高齢者の口腔乾燥改善と食機能支援に関する研究

文献情報

文献番号
200500348A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の口腔乾燥改善と食機能支援に関する研究
課題番号
H17-長寿-042
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 保明(九州歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 達次(九州歯科大学歯学部)
  • 小関 健由(東北大学歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者における口腔乾燥状態は、咀嚼や嚥下機能にも影響を与えていることから、口腔機能と大きく関連する高齢者や要介護高齢者における口腔乾燥状態と食機能を、より客観的に評価する方法を確立して、口腔環境と口腔機能を改善してQOLを向上させることを目的として研究を進めた。
研究方法
(1)唾液と食機能支援および口腔領域のパワーリハビリに関する研究では、口腔乾燥状態と栄養状態の指標であるBody Mass Index(BMI)との関連性、口腔乾燥と嚥下困難の自覚症状との関連性を検討するために、65歳以上の高齢者412名を対象に、口腔乾燥感などの問診のほか、全身状態や咀嚼困難感、嚥下困難感等について調査した。介入研究として、要介護高齢者39名を対象に、週3回1ヵ月間の音波歯ブラシによる口腔乾燥状態改善の臨床的効果について検討した。さらに、心理的因子や歯周病との関連性について、調査を行った。(2)口腔乾燥と自浄作用に関する研究では、ヒアルロン酸ナトリウムが口腔環境を改善する薬剤として利用可能か否かについて実験的に検証した。(3)口腔乾燥症の予防医学的研究では、改良ワッテ法を用いて、高齢者900名の安静時唾液量の測定を行った。
結果と考察
高齢者では、口腔乾燥の程度が進むと有意にBMIが低下すること、咀嚼障害や嚥下機能障害を自覚するものが有意に高いことが認められた。
音波歯ブラシの週3回の実施は、実施前に唾液湿潤度の低い高齢者群は唾液湿潤度が高くなり、乾燥が改善され、一方、湿潤度高値群では、平均値7.1±5.2mmが、4週後には5.1±4.7mm、6週後には3.5±3.3mmと有意(p<0.02)に低下した。口腔乾燥した群では、抑うつ状態の評価に用いられるCES-Dの得点が有意に高かった。刺激唾液量と歯周病の関連では、曳糸性が大きく、かつ、刺激唾液流出量が少ない群は最も悪い歯周健康状態であることが示された。改良ワッテ法にて計測した安静時唾液流出量と口渇に関する質問票の回答結果が有意に相関していた。
結論
高齢者における口腔乾燥は、全身の栄養状態指標の一つでもあるBMIとも関連し、また嚥下機能障害とも大きく関連していることが示唆されたことから、誤嚥性肺炎予防の観点からも、栄養改善や口腔機能向上サービスを実施する上で、考慮すべきと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-16
更新日
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