため、HIV・HCV重複感染症322例の肝疾患進展度の実態調査を行なった。重複感染例のうちの約90%の症例でHCV量が高値であることが判明した(HCV単独感染では72%) 。さらに、総ビリルビンが2.0 mg/dlを越える進行肝硬変が26例以上存在することも明らかになった。また、平均8.5年間の観察期間で、アルブミン値は平均0.17g/dl低下、ビリルビン値は平均0.16mg/dl上昇した。非観血的な慢性肝炎進行度の指標として超音波にて肝の硬度を測定するFibroscan閧?pいてパイロットスタディーを行なった。
2) リバビリン併用PegIFN療法でSustained virological responseが得られた例は、42例中15例(36%)である
3) HIV・HCV重複感染時の診療ガイドライン2005年版を作成、出版した。http://api-net.jfap.or.jp/等で閲覧可能である。
4) 本年度は、班員の施設においてHIV・HCV重複感染症の1例で肝移植が施行された。また、班員以外の施設で2例の生体肝移植が施行された。
5) HIV感染症患者の多数存在する全国の施設における肝臓病専門医とHIV感染症診療医との連携強化を行なった。
結論
HIV感染症に合併する肝疾患について、特にC型肝炎に重点をおいて診療体制の組織強化、抗ウイルス療法の実行、生体肝移植治療実施、等を行なった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200500691B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症に合併する肝疾患に関する研究
課題番号
H15-エイズ-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高松純樹(名古屋大学医学部附属病院)
  • 菅原寧彦(東京大学医学部附属病院)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院)
  • 森屋恭爾(東京大学医学部附属病院)
  • 西田恭治(東京医科大学病院)
  • 菊池 嘉(国立病院機構国際医療センター)
  • 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 髭 修平(北海道大学医学部附属病院)
  • 正木尚彦(国立病院機構国際医療センター)
  • 加藤道夫(国立病院機構大阪医療センター)
  • 酒井浩徳(国立病院機構九州医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HIV感染患者の死亡のうち、AIDS関連死は約半数にとどまり、非AIDS関連死が約半数となっている。非AIDS関連死の多くが慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症による死と報告されている。HIV感染者に合併する慢性HCV感染症の現状を把握し、治療法の開発を目指す。
研究方法
データベースを作成する。HIV感染症に合併するC型肝炎に対する抗ウイルス療法をデザインし実施する。HIV・HCV重複感染症に対する生体肝移植の開発を図る。全国の施設におけるHIV感染症診療医と肝臓病専門医との連携強化を強化する。
結果と考察
1) 全国拠点病院に対するアンケート調査で、我が国のHIV感染症例の約20%がHCVに重複感染していることが判明した。当班員の7施設において重複感染症322例の肝疾患進展度の実態調査を行なった。重複感染例の約90%の症例でHCV量が高値であった(HCV単独感染では72%) 。総ビリルビンが2.0 mg/dlを越える進行肝硬変が26例以上存在した。平均8.5年間の観察期間で、アルブミン値は平均0.17g/dl低下、ビリルビン値は平均0.16mg/dl上昇した。非観血的な慢性肝炎進行度の指標として、超音波にて肝の硬度を測定するFibroscan閧?pいてパイロットスタディーを行なった。
2) リバビリン併用PegIFN療法でSustained virological responseが得られた例は、42例中15例(36%)であり、HCV単独感染症の場合に比して治療効果は低い傾向がある。
3) HIV・HCV重複感染時の診療ガイドライン2005年版を作成した。エイズ予防情報ネットhttp://api-net.jfap.or.jp/等で閲覧可能である。
4) HIV感染例へのB型肝炎重複感染予防のため、HB及びHAワクチンの投与を施行中である。
5) 班員の施設においてHIV・HCV重複感染症の7例で肝移植が施行された。また、班員以外の施設で2例の生体肝移植が施行された。
6) HIV感染症患者の多数存在する全国の施設における肝臓病専門医とHIV感染症診療医との連携強化を行なった。北大で7例、大阪で14例、福岡で10例のHIV・HCV重複感染例に対して抗HCV療法が行なわれてきている。また、広島では、進行肝硬変に対して生体肝移植が施行された。
結論
HIV感染症に合併する肝疾患について、特にC型肝炎に重点をおいて診療体制の組織強化、抗ウイルス療法の実行、生体肝移植治療実施、等を行なった。なお、これらの方策を改良しつつ更に押し進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-12-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500691C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国におけるHIV・HCV重複感染症の実態が、その頻度、肝疾患の進行度の両面から把握された。我が国におけるHIV・HCV重複感染例の今後の治療方針の決定において極めて重要な情報をもたらしており、感染例の予後の改善への貢献が期待される。
臨床的観点からの成果
HCV単独感染例に比して若年で肝硬変へと至る現状が確認された。HCVに対する抗ウイルス療法は、HCV単独感染例に比して効果は低いが、欧米と同様な効果が確認された。また、末期肝硬変に対する生体肝移植がHIV・HCV重複感染例においても有効であることが初めて証明された。HIV感染症に合併する肝疾患について、特にC型肝炎に重点をおいて診療体制の組織強化、抗ウイルス療法の実行、生体肝移植治療実施、等を行なった。なお、これらの方策を改良しつつ更に押し進める必要がある。
ガイドライン等の開発
「HIV・HCV重複感染時の診療ガイドライン」を2005年に作成した。本ガイドラインは、冊子、HPの両方で閲覧可能であり、HIV・HCV重複感染症の診療への活用が期待される。
その他行政的観点からの成果
我が国におけるHIV・HCV重複感染症の現状が把握され、その対策の重要性が再認識された。
その他のインパクト
HIV・HCV重複感染症に関するシンポジウムをはばたき福祉事業団とともに、東京大学医学部附属病院にて開催した(H16年4月24日)。このことは、同日のNHKニュースにて放送された。また、このシンポジウムに関連して、HIV・HCV重複感染症の現状について、翌日の読売新聞朝刊に取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
107件
その他論文(和文)
40件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
12件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kishi Y, Sugawara Y, Akamatsu N, et al.
Splenectomy and preemptive interferon therapy for hepatitis C patients after living-donor liver transplantation.
Clin Transplant. , 19 (6) , 769-771  (2005)
原著論文2
Sugawara Y, Makuuchi M.
Living donor liver transplantation for patients with hepatitis C virus Tokyo experience.
Clin Gastroenterol Hepatol. , 3 (10) , 122-124  (2005)
原著論文3
Sugawara Y, Makuuchi M.
Should living donor liver transplantation be offered to patients with hepatitis C virus cirrhosis?
J Hepatol , 42 (2) , 472-475  (2005)
原著論文4
Miyoshi H, Fujie H, Shintani Y, et al.,
Hepatitis C virus core protein exerts an inhibitory effect on suppressor of cytokine signaling (SOCS)-1 gene expression.
J Hepatol , 43 (5) , 757-763  (2005)
原著論文5
Shintani Y, Fujie H, Miyoshi H, et al.,
Hepatitis C virus and diabetes: direct involvement of the virus in the development of insulin resistance.
Gastroenterology , 126 (3) , 840-848  (2004)
原著論文6
Moriishi K, Okabayashi T, Nakai K, et al.,
Proteasome activator PA28g-dependent nuclear retention and degradation of hepatitis C virus core protein.
J Virol , 77 (19) , 10237-10249  (2003)
原著論文7
Tsutsumi T, Suzuki T, Moriya K, et al.
Hepatitis C virus core protein activates ERK and p38 MAPK in cooperation with ethanol in transgenic mice.
Hepatology , 38 (4) , 820-828  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-