新しい薬物療法の導入とその最適化に関する研究

文献情報

文献番号
200500484A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい薬物療法の導入とその最適化に関する研究
課題番号
H16-3次がん-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西條 長宏(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 西尾 和人(国立がんセンター研究所)
  • 戸井 雅和(東京都立駒込病院)
  • 掛谷 秀昭(独立行政法人理化学研究所)
  • 田村 友秀(国立がんセンター中央病院)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 桑野 信彦(久留米大学・先端癌治療研究センター)
  • 杉本 芳一(共立薬科大学)
  • 前原 喜彦(九州大学大学院)
  • 南 博信(国立がんセンター東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
72,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん細胞により特異性の高い分子を同定し、更に特異性及び治療効果の高い治療法の開発を目指す。また、臨床導入に必要な非臨床研究を行う。既に臨床研究段階にある化合物について適切な臨床試験により効果を評価する。Molecular correlative studyと呼ばれる抗悪性腫瘍薬の抗腫瘍活性の原理の証明(Proof of principle)研究を遂行することにより、効果をモニターしうる生物学的サロゲートマーカーの検討を行う。
研究方法
抗悪性腫瘍薬のin vivo抗腫瘍活性の原理の証明(proof of principle: POP)のための方法を導入するとともにその方法を検証(validation)する。薬剤投与前後における遺伝子発現変動解析、候補標的の発現変動、リン酸化状態などをモニターすることにより、薬力学的、生物学的効果との相関を分析するとともに、有害事象回避のためのマーカーの検索を行う。臨床でえられた癌組織の分子生物学的解析をおこなうことにより、有効な癌種を選定する。
結果と考察
1)手術後再発時ゲフィチニブ投与を受けた66例を対象とし、ゲフィチニブ感受性を左右する薬理遺伝学的マーカーの検索を行った。EGFR変異が最も強い効果予測因子でEGFR変異を有する患者の奏効率は82%(無い場合11%)であった。EGFR変異症例ではコピー数増加を多くの症例で認め、コピー数高度増加はEGFR変異症例のみにみられmutant allelesの割合が高いパターンに集中していた。この検討は海外の矛盾する結果に対する結論を示した。
2)Gefitinib投与症例の末梢血単核球の網羅的遺伝子発現解析により新しいバイオマーカーを同定した。同遺伝子の発現の有無によりPRとSD、NC例の判別が可能であった。この遺伝子はEGFR遺伝子変異とは独立した因子であった。
3)p53遺伝子変異株ではアドリアマイシン暴露によるp53の導入に伴うsurvivinの発現低下を認めなかったがSiRNAによりsurvivinの発現を抑制することにより、アドリアマイシン感受性が亢進した。
結論
分子標的治療を最適化するバイオマーカーの同定によってハイリスクな患者であっても治療によりメリットを受けるポピュレーションを同定できると思われる。又、効果の期待される症例の選択により治療成績の向上が期待される。分子標的治療薬の臨床試験の過程で行われるPOP studyにより発見された新しい標的に対し、より優れた毒性の少ない薬剤開発が可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-