再生医療的手法による、脳血管性痴呆症および虚血性脳血管障害に対する早期診断および予防法の確立に関する研究(臨床研究実施チームの整備)

文献情報

文献番号
200500383A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療的手法による、脳血管性痴呆症および虚血性脳血管障害に対する早期診断および予防法の確立に関する研究(臨床研究実施チームの整備)
課題番号
H16-チム(痴・骨)-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松山 知弘(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
16,130,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は超高齢化社会を迎えようとしており、高齢者が健康で自立した生活を送るためには、認知症は克服すべき緊急の課題である。これらの疾患を克服するため、様々な研究が積み重ねられてきたが、有効な治療法を提供できない状況であり、要介護者は依然として急速に増加している。本研究では、従来の治療法とは全く異なった手法を用いて、認知症や脳血管障害患者における早期診断法や予防法を確立することを目的としている。
研究方法
本研究ではヒトにおける臨床応用を目的とした研究チームを構築し、1) 認知症、脳梗塞患者における血管再生と神経機能の関連を明らかにするとともに、2) 神経再生に関する基礎研究
を兵庫医科大学と国立循環器病センターを拠点とした共同研究体制にて推進し、これらの再生医療技術を用いた、ヒトにおける新しい治療法の開発を目的とした総合的研究を行った。
結果と考察
脳梗塞患者における末梢血中血管血球系幹細胞と患者予後との関連の解明を目的とした前向き経時的コホート研究では、血管血球系幹細胞の減少が、MMSEにより評価された認知機能の低下や、CDRによる痴呆評価と相関することを見出した。また、認知症患者群における末梢血中血管系幹細胞の解析では、CD34陽性細胞数は脳血管性認知症群で著明な低下を認めるものの、アルツハイマー型認知症患者群においては明らかな低下は認めなかった。一方、健常人や脳血管障害患者群においては末梢血中血管内皮前駆細胞によるコロニー形成能はCD34陽性細胞数とよく相関したが、アルツハイマー型認知症患者群においては相関がみられなかった。さらに、その血管コロニーは脆弱であり、血管血球系幹細胞の機能的変化が認知症病態の基盤に存在することが示唆された。これらの結果は、末梢血中の血管血球系幹細胞が脳血管のメンテナンスに関与しているだけでなく、神経組織の代謝や機能にまで影響を与え高次神経機能の低下や認知症の発症とも関連していることを示すとともに、アルツハイマー型認知症患者における脳機能低下の背景に血管血球系幹細胞の機能低下による血管性因子の関与が存在する可能性が示唆された。
結論
我々は、血管再生と神経再生との関連についての関連について明らかにしてきたが、これらの知見に再生学的手法を取り入れることにより、認知症患者や脳梗塞患者に対する新しい治療法として発展させることができると考えている。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200500383B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療的手法による、脳血管性痴呆症および虚血性脳血管障害に対する早期診断および予防法の確立に関する研究(臨床研究実施チームの整備)
課題番号
H16-チム(痴・骨)-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松山 知弘(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は超高齢化社会を迎えようとしており、高齢者が健康で自立した生活を送るためには、認知症は克服すべき緊急の課題である。これらの疾患を克服するため、様々な研究が積み重ねられてきたが、有効な治療法を提供できない状況であり、要介護者は依然として急速に増加している。本研究では、従来の治療法とは全く異なった手法を用いて、認知症疾患や脳血管障害患者における早期診断法や予防法を確立することを目的としている。
研究方法
本研究ではヒトにおける臨床応用を目的とした研究チームを構築し、1) 認知症、脳梗塞患者における血管再生と神経機能の関連を明らかにするとともに、2) 神経再生に関する基礎研究
を兵庫医科大学と国立循環器病センターを拠点とした共同研究体制にて推進し、これらの再生医療技術を用いた、ヒトにおける新しい治療法の開発を目的とした総合的研究を行った。
結果と考察
我々は、神経再生に関する基礎研究において血管系幹細胞移植が血管再生を介して脳循環を改善するのみならず、神経再生を促進して神経機能をも改善させることを明らかにした。また、認知症、脳梗塞患者における血管再生能の評価においては、末梢血中の血管血球系幹細胞の減少が脳梗塞発症と強く関連しているだけでなく、脳血管性認知症発症とも関連していることを明らかにした。さらに、血管血球系幹細胞の機能低下による再生血管内皮細胞の機能の低下など、アルツハイマー型認知症患者における脳機能低下の背景に血管性因子の関与が存在する可能性を示唆した。これらの結果は、末梢血中の血管血球系幹細胞が脳血管のメンテナンスに関与しているだけでなく、神経組織の代謝や機能にまで影響を与え高次神経機能の低下や認知症の発症とも関連していることを示唆している。
結論
本研究で得られた結果は、血管血球系幹細胞が血管再生と神経再生との関連を介して、認知症の病態と深く関わっていることを示すものであり、脳梗塞患者や認知症患者に対する血管血球系幹細胞移植による治療法の可能性を示すものである。今後は血管血球系幹細胞に関する医療技術と総合することにより、脳梗塞患者や認知症患者に対する新しい治療法が確立されると考えている。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500383C

