マラリアの感染予防及び治療に関する研究

文献情報

文献番号
200500664A
報告書区分
総括
研究課題名
マラリアの感染予防及び治療に関する研究
課題番号
H15-新興-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
狩野 繁之(国立国際医療センター 研究所、適正技術開発・移転研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 木村幹男 (国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 竹内勤(慶應義塾大学医学部熱帯医学・寄生虫学教室)
  • 高木正洋(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 松本芳嗣(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 奥浩之(群馬大学工学部材料工学科)
  • 岩本愛吉(東京大学医科学研究所)
  • 建野正毅(国立国際医療センター国際医療協力局)
  • 吉田正樹 (東京慈恵会医科大学附属病院感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国におけるマラリアの感染制御という課題は、地球規模でのマラリア猖獗の状況に鑑みて、厚生労働行政上の重要な懸案である。本研究の目的は、マラリアの感染予防及び治療のために、グローバルスタンダードに照らした最良な医療サービスの提供をわが国で如何に効果的に行えるかを学際的に研究し、国民の保健・医療・福祉の向上に具体的に貢献することである。期待される成果としては、マラリアの予防ガイドライン作成と、それによる医療の提供で、患者数の減少と重症化回避が期待される。
研究方法
以下の研究課題の遂行を図った。1)国内のマラリア発生動向調査、2)抗マラリア薬の適正な選択に関する臨床研究、3)重症マラリアの治療に関する研究、4)国外におけるマラリア流行調査、5)薬剤耐性マラリアの疫学・治療学研究、6)薬剤耐性の克服に向けての新規薬剤の評価に関する研究、7)マラリア予防・治療の効果判定に係る研究、8)マラリアの病態モデル、薬剤評価に関する研究、9)マラリア媒介蚊の分布及び吸血行動に関する研究
結果と考察
以下の研究成果に集約した。1)発生動向調査研究では、小児や外国人訪問者のマラリアが顕在化した、2)既存の抗生物質の効果判定、薬剤耐性解除に関する機序解明、徐放性マラリアワクチン開発のためのナノオーダーの材料合成の成功、3)診断・治療の開発研究成果は、簡易診断キット、PCR診断の精度の比較、マラロンやACTの臨床研究、サルを用いたヒト重症化モデルの作成など、4)防蚊や旅行医学関連による流行対策研究では、常温揮発性ピレスロイド練り込み蚊帳の開発などが行えた。それぞれの成果をもって、マラリアの感染予防及び治療における国民の保健・医療の向上に貢献できたと考える。
結論
本年度の班全体の上記成果の集約は、「マラリア予防ガイドライン」を頒布してその評価・研究を行えたことにある。国際医療センタートラベルクリニックに渡航相談に訪れた52人のクライアントの内、ガイドラインに沿ったマラリア予防を適用した27人ではマラリア感染者はでなかった。「マラリア予防ガイドライン」はその適用に関する限り、効果的な医療提供に結びつくための道筋を示していると考えられた。当該研究成果は、日本感染症学会や、タイ国で開催された国際熱帯医学会などで報告した。本研究班の研究成果が、日常の医療にいっそう還元されてゆくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200500664B
報告書区分
総合
研究課題名
マラリアの感染予防及び治療に関する研究
課題番号
H15-新興-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
狩野 繁之(国立国際医療センター 研究所、適正技術開発・移転研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 木村幹男(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 竹内勤(慶應義塾大学医学部熱帯医学・寄生虫学教室)
  • 高木正洋(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 松本芳嗣(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 奥浩之(群馬大学工学部材料工学科)
  • 岩本愛吉(東京大学医科学研究所)
  • 建野正毅(国立国際医療センター国際医療協力局)
  • 吉田正樹 (東京慈恵会医科大学附属病院感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
&Y?,&_???《おけるマラリアの感染制御という課題は、地球規模でのマラリア猖獗の状況に鑑みて、厚生労働行政上の重要な懸案である。本研究の目的は、マラリアの感染予防及び治療のために、グローバルスタンダードに照らした最良な医療サービスの提供をわが国で如何に効果的に行えるかを学際的に研究し、国民の保健・医療・福祉の向上に具体的に貢献することである。本研究の総合的な成果をもって、わが国におけるマラリア患者数の減少と重症化回避が期待される。
研究方法
3年間一貫して、次の分担研究課題の遂行を図り、成果を集約した。1)国内のマラリア発生動向調査、2)抗マラリア薬の適正な選択に関する臨床研究、3)重症マラリアの治療に関する研究、4)国外におけるマラリア流行調査、5)薬剤耐性マラリアの疫学・治療学研究、6)薬剤耐性の克服に向けての新規薬剤の評価に関する研究、7)マラリア予防・治療の効果判定に係る研究、8)マラリアの病態モデル、薬剤評価に関する研究、9)マラリア媒介蚊の分布及び吸血行動に関する研究
結果と考察
1)発生動向調査では、1999年4月から2006年12月までの国内輸入マラリア届出症例748例の解析をおこない、推定感染地の危険度、国籍、年齢、性別などの統計解析を行った。2)診断・治療開発研究は、簡易診断法の導入、青蒿素系合剤の評価、サルを用いた重症化モデルの創生ができた。3)予防と防疫に関しては、アジアの主要な媒介蚊の日本での定着の可能性の検証、常温揮発性ピレスロイド練り込み蚊帳による、吸血回避効果の評価などで成果をあげた。4)創薬・ワクチン開発研究では、薬剤耐性解除に関する機序解明、ナノ粒子徐放性マラリアワクチン材料の合成成功で、それぞれ特許も開示できた。これらの成果を総合して、マラリアの感染予防及び治療における国民の保健・医療の向上に貢献できたと考える。
