食品由来感染症の細菌学的疫学指標のデータベース化に関する研究

文献情報

文献番号
200500677A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来感染症の細菌学的疫学指標のデータベース化に関する研究
課題番号
H15-新興-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立感染症研究所細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 長野 秀樹(北海道立衛生研究所微生物)
  • 甲斐 明美(東京都立衛生研究所微生物)
  • 松本 昌門(愛知県衛生研究所細菌部)
  • 勢戸 和子(大阪府立公衆衛生研究所感染症部)
  • 田中 博(愛媛県立衛生研究所)
  • 堀川 和美(福岡県保健環境研究所)
  • 渡辺 治雄(国立感染症研究所細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、標準化プロトコールによる種々の事例由来株の解析を行い、技術の精度を維持或いは改良することを目的とした精度管理を行う。また、国際的な広域腸管感染症事例等にも対応できるように、共通の標準化プロトコールに基づいた互換性のあるデータベースの構築を進める。分離株の解析情報を共有・還元して食品由来感染症の制御に役立てることを目的としたネットワークを構築することを目的とす。
研究方法
1) 標準化プロトコールに基づいて6ブロックごとに各種の菌についてPFGE解析を行い,その有効性の検証、および精度管理を行う。
2) 画像解析ソフト(Fingerprinting II)によるPFGE泳動像の解析を行い,感染研におけるデータベースの構築を継続するとともに、広域分離株が同一汚染原因由来であるか否かについて解析を行う。
3) 腸管出血性大腸菌O157について、Multilocus variable-number tandem repeat analysis (MLVA)法による解析条件の検討を行う。
結果と考察
各ブロック内での精度管理の結果から、基準株Salmonella Braenderup H9812株および標準化プロトコールを使用することで、より高精度の解析結果が得られデータの互換性が確保されつつあることが伺える。デンドログラムの利用により、広域共通パターンが容易に検出される一方で、PFGEによる菌株の識別能では限界があることを示唆する結果がMLVAにより得られた。今後、種々の分離株を用いてより詳細な条件検討が必要だと考えられた。解析情報を共有するための手段として、アクセスし易いInternetを利用したシステムの試験運用を行った。地研を対象とする限定公開における問題点等について、今後も検討する必要があると考えられた。
結論
食品由来感染症においても多国間に及ぶ広域流行が発生しており、我が国においても世界的に共通のプロトコールに基づくPFGE解析を一層普及させ、データの相互比較を可能にさせる必要がある。国内のシステムを充実させるための一手段として解析方法の技術的な精度管理が重要であるとともに、情報共有のための手段としてInternet利用の情報還元システムも推進すべきと考えられた。PFGE解析のネットワークの中核となる全国の地研が解析技術を維持し改良できるような組織的支援システムが求められている。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200500677B
報告書区分
総合
研究課題名
食品由来感染症の細菌学的疫学指標のデータベース化に関する研究
課題番号
H15-新興-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立感染症研究所細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 長野 秀樹(北海道立衛生研究所微生物)
  • 甲斐 明美(東京都立衛生研究所微生物)
  • 松本 昌門(愛知県衛生研究所細菌学)
  • 勢戸 和子(大阪府立公衆衛生研究所感染症部)
  • 田中 博(愛媛県立衛生研究所)
  • 堀川 和美(福岡県保健環境研究所)
  • 渡辺 治雄(国立感染症研究所細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 食品由来感染症において被害の拡大を未然に防ぐために、感染原因菌の解析システムとして標準化プロトコールによるパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)を用い、その結果をデータベース化して迅速な発生探知に役立てることが重要である。本研究では、標準化プロトコールにより種々の事例由来株を解析し、技術の精度管理を行う。さらに、互換性のあるデータベースを構築しながら、分離株の解析情報を共有・還元して食品由来感染症の制御に役立つシステム構築を目的とする。
研究方法
1) 標準化プロトコールにより解析技術の均一化,およびその精度管理を行う。そのために、全国に75ある地方衛生研究所(地研)を6ブロックにわけ、ブロックごとに各種の菌についてPFGE解析を行い,その有効性の検証、および精度管理を行う。
2) 画像解析ソフト(Fingerprinting II)によるPFGE泳動像の解析を行い,感染研でのデータベース構築を継続するとともに、各機関において菌の相同性を識別し,離れた場所あるいは異なる時期に分離された菌が同一汚染原因由来のものかどうかを判定する方法を開発する。
結果と考察
各ブロック内での精度管理の結果から、標準化プロトコールの使用により、高精度の解析結果とデータの互換性が確保されつつあることが伺える。また、データの互換性については、日米間での2事例においてそれぞれの解析結果が両国で一致していることから、十分に信頼できる互換性が確保できていると考えられる。デンドログラムの利用により、広域共通パターンが容易に検出される一方で、PFGEによる菌株の識別能では限界があることを示唆する結果がMLVAにより得られた。今後、種々の分離株による詳細な条件検討が必要だと考えられた。解析情報を共有するための手段として、アクセスし易いInternetを利用したシステムの試験運用を行った。地研を対象とする限定公開について、さらに検討する必要があると考えられた
結論
食品由来感染症においても多国間に及ぶ広域流行が発生しており、我が国においても世界的に共通のプロトコールに基づくPFGE解析を一層普及させ、データの相互比較を可能にさせる必要がある。国内のシステムを充実させるための一手段として解析方法の技術的な精度管理が重要であるとともに、情報共有のための手段としてInternet利用の情報還元システムも推進すべきと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500677C

