てんかん児童の社会自立をめざした包括的地域支援のための早期療育援助法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500406A
報告書区分
総括
研究課題名
てんかん児童の社会自立をめざした包括的地域支援のための早期療育援助法の確立に関する研究
課題番号
H16-子ども-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
重松 秀夫(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター )
  • 杉山 修(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
てんかん患者の社会的自立を阻害している要因を、発達臨床心理学的側面、社会福祉学的側面から分析を加え、てんかん患者の抱えている保育・教育上あるいは社会福祉的支援上の問題点を明らかにして、社会的自立に向けたてんかん患者の早期療育指導法を確立すること。

研究方法
乳幼児期(2歳-6歳)にてんかん入院治療を行うと同時に、発達臨床心理学的な手法を用いたてんかん乳幼児用設定療育指導を3ヶ月以上実施し、その後10年以上を経過した32症例を対象とし、てんかん治療経過、保育・教育状況、生活環境、療育・福祉的支援の有無、15歳を超えた時点での社会的自立に向けた教育処遇についてアンケ-ト調査を行い、早期設定療育指導の有効性を検討した。

結果と考察
対象患者の年齢は、平均年齢17歳3ヵ月(15歳-18歳)、発病年齢は平均2歳1ヵ月(4ヵ月-5歳)。てんかん類型では、5割が症候性全般てんかん、約4割が症候性部分てんかん。発作抑制率は約30%で、症候性全般てんかんでは約30%、症候性部分てんかんでは約50%であった。教育状況では、就学前の通園施設利用は約3割、小学生の約7割、中学生の約8割が特殊学級あるいは養護学校に在学し、高等学校では養護学校が約7割を占めていた。乳幼児期に実施した設定療育指導で効果があった例と効果がなかった例に関して、てんかん類型、発作抑制状況、指導開始時年齢、指導実施回数、指導形態で有意差は認められなかった。これらの結果は、てんかん患者の最近接領域での発達課題の選定と患者に適切な指導方法の実施など個々のてんかん者への指導内容が適切でなかった可能性が考えられた。指導効果があった症例では指導効果がなかった症例に比べて、乳幼児期から学童期、青年期前期に渡っててんかんやてんかん以外の病気に対する悩みや不安が少なく、指導・教育機関から行動問題の指摘を受けることが少なかった。また、指導効果があった例では、てんかんの病状や家庭および学校での生活状況に対する不満が少なく、高い満足度が示された。てんかん乳幼児用設定療育指導を受けて指導場面での成長を感じ取ることができれば、その後の指導機関との関係において前向きな期待を持ち、患者の発達レベルに合わせた養育態度で接しながら、治療関係や家庭または学校での生活状況での改善が期待できた。
結論
てんかん乳幼児用設定療育指導を行うことによって、発作予後の悪い難治てんかんにおいても社会予後で改善効果を示した。

公開日・更新日

公開日
2006-10-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200500406B
報告書区分
総合
研究課題名
てんかん児童の社会自立をめざした包括的地域支援のための早期療育援助法の確立に関する研究
課題番号
H16-子ども-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
重松 秀夫(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター )
  • 杉山 修(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
てんかん患者の社会的自立を阻害している要因を、発達臨床心理学的側面、社会福祉学的側面から分析を加え、てんかん患者の抱えている保育・教育上あるいは社会福祉的支援上の問題点を明らかにして、社会的自立に向けたてんかん患者の早期療育指導法を確立すること。
研究方法
乳幼児期にてんかん入院治療を行うと同時に、療育指導を実施し17年以上経過した110症例および発達臨床心理学的な手法を用いたてんかん乳幼児用設定療育指導を3ヶ月以上実施し、その後10年以上を経過した32症例を対象とし、てんかん治療経過、保育・教育状況、生活環境、療育・福祉的支援の有無、15歳を超えた時点での社会的自立に向けた教育処遇についてのアンケ-ト調査をもとに、社会自立の阻害要因および早期設定療育指導の有効性について検討した。
結果と考察
教育状況では、就学前の通園施設利用は約3割、小学生で約6割、中学生で約7割が特殊学級あるいは養護学校、義務教育後も約7割が養護学校を利用していた。発作抑制例の56%、症候性全般てんかんでは30%、症候性部分てんかんでは67%が社会自立できていた。乳幼児期にDQ/IQが70以上の群の社会自立状況は良かったが、発作抑制例では知的水準が低い群でも、療育指導をしていた方が社会自立できる傾向があった。就学前から学齢期までで、注意転導性などの問題行動が約5-6割に認められ、18歳を超えても約半数の家族が発作や薬の副作用などてんかんに関連した悩みを持ち、誰にも相談できずに家族が抱え込んでいる例が多かった。
乳幼児期の設定療育指導の有効例と無効例では、てんかん類型、発作抑制状況、指導開始時年齢、指導実施回数、指導形態のいずれでも有意差はなかった。指導有効例では指導無効例に比べて、乳幼児期から学童期、青年期前期に渡っててんかんやてんかん以外の病気に対する悩みや不安が少なく、指導・教育機関から行動問題の指摘を受けることが少なかった。また指導有効例では、てんかんの病状や家庭および学校での生活状況に対する高い満足度が示された。てんかん乳幼児用設定療育指導を受けることによって家族が指導場面での成長を感じ取ることができれば、その後の指導機関との関係において前向きな期待を持ち、患者の発達レベルに合わせた養育態度で接することが可能となり、治療関係や家庭または学校での生活状況での改善が期待できた。
結論
ムーブメント教育法・役割遊びを利用した行動療法的集団指導・家族指導を取り入れたてんかん乳幼児用設定療育指導を行うことによって、発作予後の悪い難治てんかんにおいても社会予後の向上・改善が図れると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500406C

