SARSウイルス感染阻止化合物の探索

文献情報

文献番号
200500640A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSウイルス感染阻止化合物の探索
課題番号
H16-新興-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
菅村 和夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石坂 幸人(国立国際医療センター)
  • 服部 俊夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①細胞内の小胞輸送関連分子によるSARSウイルスの複製・成熟過程の制御機構の解析
②海洋微生物ライブラリーを対象にした抗ウイルス候補の探索
③感染実験による漢方薬エキスの感染抑制効果の確認
研究方法
①ウイルスの細胞内への取り込み過程を解明するためにエンドサイトーシス関連蛋白および小胞輸送関連蛋白の役割に着目した。SARSウイルス受容体であるヒトACE-2遺伝子をSTAM1/STAM2ダブル欠損細胞、Hrs欠損細胞に導入した後に、SARSウイルスを感染させ、ウイルスの吸着および侵入を検討した。
②3段階のスクリーニングを行った。1)ウイルスのS蛋白質をELISAプレートに結合させたのちにACE-2を作用させた。これに蛍光標識した抗ACE-2抗体を作用させ結合性をモニターした。2)ビアコアを用いたSまたはACE-2に対する結合性を解析した。3)レンチウイルスを用いた感染系の立ち上げと ACE-2活性測定系の導入を行った。
③HIV/SARS偽ウイルスを用い、これまでに有効とされた12種類の漢方薬エキスのSARSウイルス侵入阻止能を検討した。同条件でSARSウイルス野生株PUMC01 F5を用いた感染実験も行った。有望な漢方薬について細胞毒性の検討とエキスの精製を行った。
結果と考察
①細胞内侵入にはACE-2の発現が必須であり、クラスリン重鎖の発現が相関すること、小胞輸送関連蛋白であるHRS依存性に侵入制御を受けることが判明した。これによりウイルスの感染成立におけるACE-2、クラスリンおよびESCRT小胞輸送系蛋白群の関与が示された。
②4500検体のスクリーニングが終了した。一次陽性は550検体、二次陽性は62検体であった。三次陽性の10検体中5個にACE-2活性を認めた。
③偽ウイルス感染抑制実験では桂皮樹皮エキスと丁子エキスが細胞毒性を示さずに感染を抑制した。桂皮樹皮エキスのBuOHの画分が細胞毒性試験をクリアした。上記2種類のエキスは感染性ウイルスに対しても感染を抑制した。精製画分のうち桂皮樹皮エキスのAq.EtOH画分とBuOH画分が感染を抑制した。
結論
SARSウイルス感染阻止化合物を発見し、有効な治療薬の開発につなげるための研究を推進し、ウイルス増殖に関与する宿主細胞の機構の解明、感染抑制物質の発見、感染性ウイルスを用いた抑制効果の確認という成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-