転移性脳腫瘍に対する標準的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500489A
報告書区分
総括
研究課題名
転移性脳腫瘍に対する標準的治療法確立に関する研究
課題番号
H15-がん臨床-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 白土 博樹(北海道大学病院 放射線部)
  • 吉田 純(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 橋本 信夫(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳神経外科)
  • 小川 彰(岩手医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 佐伯 直勝(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 大西 丘倫(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 冨永 悌二(東北大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学病院 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線科)
  • 城倉 英史(鈴木二郎記念ガンマハウス 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の剖検による脳転移の発見率は2割?3割にのぼり、原発性脳腫瘍を凌駕するとも言われている。現在、転移性脳腫瘍の治療に関して、国際的には、多発病変に対して全脳照射単独治療が選択される以外は、摘出術+全脳照射が標準治療とされてきた。しかし脳以外の臓器転移の治療成績の改善に伴い、全脳照射による遅発性高次神経機能障害すなわち、認知症(痴ほう)の発生が、がん患者のQOLを著しく低下させる原因として問題視されている。従って、術後の全脳照射に代わりうる治療法の開拓は、多発性転移がん患者の治療における緊急の課題である。近年、転移性脳腫瘍に対する定位放射線照射の有用性が報告されている。定位的放射線照射は、病巣に選択的に放射線照射を行うため、全脳照射と異なり新病巣の発生予防効果はないが、病変周囲の正常脳への影響を抑えることが可能である。我々は、この定位的放射線照射を必要に応じ摘出術後に繰り返し使うことで、術後の全脳照射と比較しても、生命予後を悪化させること無く、がん患者のQOLを保つことが可能ではないかとの仮説にたち、本治療法の有効性を明らかとすることを目的とした。
研究方法
主任および分担研究者の所属する施設で治療を行う転移性脳腫瘍患者を対象としたランダム化比較臨床試験を行う。具体的には、臨床の場で経験することの多い少数の転移巣を持つ症例で、定位放射線照射の適応外とされる3cm以上の病巣を有する症例に対して、摘出術を行い、残存病変に対しては高次神経機能障害が危惧される全脳照射を避け、定位放射線照射で治療する方法の是非を検討する。国際標準の質の高い臨床試験とするため、日本で最大のがん臨床研究グループであるJCOGの脳腫瘍研究グループの臨床試験として研究を行う。
結果と考察
今年度は、JCOG臨床試験“JCOG0504”として、研究のプロトコールを完成し、登録を開始した。研究プロトコールの詳細は、JCOGホームページ(http://www.jcog.jp/)で閲覧可能である。
結論
本治療法の有効性が示されれば、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-01-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200500489B
報告書区分
総合
研究課題名
転移性脳腫瘍に対する標準的治療法確立に関する研究
課題番号
H15-がん臨床-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 純(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 橋本 信夫(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳神経外科)
  • 小川 彰(岩手医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 佐伯 直勝(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 大西 丘倫(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 冨永 悌二(東北大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 白土 博樹(北海道大学病院 放射線部)
  • 西川 亮(埼玉医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学病院 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線科)
  • 城倉 英史(鈴木二郎記念ガンマハウス 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の剖検による脳転移の発見率は2割?3割にのぼり、原発性脳腫瘍を凌駕するとも言われている。転移性脳腫瘍の治療に関して、国際的には、多発病変に対しては全脳照射、少数転移症例には摘出術+全脳照射が標準治療とされてきた。しかし、我が国では、定位放射線照射が頻用されているという特徴があり、摘出術+全脳照射が標準的治療という認識に乏しい。本研究は、我が国における転移性脳腫瘍治療の実態を調査するとともに、我が国の実態に則した新たな標準的治療をランダム化比較臨床試験によって確立することを目的としている。
研究方法
(1)転移性脳腫瘍治療法選択に関する実態調査:主任・分担研究者の所属施設および関連施設における転移性脳腫瘍治療に関する実態調査を行った。
(2)新たな標準的治療法確立のためのランダム化比較臨床試験:上述の実態調査結果を解析し、選択される治療法とその選択理由、治療効果を解析し、我が国の転移性脳腫瘍治療の実態則した標準的治療法確立のためのランダム化比較試験プロトコールを作成する。国際標準の質の高い臨床試験とするため、日本で最大のがん臨床研究グループであるJCOGの脳腫瘍研究グループの臨床試験として行うこととした。
結果と考察
我が国では、3cm以下の小さなもので、転移数が少ない場合は定位放射線照射、多発例に対しては全脳照射、3cmを越え緊急に減圧の必要な腫瘍に対しては摘出術が選択される。この場合、術後の全脳照射が欧米では推奨されているが、我が国では全脳照射による神経障害(特に認知症/痴呆)の発生を危惧し、全脳照射を行わない施設が多数存在する。以上の結果を踏まえ、摘出術後の全脳照射を行わず、定位放射線照射を利用することで、生命予後を保ちつつ、放射線障害を抑制しQOLの改善、維持が可能であるかを検討する臨床試験を計画、JCOG0504「転移性脳腫瘍に対する、腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapyとのランダム化比較試験」として、平成17年11月4日に承認され、登録を開始することができた。
結論
今後症例が集積され、本治療法の有効性が示されれば、新たな標準的治療として、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-01-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500489C

成果

専門的・学術的観点からの成果
転移性脳腫瘍の治療において、欧米では標準とされているが、我が国では全脳照射による認知症の発生を危惧し、全脳照射を行わない施設が多数存在する。本研究は、術後の全脳照射に替わり定位放射線照射を利用することで、生命予後を保ちつつ、放射線障害を抑制しQOLの改善、維持が可能であるかを検討するものである。これまで、このようなランダム化比較臨床試験は行われておらず、独創的な研究である。
臨床的観点からの成果
近年、脳以外の臓器転移のコントロール率の改善に伴い、これまでは軽視されていた全脳照射による認知症の発生が、がん患者のQOLを著しく低下させる原因として問題視されている。この高次神経機能障害は、高齢者ほど発症しやすく、がん患者の高齢化に伴い今後益々問題となることが予想される。従って、新たな標準的治療法の開拓は、多発性転移がん患者治療における緊急の課題であり、本研究の意義は大きい。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は、転移性脳腫瘍に対する新たな標準治療の開発に係るものであり、将来の転移性脳腫瘍に関する治療ガイドラインの開発に資するものである。なお本研究JCOG0504「転移性脳腫瘍に対する、腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapyとのランダム化比較試験」のプロトコールは、JCOGホームページ(http://www.jcog.jp/)に公開されている。
その他行政的観点からの成果
本研究で完成したプロトコールによる臨床試験で、今回提案した治療法の有効性が示されれば、新たな標準的治療として、全脳照射にかかわる入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待される。
その他のインパクト
本研究に関連して、平成16年度、平成17年度に財団法人長寿科学振興財団との共催で「がん医療均てん研修会」を開催し、山形県におけるがんの最新治療の均てん化活動を積極的に行っている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
嘉山孝正:転移性脳腫瘍の治療戦略。吉田純、斎藤清編、脳神経外科の治療戦略と成績ー前方視的調査2003-2004、医学書院、東京、2005.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
財団法人長寿科学振興財団との「がん医療均てん研修会」の共同開催。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤慎哉、嘉山孝正
転移性脳腫瘍に対する臨床試験
脳神経外科速報 , 15 , 937-942  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-