成果

専門的・学術的観点からの成果
てんかん児童の社会的自立にはてんかん発作の抑制と乳幼児期からの知的能力の維持が重要であるが、教育・生活環境において、てんかんに関する知識や対処法の理解不足や家族が抱える病気・学校または家庭生活での悩みに対する専門的立場での相談者が不足していた。知的に遅れがある難治なてんかん患者でも、てんかん治療と平行した早期療育指導を継続的に実施すれば、本人および家族の悩みが軽減でき、母親を中心とした家族の病気・発達面・養育態度に対する理解が促進され、たとえ教育処遇が不適切な場合にも丁寧な家庭養育が可能となる。
臨床的観点からの成果
てんかん児童の抱える発達問題は、他の発達障害児とは異なり、てんかん発作や抗てんかん薬の副作用に関連する療育・教育上の様々な問題を有しているが、乳幼児期からのてんかん患者への療育援助に関する、縦断的、実証的な研究はほとんど認められず、てんかんの診断・薬物治療以外の側面への対応研究は遅れていた。てんかん治療と併行した継続的な個別および集団設定療育指導を行えば、母親を中心とした家族の療育態度が適切かつ前向きとなることによって、治療関係・家庭または学校での生活状況が改善し、長期社会予後の向上が図れる。
ガイドライン等の開発
てんかん乳幼児用設定療育指導としては、てんかん患者の発達段階や行動状況・治療状況を考慮して、個別指導と集団指導(運動を中心とした感覚統合的指導法としてムーブメント教育法とムーブメント教育法-Ⅱ(重度重複障害児用)を実施。知的に4歳以上の幼児では、社会性や言語能力の向上をめざして役割遊びを利用した行動療法的集団指導を実施)を選択・併用しながら、家族指導を実施することが有用であるが、これらの実施手順については個々の症例の特性に依存する点が多く、まだ標準化には至っていない。
その他行政的観点からの成果
てんかん患者の社会的自立を促進させるためには、てんかんの専門機関である当院だけでなく、全国各地にてんかん専門医とてんかん患者の発達指導ができる専門職がいる専門施設の設立が必要である。このため全国のてんかん治療に関わる医療者、教育関係者・各種施設関係者を対象に院内および各地で講演会および講習会を行い、てんかん療育の意義について情報発信を広く行い、各地の行政機関に対しててんかんへの啓蒙・啓発活動を積極的に行っている。
その他のインパクト
ホームページを通して、最先端のてんかん治療と同時に早期から母子に対する設定療育指導による発達指導が可能であることを発信しており、全国よりてんかんと発達の問題に関する受診が増加し、短期入院も利用しながら、地元でてんかん診療と適切な療育環境を構築できるように調整を行っている。当院のてんかん療育のあり方は現在のてんかん包括医療のトップモデルであり、第6回アジア・オセアニアてんかん国際会議(Kuala Lumpur)においても、日本におけるてんかん早期療育のあり方についてのシンポジウムが組まれている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
Psychiatry and Clinical Neuroscience、Epilepsia
その他論文(和文)
6件
日本特殊教育学会論文集2004、日本特殊教育学会論文集2005、てんかん研究
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
第42回日本特殊教育学会(東京)、第38回日本てんかん学会(静岡)、43回日本特殊教育学会(金沢)、第39回日本てんかん学会(旭川)、第46回日本児童青年精神医学会(神戸)
学会発表(国際学会等)
1件
International Epilepsy Congress, 2005, in Paris.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
15件
静岡県立養護学校研修会、駿東地区就業促進協議会、県難病連医療相談会、訪問教育部研修ガイダンス、静岡神経医療センター公開セミナ-、日本てんかん協会、静岡てんかんセミナー、伊豆市教育委員会特別支援教育講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-