老人性痴呆症・アルツハイマー病の予防および治療を目的とした中枢機能賦活口腔スプリントの開発

文献情報

文献番号
200500331A
報告書区分
総括
研究課題名
老人性痴呆症・アルツハイマー病の予防および治療を目的とした中枢機能賦活口腔スプリントの開発
課題番号
H17-長寿-018
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 弘(金沢医科大学・医学部 顎口腔機能病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬上 夏樹(金沢医科大学・医学部 顎口腔機能病態学)
  • 長尾 壽和(金沢医科大学・医学部 顎口腔機能病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,070,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
顎口腔領域の感覚、運動に関わる領域は脳に広く分布している。そこで、老人性痴呆(認知症)・アルツハイマー病などによる中枢神経機能低下と口腔機能との関連性を調査し、さらに既存の音楽療法を基盤として、顎運動に連動して視覚・聴覚・体性感覚刺激を脳に送る、「顎口腔運動による脳刺激システム」の開発を計画した。
研究方法
金沢医科大学附属病院で加療している、認知症またはアルツハイマー病の診断がなされている高齢者のなかで、長谷川式簡易知能評価スケール、脳のMRIまたはCT画像、脳血流、などの項目の検査が可能であった13人を対象として、当該研究において考案した機能的咬合歯スコアをもとにして、口腔機能低下と認知症・アルツハイマー病の進行度の因果関係を調べた。脳機能については、誘発電位・筋電図計測装置MEB9204を使用して事象関連電位P300を計測した。さらに、顎運動をトリガーとして、視覚・聴覚・体性感覚を刺激することのできる装置を独自に開発することを試みた。
結果と考察
長谷川式簡易知能評価スケールが低いほど、機能的咬合歯スコアが低く、脳の萎縮が顕著になり、脳血流量も低下していたことから、脳機能を維持するためには口腔機能を低下させないことが重要であることが判明した。事象関連電位P300について、さまざまな年齢の健常者から計測したところ、加齢とともにP300のピーク潜時が延長する結果となった。咬合時に発生する咬筋筋電位にトリガー閾値を設け、それにより一定矩形パルスを発生させる装置を作製した。この装置を用いて、聴覚・体性感覚・視覚を同時に刺激し、脳活動を賦活するシステムを作製した。このシステムをさらに音楽療法と組み合わせることを予定している。
結論
脳の知的機能を低下させないためには口腔機能を低下させないことが重要であることが示された。歯牙を喪失した場合でも、義歯の装着等による咬合関係の回復・維持が重要であると考えられる。事象関連電位P300は脳の知的活動を反映していると考えられている。当該研究の計測システムをもちいて、加齢にともなってP300のピーク潜時が遅延するという結果が得られた。P300を、生理学的脳機能評価法としてもちいることが可能であることがわかった。咀嚼時の咬筋の筋電位発生を利用して、電気的トリガーパルスを作り出す装置の開発により、聴覚・視覚・体性感覚を同時刺激することのできる「咀嚼運動による脳刺激システム」の開発が進展した。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-