性差を加味した女性健康支援のための科学的根拠の構築と女性外来の確立

文献情報

文献番号
200500418A
報告書区分
総括
研究課題名
性差を加味した女性健康支援のための科学的根拠の構築と女性外来の確立
課題番号
H17-子ども-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
天野 恵子(千葉県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 上野光一(千葉大学・大学院薬学研究院)
  • 太田壽城(国立長寿医療センター)
  • 名取道也(国立成育医療センター)
  • 吉政康直(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
より良い女性医療の確立のため、エビデンスの構築と、医学教育・研究への性差の視点の導入ならびに人材育成、市民への啓発を目的とした研究・活動を行った。
研究方法
1.女性外来患者における全血セロトニンの測定と疾患別の解析、2.循環器内科専門医におけるストレスと健康に関するアンケート調査、3.女性外来患者の会の立ち上げ、4.千葉県立東金病院女性外来における処方実態調査、5.更年期処方とエストロゲンβ受容体CAリピート多型との相関解析、6.高齢者の自立度低下要因調査、7.不妊を主訴とする男女における心理特性調査、8.循環器病危険因子における性差解析、9.女性外来データファイリングシステムの開発と運用
結果と考察
結果:1.全血セロトニン値は、大うつ病性障害、気分変調性障害、線維筋痛症で極めて低値。子どもへの虐待など、セロトニン減少が原因と考えられる1群の症例がある。2.循環器内科専門医は、男女ともSF-36による活力、社会生活機能、心の健康スコアが国民標準値以下。ことに勤務医男性で低い。3.2006年10月、女性外来患者の会設置、活動開始。4.東金病院女性外来における処方は、漢方薬が一位。2位は中枢神経系薬。漢方も含め、精神科的主訴に処方される薬剤が多い。5.漢方はCAリピートgenotypeのすべてで均等に処方されていたが、中枢神経系薬やHRTの併用は、LL型ではSS型の1/4。6.自立度低下要因1位は男女とも脳卒中。男性に比し女性高齢者では筋・関節系が多い。7.不妊女性は不妊男性に比し、抑うつスコアが高く、日常役割機能において身体・精神両面で国民標準値以下である。8.男性メタボリックシンドローム合併糖尿病患者ではHOMA-IR、高感度CRPの有意な上昇があったが、女性では認められない。9.データファイリングと、自己問診票で構成されるWebシステムを開発し、運用を開始した。
考察:女性外来受診者の病態の基礎にセロトニン産生の低下が推定された。検査は女性外来では必須と考える。データファイリングについては、医療機関でのIT環境の不備がスムースな運用開始を妨げている。今後、各施設ごとに問題に対応し参加施設を増やしていくことが必須である。更年期障害処方の有効性とCAリピートとの相関、高齢者の自立度低下要因、循環器病患者におけるHOMA-IRならびに高感度CRP、不妊男女における心理特性の性差は、今後、患者への対応において考慮されねばならない。
結論
更なる性差に関するエビデンスの構築が進められるべきである。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
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