がん特異的細胞傷害性T細胞活性化に基づく免疫治療の構築

文献情報

文献番号
200500473A
報告書区分
総括
研究課題名
がん特異的細胞傷害性T細胞活性化に基づく免疫治療の構築
課題番号
H16-3次がん-030
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
葛島 清隆(愛知県がんセンター研究所・腫瘍免疫学部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚 美樹(愛知県がんセンター研究所・腫瘍免疫学部)
  • 森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院・副院長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
21,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん細胞を選択的に傷害する細胞傷害性T細胞(CTL)を利用した免疫療法の確立を目的としている。CTLを効率よく活性化するには、CTLが認識するペプチド断片(エピトープペプチド)のアミノ酸配列を正確に同定すること及び提示機構の詳細な解析が必要である。本年度は、Epstein-Barr virus(EBV)及びHuman papillomavirus (HPV)陽性がんに対する免疫療法構築のために以下の研究を実施した;1)HLA-A24拘束性EBV-LMP2A由来のエピトープ提示機構の解析、2)HLA-A24拘束性HPV-E6由来新規エピトープの同定とその提示機構の解析。
研究方法
1)HLA-A*2402、LMP2Aを発現する293T細胞に、免疫型プロテアソームを構成する各サブユニットの遺伝子を様々な組み合わせで導入した。EBV陽性のBリンパ芽球に、上記各サブユニットの発現を抑制するshort hairpin RNAを導入した。エピトープの生成は本研究者らが同定したHLA-A24拘束性LMP2A特異的CTLクローンを用いたELISPOT法にて検討した。 
2) HLA-A24結合候補ペプチドで、患者末梢血T細胞を刺激しCTLを誘導した。CTLの傷害性はクロミウム遊離試験で検討した。
結果と考察
1)免疫型プロテアソームのβサブユニットであるimmuno-proteasome low molecular protein(ip-LMP)7と活性化補助分子PA28αの共発現がエピトープ生成に必須であり、ip-LMP2分子の発現がエピトープ生成を促進した。RNA干渉実験でも確認した。
2)HPV-16型E6の新規CTLエピトープ(E6:49-57)を同定した。未処理の子宮頚がん細胞株はCTLに傷害されなかったが、プロテアソーム阻害剤であるbortezomibとインターフェロンガンマ(IFN-γ)で処理したところ、強く傷害された。
結論
1)EBV-LMP2Aエピトープ生成に関わる分子を同定しその役割を証明した。LMP2Aを標的とする免疫療法の分子基盤を明らかにすることができた。
2)日本人に多いHLA-A24が提示するHPV-16型E6の新規CTLエピトープを同定した。抗がん剤のbortezomib及びIFN-γ処理により大部分の子宮頸がん細胞株がCTL感受性となった。今後同薬剤効果の機序の解明および併用免疫療法の開発を検討する。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
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