トランスジェニックマウスを用いたミトコンドリア酸化ストレスの抑制によるアルツハイマー病予防・治療法の開発

文献情報

文献番号
200500327A
報告書区分
総括
研究課題名
トランスジェニックマウスを用いたミトコンドリア酸化ストレスの抑制によるアルツハイマー病予防・治療法の開発
課題番号
H17-長寿-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
太田 成男(日本医科大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 アルツハイマー病の発症と進行には酸化ストレスが大きな役割を果たしていることが明らかとなってきているので、酸化ストレスを軽減することで予防と治療のターゲットとなりうる。本研究の目的は、酸化ストレスが亢進し加齢に伴って認知障害と神経変性が生じる実験動物を作製すること。そのモデル動物を用いて、抗酸化物質などにより、酸化ストレスを軽減させる系を確立すること。
研究方法
 脳でALDH2活性を低下させたトランスジェニック・マウス(DAL101)を作製した。空間認知能力は水迷路実験により判定した。DAL101(+/+)でAPOE(-/-)となるDAL101/APOE-KOマウスを作製した。
 体内での活性酸素の消去効果を明確にするために虚血・再灌流により活性酸素を発生させ、この間、水素と空気と笑気ガスを吸引させた。
結果と考察
不活性型ALDH2遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(DALマウス)を作製し、酸化ストレスマーカーが蓄積することを確認した。加齢にともなって、生後1年後に神経変性と空間認知障害が認められた。さらに、APOEノックアウトマウスと掛け合わせることで、生後半年後に認知障害を生じさせるように症状を加速させることを可能にした。水素の還元力を詳細に解析し、水素分子は有害な活性酸素のみを選択的に消去できること、酸化ストレスの急激な上昇による細胞障害に対して保護することを見いだした。水素ガスの吸引によって、虚血・再灌流によって生じた急激な酸化ストレスから、細胞を保護することを可能にした。
結論
 DAL101マウスは、加齢に伴う神経変性と空間認知・記憶学習障害が認められたことから、酸化ストレスの増大を病因の一つとした神経変性疾患のモデル動物として有用である。長期にわたって水素分子を体内に取り入れることで、アルツハイマー病の予防に寄与する可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-