正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステム構築と最適化された診療指針の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500623A
報告書区分
総括
研究課題名
正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステム構築と最適化された診療指針の確立に関する研究
課題番号
H17-感覚器-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
谷原 秀信(熊本大学大学院 医学薬学研究部視機能病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 哲也(岐阜大学大学院 医学研究科)
  • 杉山 和久(金沢大学大学院 医学部)
  • 吉冨 健志(秋田大学大学院 医学研究科)
  • 富田 剛司(東京大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究計画の目的の第一は、正常眼圧緑内障に対する早期発見のスクリーニングシステムを構築して、診療現場での有用性を証明することにある。第二に、新しい薬物治療も含めて正常眼圧緑内障患者のリスク・ベネフィット比の良好な診療指針を確立する。第三に、眼科診療全般に本研究の成果を普及させることである。
研究方法
第一に、小松市において、無散瞳立体カメラとHRT IIを用いて、正常眼圧緑内障を簡便・高効率に早期発見を行った。第二に、初期緑内障視神経障害を有する正常眼圧緑内障に対する臨床面でのリスクアセスメントと危険因子群の同定を行い、有効な眼圧下降治療薬・神経保護治療薬の開発を手がけた。第三に正常眼圧緑内障診断に関する標準化を目指して、特にキーポイントとなる緑内障性視神経症の診断基準を作成した。
結果と考察
第一に、本研究計画における全国多施設調査の基盤となるパイロットスタディ(小松スタディ)を実施した。小松市において一般市民を対象とした緑内障検診を完遂して、一般市民における原発開放隅角緑内障有病率は5.1%であり、特に正常眼圧緑内障の有病率は4.4%であった。第二に、新しい薬物療法の開発としては、ROCK阻害薬の前臨床研究が一応の完遂をみた。これをうけて、厚生労働省の承認の下、臨床試験が開始され、第一相試験では、濃度依存性をもった眼圧下降効果が証明されつつある。眼圧非依存的因子としてグルタミン酸網膜障害が注目されているが、レドックス応答やプラスミノーゲン活性化因子などの関与が証明された。第三に、緑内障診療ガイドラインの改訂作業を進めており、その中には、正常眼圧緑内障診断の基本となる視神経乳頭判定ガイドラインを作成し含めた。
結論
日本人疫学調査によって明らかにされた正常眼圧緑内障の問題は、世界での緑内障性視神経症の概念が大きく変化する契機となった。また新しい神経保護治療薬や眼圧下降治療薬の開発も順調であり、このように単なる臨床・基礎研究の狭い枠組みに止まらず、本研究計画で得られた成果は、眼科診療全般の標準化へと還元されつつある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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