免疫賦活を応用したHIV感染症の治療開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500687A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫賦活を応用したHIV感染症の治療開発に関する研究
課題番号
H15-エイズ-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 滝口 雅文(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 松下 修三(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 森内 浩幸(長崎大学医学部小児科)
  • 満屋 裕明(熊本大学医学部第二内科)
  • 江川 滉二(メディネット(株))
  • 立川 夏夫(国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
94,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAARTにより多くの患者の予後が改善された。しかし、いくつかの課題は残されている。本研究班は、これら課題克服を目的に以下の3つの柱で遂行した。
柱1:HIVに合併する悪性リンパ腫の治療法の開発(江川、立川、滝口)
柱2:現状の治療薬に対する耐性ウイルスの克服(満屋、森内)
柱3:免疫賦活を応用した現状の治療の進展(岡、滝口、松下)
研究方法
柱1:HIVに合併する悪性リンパ腫の治療法の開発
DCワクチン療法の基礎的、臨床的検討をおこなった。
柱2:現状の治療薬に対する耐性ウイルスの克服
CCR5の構造学的解析を行なった。宿主因子がCCR5の発現とHIVの感染性に及ぼす影響も評価した。
柱3:免疫賦活を応用した現状の治療の進展
STI療法では、誘導されたCTLのエピトープのsequenceを行い、escape機序の解析を行った。

結果と考察
柱1:HIVに合併する悪性リンパ腫の治療法の開発
DC治療開始後、EBV特異的なCTLの誘導が確認され維持されている。
柱2:現状の治療薬に対する耐性ウイルスの克服
AVCの構造学的解析から、AVCはCCR5の細胞外ドメインと上部膜貫通ドメインで形成される疎水性ポケットに結合していた。低分子化合物をデザインすることでケモカインレセプターの生理的作用を阻害しない抗HIV薬のモデリングが可能である事示した。
柱3:免疫賦活を応用した現状の治療の進展
STIによる免疫賦活療法では、一定期間CTLを誘導の後CTLは低下した。これは、CTLからのescape mutantであることが証明された。
結論
免疫賦活に関する研究では、HIVそのものに対する免疫賦活療法の基礎となるデータが得られた。次のステップとして是非実現したい。新薬開発では、構造学的データから、より特異的・選択的な薬剤のデザインを図るという最近の分子標的のアプローチに即した研究といえる。今後は既に構築された構造モデルを用いて抗HIV活性に特化した新規のケモカインレセプター(CCR5)阻害剤の開発を進める。CCR5の発現や機能を解析する事は、HIV感染の病態生理の理解を深めるだけではなく、これをターゲットとする治療の効果を高め、副反応を軽減するためにも不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2006-06-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200500687B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫賦活を応用したHIV感染症の治療開発に関する研究
課題番号
H15-エイズ-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 滝口 雅文(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 松下 修三(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 森内 浩幸(長崎大学医学部小児科)
  • 満屋 裕明(熊本大学医学部第2内科)
  • 江川 滉二(メディネット(株))
  • 立川 夏夫(国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、HIV治療の残された課題克服を目的に以下の3つの柱で遂行した
柱1:HIVに合併する悪性リンパ腫の治療法の開発
柱2:現状の治療薬に対する耐性ウイルスの克服
柱3:免疫賦活を応用した現状の治療の進展
研究方法
柱1:HIVに合併する悪性リンパ腫の治療法の開発
DCワクチン後のCTLの誘導能を検討した。
柱2:現状の治療薬に対する耐性ウイルスの克服
in vitroでの抗ウイルス活性の検討やCCR5の構造解析を行った。宿主因子がCCR5の発現とHIVの感染性に及ぼす影響についても検討した。
柱3:免疫賦活を応用した現状の治療の進展
STI療法では、臨床経過の観察と誘導されたCTLのエピトープのsequenceを行い、escape機序の解析を行った。
結果と考察
柱1:HIVに合併する悪性リンパ腫の治療法の開発
過去2年間で、免疫細胞療法を1卵生双生児であった2例に行った。MatureDC療法で、優位なCTLの誘導に成功した。
柱2:現状の治療薬に対する耐性ウイルスの克服
AVCは多剤耐性株を含むR5-HIV-1を試験管内および動物モデルでも強力な抗ウイルス活性を発揮した。HIV感染に重要でありながらケモカイン作用へはほとんど影響しない領域があることを明らかにした。また、CCR5の発現に関係する因子が明らかになった。
柱3:免疫賦活を応用した現状の治療の進展
STIによる免疫賦活療法では、一定期間CTLを誘導の後CTLは低下した。これは、CTLからのescape mutantであることが証明された。
結論