成果

専門的・学術的観点からの成果
末梢血中に存在する血管血球系幹細胞が血管再生を介して微小循環のメンテナンスに関与するのみならず、微小循環障害の改善を介して神経機能を改善する可能性を示した。また、脳梗塞患者や認知症患者においては、その予後の予測因子になり得る事を明らかにするともに、アルツハイマー型認知症患者における脳機能低下の背景に血管性因子の関与が存在する可能性を示した。
臨床的観点からの成果
脳梗塞患者においてはCD34陽性細胞数の減少が、脳梗塞巣の増加、および慢性虚血部位の脳血流量の低下に関連していることを明らかにした。さらに、MMSEにより評価された認知機能の低下や、CDRによる痴呆評価との相関を見出した。また、アルツハイマー型認知症患者における末梢血中血管血球系幹細胞機能の低下が示唆され、痴呆症の診断における血管内皮細胞機能測定の意義を提唱した。
ガイドライン等の開発
本研究期間中にはガイドライン等の作成などには至らなかったが、今後本研究成果を発展させることにより、ハイリスク患者の予後の予測因子や治療法の選択に関する、重要な臨床的情報として活用していくことが可能であると考えている。
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた結果は、血管血球系幹細胞が血管再生と神経再生との関連を介して、認知症の病態と深く関わっていることを示すものであり、脳梗塞患者や認知症患者に対する血管血球系幹細胞移植による治療法の可能性を示すものであり、長期的視点においては極めて重要な発見、進歩であったと考えている。
その他のインパクト
平成17年11月には本研究成果に関する公開シンポジウムを開催し、多数の一般市民および学生に対して、厚生労働行政における認知症に対する取り組みの紹介と再生医療的知見に関する啓蒙活動を行った。また、本研究成果は2度にわたり新聞で報道されたが、特に本研究に密接に関連している基礎研究に関しては読売新聞の一面トップ記事として取り扱われ、社会的にも非常に大きなインパクトを与えた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
J. Clin. Invest., 114:330-338, 2004. Circulation, 109:2972-2975, 2004.
その他論文(和文)
1件
日経メディカル9月号:170-175, 2005
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
第27回日本神経科学大会, 第47回日本神経化学大会, 合同大会. 第30回日本脳卒中学会総会. 第30回日本脳卒中学会総会. 第46回日本神経学会総会.
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
「脳梗塞疾患モデルマウス」、特願2004-108500(特開2005-287430 神経幹細胞の調整法」、特願2005-35032 (国際出願PCT/JP2006/302350)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
松山知弘、田口明彦ら「どうすれば脳・血管は若返るか」,平成17年度研究成果等普及啓発事業発表会(長寿科学総合研究),平成17年11月19日,兵庫医科大学平成記念会館,西宮

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Taguchi A, Matsuyama T, et al.
Administration of CD34+ cells post-stroke enhances angiogenesis and neurogenesis in a murine model.
J. Clin. Invest. , 114 , 330-338  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-