結論
3年間の班全体の成果の集約は、「マラリア予防ガイドライン」や「マラリア治療ハンドブック」を頒布して、その評価・研究を行えたことにある。予防ガイドラインは、わが国の全ての国立病院機構、検疫所、JICA、防衛庁、日赤、世界の日本大使館診療室、JOHAC提携全海外企業医務室、日本熱帯医学会全会員など、およそ4,000部を無料頒布し、その評価を得ている。研究成果の報告も、日本感染症学会や国際熱帯医学会などで行い、その還元を図った。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500664C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬剤耐性マラリアの克服は、世界で最も大きな課題となっているが、新規薬剤の開発に関わる本研究では、デヒドロアルテミシニンとピペラキンの合剤の有効性を、タイの熱帯熱マラリア患者180人の二重盲検法で証明し、さらには抗真菌薬(アンホテリシンBとグリオトキシンの2剤)の応用で、薬剤耐性マラリア原虫の増殖阻害に有効性が評価でき、成果はExp Parasitolの雑誌に掲載された。いずれもマラリアの医療に直結した社会的意義の高い研究成果と考えられる。
臨床的観点からの成果
わが国では認可されていないが、世界では有用とされている各種迅速診断法のわが国での適用に関する基礎的データを集積し、保険適用の必要性を内科学会、感染症学会などに提示した。また、同様に認可のない抗マラリア薬アーテスネートの有効性や、その合剤各種の臨床試験データを重ね、重症マラリアや薬剤耐性マラリアの有効な治療法をハンドブックまとめるなど、成果の還元を社会に図った。これらの成果はバンコクの国際熱帯医学会も高い評価を受けた。
ガイドライン等の開発
「マラリア予防ガイドライン」や「マラリア治療ハンドブック」を頒布して、その評価・研究を行えた。予防ガイドラインは、わが国の全ての国立病院機構、検疫所、JICA、防衛庁、日赤、世界の日本大使館診療室、JOHAC提携全海外企業医務室、日本熱帯医学会全会員など、およそ4,000部を無料頒布し、極めて高い評価を得ている。研究成果の報告も、日本感染症学会、日本臨床寄生虫学会、日本熱帯医学会、国際熱帯医学会(バンコク)などで行い、その還元を図った。
その他行政的観点からの成果
次の各成果を収めた。1)国内のマラリア患者感染管理対策の充実による政策医療「国際的感染症」への貢献、2)日本の渡航者の、安心で安全なマラリア予防に関する医療サービスの提供、3)わが国への新規抗マラリア導入(薬価収載・保険適用)のための基礎データの集積、4)重症化阻止による医療費の削減と国民の生命を守ることに直接的に貢献、5)政策医療「国際医療協力」としての開発途上国のマラリア流行対策への国際貢献、6)自然災害等によるマラリアの突発的流行の行政的リスク管理のへの貢献。
その他のインパクト
特許出願は、ジフェニルアセチルピペラジン誘導体及び耐性克服剤に関する、竹内分担研究者を中心とした3件(国内2件、米国1件)、ワクチン候補抗原の合成法に関する、奥分担研究者・狩野主任研究者を中心とする5件(国内2件、特許協力条約に基づく国際出願2件、タイ王国への国際出願1件)である。教育医事新聞(第246号、2005年2月25日)で、ガイドライン:日本初の指針(案)の紹介。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
54件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
マラリア予防ガイドラインの作成等
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国立国際医療センターホームページへの成果の公開と還元(http://www.imcj.go.jp/rese/top/news.html)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Noi M, Ishiguro T, Oku H, et al.
Solution-phase synthesis and structural analysis of multiple antigenic peptides having partial sequences of Plasmodium falciparum enolase
Peptide Science , 309-312  (2003)
原著論文2
Kano S, Kimura M
Trends in malaria cases in Japan
Acta Tropica , 89 , 271-278  (2004)
原著論文3
木村幹男、狩野繁之
輸入マラリアの現状と治療・予防
感染症 , 34 (2) , 33-39  (2004)
原著論文4
狩野繁之
薬剤耐性マラリアの分子メカニズムと疫学
医学のあゆみ , 209 (9) , 564-568  (2004)
原著論文5
木村幹男、狩野繁之
輸入感染症
治療 , 86 , 506-508  (2004)
原著論文6
狩野繁之
マラリア
IRYO , 58 (7) , 431-433  (2004)
原著論文7
狩野繁之、木村幹男
マラリアの輸入は続く
保健の科学 , 46 (8) , 574-578  (2004)
原著論文8
木村幹男、狩野繁之
注目される感染症ーマラリア
臨床病理レビュー ,  (134) , 75-82  (2006)
原著論文9
狩野繁之
マラリア予防・治療ガイドライン
感染症 , 35 (5) , 13-18  (2005)
原著論文10
松本芳嗣、三條場千寿
環境改変による感染症流行の危機ー沙漠緑化と感染症の増加ー
地球環境 , 10 (1) , 56-59  (2005)
原著論文11
狩野繁之
マラリア迅速診断法
Clinical Parasitology , 16 (1) , 26-29  (2005)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-