免疫賦活に関する研究では、HIVそのものに対する免疫賦活療法の基礎となるデータが得られた。次のステップとして是非実現したい。新薬開発では、構造学的データから、より特異的・選択的な薬剤のデザインを図るという最近の分子標的のアプローチに即した研究といえる。今後は既に構築された構造モデルを用いて抗HIV活性に特化した新規のケモカインレセプター(CCR5)阻害剤の開発を進める。CCR5の発現や機能を解析する事は、HIV感染の病態生理の理解を深めるだけではなく、これをターゲットとする治療の効果を高め、副反応を軽減するためにも不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2006-06-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500687C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HLA-B51を持った患者で、HIV-1の増殖抑制に関与しているCTLを明らかにしたことは、評価されている。AVCは米国での臨床試験(第2/3相試験)でAIDS患者に対し強力な抗HIV活性を示したが肝障害の為に現在臨床試験への新しい患者のenrollmentは中止されている。しかし、詳細な構造モデルから抗HIV作用に特化した化合物のデザインを図る系は今のところ世界的に見ても非常に独自性に富むものと思われる。
臨床的観点からの成果
今回の結果は、免疫賦活療法への布石となったといってもよい。今後より強力なCTLエピトープを複数発見することにより、より有効な免疫賦活療法を実施したい。
一方、新薬開発では、CCR5阻害薬の開発の過程で、繊細な構造解析を行うことができた。今回開発したAVC自体は、臨床試験の過程で副作用により開発中止となったが、生体への影響の少ない新規薬剤の計画的デザインの可能性を示唆するものである。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
2005年11月3日、4日に鹿児島にて公開シンポジュウム(白馬シンポジュウム)を開催した
2006年3月11日に熊本、18日に東京で成果発表会を公開シンポジュウムの形で開催した

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
33件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
1)「乳清由来lactoperoxidaseおよびsialyl lactoseのHIV感染抑制効果」特許申請中。 2) 特願2000-137975  3) 特願2001-079611
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tomiyama H, Fujiwara M, Oka S, et al
Epitope-dependent effect of Nef-mediated HLA class I down-regulation on ability of HIV-1-specific CTL to suppress HIV-1 replication
J Immunol (Cutting Edge) , 174 , 36-40  (2005)
原著論文2
Yamanaka H, Teruya K, Kikuchi Y, et al
Efficacy and immunologic responses to influenza vaccine in HIV-1-infected persons
JAIDS , 39 , 167-173  (2005)
原著論文3
Fujiwara M, Takata H, Oka S, et al
Patterns of cytokine production in HIV-1-specific human CD8+ T cells after stimulation with HIV-1-infected CD4+T cells
J Virol , 79 , 12536-12543  (2005)
原著論文4
Nakata H, Maeda K, Miyakawa T, et al
Potent anti-R5 human immunodeficiency virus type 1 effects of a CCR5 antagonist, AK602/ONO4128/GW873140, in a novel human peripheral blood mononuclear cell nonobese diabetic-SCID, interleukin-2 receptor gamma-chain-knocked-out AIDS mouse model
J Virol , 79 , 2087-2096  (2005)
原著論文5
Satoh M, Takamiya Y, Oka S, et al
Identification and characterization of HIV-1-specific CD8+T cell epitopes presented by HLA-A*2601
Vaccine , 23 , 3783-3790  (2005)
原著論文6
Matsushita S, Yoshimura K, Kimura T, et al
Spontaneous recovery of hemoglobin and neutrophil levels in Japanese patients on a long-term Combivir containing regimen
J Clin Virol , 33 , 188-193  (2005)
原著論文7
Borghan MA, Oka S, and Takiguchi M
Identification of HLA-A*3101-restricted cytotoxic T lymphocyte response to human immunodeficiency virus type 1 (HIV-1) in patients with chronic HIV-1 infection
Tissue Antigens , 66 , 305-313  (2005)
原著論文8