成果

専門的・学術的観点からの成果
基準株Salmonella Braenderup H9812株、及び標準化PFGE解析プロトコールを各地研に配布し、それに基づいて各ブロックで精度管理を行った。その結果、従来のプロトコール以上の精度の高い解析結果が得られ、各PFGEパターンに対して今後も増加することが予想されるPFGEパターンに対応することが可能なデータベースの構築が進んだ。また、解析情報の還元には個別の通知(e-mail)の他に厚生労働行政総合情報システム(WISH)を利用し、情報の共有化を行った。
臨床的観点からの成果
治療と直結した成果ではないが、患者からの分離株の細菌学的動向を把握することで関連事例であることが明らかになればほぼ同様の治療方針を立てられることや、感染源の特定に結びつく情報であれば感染拡大阻止に役立つなどの成果があった。
ガイドライン等の開発
PFGE解析にあたり、米国CDCの標準化プロトコールに準拠した新プロトコールを作成し分子量マーカーとなる基準株とともに各地研に配布した。標準化プロトコールの使用により、互換性の高いデータを蓄積することが可能となった。
その他行政的観点からの成果
標準化プロトコールでのデータの互換性については、日米間で発生した二つの事例、腸管出血性大腸菌O157に汚染された冷凍牛ひき肉によるO157感染事例及びハワイからの航空機機内食による赤痢事例においてそれぞれの解析結果が両国で一致していることが確認されたことから、十分に信頼できる互換性が確保できていると考えられた。このような国際的な感染症事例においても、標準化プロトコールを使用した解析結果であれば、瞬時に関係国間において比較可能であることが明らかになった。
その他のインパクト
日米で発生した腸管出血性大腸菌O157に汚染された冷凍牛ひき肉によるO157感染事例においては、関連が明らかになった時点で米国の当該製品製造会社によるリコールが行われた。このような情報の提供が感染の拡大阻止に有効であるよい例と考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
若齢者等の腸管出血性大腸菌食中毒の予防について(食安監発第0525003号)
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Izumiya, H., Nojiri, N., Hashiwata, Y., et. al
Salmonella enterica Serovar Enteritidis, Japan.
Emerg. Infect. Dis. , 9 , 1650-1651  (2003)
原著論文2
Okura, M., Osawa, R., Iguchi, A., et. al
Genotypic Analyses of Vibrio parahaemolyticus and Development of a Pandemic Group-Specific Multiplex PCR Assay.
J. Clin. Microbiol. , 41 , 4676-4682  (2003)
原著論文3
Shaikh, N., Terajima, J., and Watanabe, H.
IpaC of Shigella binds to the C-terminal domain of b-catenin.
Microbial Pathogenesis , 35 , 107-117  (2003)
原著論文4
Terajima, J., Tamura, K., Hirose, K., et. al
A multi-prefectural outbreak of Shigella sonnei infections associated with eating oysters in Japan.
Microbiol. Immunol. , 48 , 49-52  (2004)
原著論文5
Masahiro Suzuki, Masakado Matsumoto, Mami Hata, et. al
Development of a rapid PCR method using the insertion sequence IS1203 for genotyping shiga toxin-producing Escherichia coli O157.
J. Clin. Microbiol. , 42 , 5462-5466  (2004)
原著論文6
Taguchi, M., Seto, K., Kanki, M., et. al
Outbreak of food poisoning caused by lunch boxes prepared by company contaminated with multidrug resistant Salmonella Typhimurium DT104,
Jpn. J. Infect. Dis. , 58 , 55-56  (2005)
原著論文7
Matsumoto M, Suzuki Y, Nagano H., et. al
Evaluation of pulsed-field gel electrophoresis analysis performed at selected prefectural institutes of public health for use in PulseNet Japan.
Jpn J Infect Dis. , 58 , 180-183  (2005)
原著論文8
Iyoda S, and Watanabe H.
ClpXP protease controls expression of the type III protein secretion system through regulation of RpoS and GrlR levels in enterohemorrhagic Escherichia coli.
J Bacteriol. , 187 , 4086-4094  (2005)

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
-