Sakaguchi N, Kimura, Matsushita S, et al
Generation of high-affinity antibody against T cell- dependent antigen in ganp gene- transgenic mouse
J Immunol , 174 , 4485-4494  (2005)
原著論文9
Ghosh AK, Swanson LM, Cho H, et al
Structure-based design: synthesis and biological evaluation of a series of novel cycloamide-derived HIV-1 protease inhibitors
J Med Chem , 48 , 3576-3585  (2005)
原著論文10
Hirabayashi Y, Tsuchiya K, Kimura S, et al
Simultaneous determination of six HIV protease inhibitors the active metabolite of nelfinavir (M8) and non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor in human plasma by high-performance liquid chromatography
Biomed Chromatogr , 20 , 28-36  (2006)
原著論文11
Moriuchi M, Yoshimine H, Oishi K, et al
Norepinephrine inhibits human immunodeficiency virus type-1 infection through the NF-kappaB inactivation
Virology , 345 , 167-173  (2006)
原著論文12
Gatanaga H, Suzuki Y, Yeh DD, et al
Altered HIV-1 gag protein interactions with cyclophilin A (CypA) upon the acquisition of H219Q and H219P substitutions in the CypA binding loop
J Biol Chem , 281 , 1241-1250  (2006)
原著論文13
Maeda K, Das D, Ogata-Aoki H, et al
Structural and molecular interactions of CCR5 inhibitors with CCR5
J Biol Chem , 281  (2006)
原著論文14
Ghosh AK, Schiltz G, Perali RS, et al
Design and synthesis of novel HIV-1 protease inhibitors incorporating oxyindoles as the P2'-ligands
Bioor Med Chem Let , 76 , 1869-1873  (2006)
原著論文15
Gatanaga H, Hachiya A, Kimura S, et al
Other mutations than 103N in HIV-1 reverse transcriptase (RT) emerged from K103R polymorphism under non-nucleoside RT inhibitor pressure
Virology , 344 , 354-362  (2006)
原著論文16
Matsuoka AS, Gatanaga H, Sato H, et al
Cooperative contribution of Gag substitutions to nelfinavir-dependent enhancement of precursor cleavage and replication of human immunodeficiency virus type-1
Antiviral Res , 70 , 51-59  (2006)
原著論文17
Kawashima Y, Satoh M, Oka S,et al
Identification and characterization of HIV-1 epitopes presented by HLA-A*2603: Comparison between HIV-1 epitopes presented by A*2601 and A*2603
Human Immunol , 66 , 1155-1166  (2005)
原著論文18
Yin PD, Das D, and Mitsuya H
Overcoming HIV Drug Resistance through Rational Drug Design Based on Molecular, Biochemical, and Structural Profiles of HIV Resistance
Cell Mol Life Sci  (2006)
原著論文19
Gatanaga H, Tachikawa N, Kikuchi Y, et al
Urinary 2-microglobulin as a sensitive marker for renal injury by tenofovir disoproxil fumarate.
AIDS Res Hum Retrovirus  (2006)
原著論文20
Bi X, Gatanaga H, Tanaka M, et al
Modified Dynabeads method for enumerating CD4+ T cell count for widespread use in recourse-limited situations
JAIDS , 38 , 1-4  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-