介護予防のための低栄養状態スクリーニング・システムに関する研究

文献情報

文献番号
200500310A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防のための低栄養状態スクリーニング・システムに関する研究
課題番号
H16-長寿-021
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 みち子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田勝美(聖マリアンナ医科大学予防医学教室)
  • 西村秋生(名古屋大学医学系研究研究科)
  • 岡本連三(神奈川県立保健福祉大学リハビリテ-ション学科)
  • 長澤弘(神奈川県立保健福祉大学リハビリテ-ション学科理学療法学専攻)
  • 太田貞司(神奈川県立保健福祉大学社会福祉学科)
  • 別所遊子(神奈川県立保健福祉大学看護学科)
  • 清水順市(神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科作業療法学専攻)
  • 渡部鐐二(神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎 )
  • 櫻井典子(神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,593,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度の改正により平成18年4月施行の地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付における「栄養改善」サービス等の円滑な推進に寄与するため、低栄養状態スクリーニング・システムの実施可能性や課題について検討することを目的とした。
研究方法
全国7市町村及び13箇所の通所サービス事業所において、厚生労働省老人保健事業推進等補助金「介護予防サービスが必要な高齢者のスクリーニング及び介護予防アセスメント手法の開発に関する研究」 2)栄養改善マニュアル作成」(主任研究者 杉山みち子)において作成された「栄養改善マニュアル」等を活用し、低栄養状態のおそれのある者の把握―介護予防ケアマネジメント-栄養改善サービス等-評価等の一連の低栄養状態スクリーニング・システムをモデル的に3ヶ月間試行した。
結果と考察
市町村及び通所事業所において、低栄養状態のおそれのある者は、「6ヶ月間に2-3kgの体重減少がある」、「BMI18.5未満及び血清アルブミン3.5g/dl以下」を指標に把握することができた。市町村及び通所サービス事業所においての介護予防ケアマネジメント及び栄養改善サービス業務は、マニュアルに基づいて全プロセスについて実施可能であり、3か月後には低栄養状態の改善が見られ、体重が増大及び維持し、主観的健康感の改善や自己実現への意欲が高まることが明らかになった。しかし、地域支援事業特定高齢者施策における低栄養状態のおそれのある者は、基本健康診査からは殆どは把握されず、医療機関や保健師による訪問活動及び地域住民のボランティア活動が主な把握ル-トであったこと、市町村介護保険部門及び通所サービス事業所において、担当者である管理栄養士の配置は行われていなかいことなどから、サービスの円滑な推進には、関連機関の連携や適正な人材配置等の体制づくりがまず必要であった。
結論
地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付における低栄養状態のおそれのある者の把握及び栄養改善サービス等は、全国の市町村及び事業所において、当該研究事例等を参考に4月から推進できるものであり、その成果も期待できることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200500310B
報告書区分
総合
研究課題名
介護予防のための低栄養状態スクリーニング・システムに関する研究
課題番号
H16-長寿-021
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 みち子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田勝美(聖マリアンナ医科大学予防医学教室)
  • 西村秋生(名古屋大学医学系研究研究科)
  • 岡本連三(神奈川県立保健福祉大学リハビリテ-ション学科)
  • 長澤弘(神奈川県立保健福祉大学リハビリテ-ション学科理学療法学専攻)
  • 太田貞司(神奈川県立保健福祉大学社会福祉学科)
  • 別所遊子(神奈川県立保健福祉大学看護学科)
  • 清水順市(神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科作業療法学専攻)
  • 渡部鐐二(神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎)
  • 桜井典子(神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度の改正により平成18年4月施行の地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付において、「栄養改善」サービス等の円滑な推進に寄与するために、低栄養状態の把握手法の検討及びスクリーニング・システムの実施可能性や実施上の課題について検討することを目的にした。
研究方法
2年計画の1年目には、地域高齢者の低栄養状態の把握について、要介護認定非該当の高齢者及び通所サ-ビス利用の軽度の要介護者(要支援、要介護1、及び比較対象として要介護2を含めた)を対象として、血清アルブミン値、BMI及び「低栄養状態の自己チェック表」等によって検討した。最終年度の2年目には低栄養状態のおそれのある者の把握―介護予防ケアマネジメント-栄養改善サ-ビス等-評価等の一連の低栄養状態スクリ-ニング・システムを、全国7市町村及び13箇所の通所サービス事業所においてモデル的に3ヶ月間試行した。
結果と考察
①低栄養状態は、体重、体重減少の意識、及び血清アルブミン値によって客観的にスクリーニングし、さらに、個々人の低栄養状態に関連して解決すべき課題を「低栄養の自己チェック表」を活用して明確にすることが必要であった。さらに、低栄養状態のおそれのある(中リスク)者は、要介護認定非該当者では約1%、要支援・要介護1では約5%と予測された。
②①の方法によって低栄養状態のおそれのある者の把握を行い、その後の介護予防ケアマネジメントから導入される「栄養改善」サービス等は、市町村及び通所サ-ビス事業所において実施可能であり、3か月後には低栄養状態の改善が見られ、体重が増大し、主観的健康感が改善し、自己実現への意欲が高まることが明らかになった。
③地域支援事業特定高齢者施策における低栄養状態のおそれのある者は、基本健康診査からは殆ど把握されず、医療機関や保健師による訪問活動及び地域住民のボランティア活動が主な把握ル-トであった。市町村介護保険部門及び通所サ-ビス事業所において、担当者である管理栄養士の配置は行われていないことから、サービスの円滑な推進には、関連機関の連携や適正な人材配置等の体制づくりがまず必要であった。
結論
域支援及び新予防給付における低栄養状態のおそれのある者の把握及び栄養改善サ-ビス等の一連の低栄養状態の栄養スクリ-ニング・システムは、全国の市町村及び事業所において、当該事例などを参考に4月から推進できるものとなった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500310C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域高齢者の低栄養状態は、タンパク質・エネルギーの摂取によって、体重が増大し、身体機能が向上(握力、最大歩行速度など)し、介護予防に寄与することが、欧米でのメタ分析から明らかにされている。しかし、わが国ではこれまで、地域高齢者の低栄養状態の実態及び栄養改善サービスの評価システムが整備されていないことから、専門的、学術的エビデンスを提示することができなかった。本研究成果は、地域高齢者に対する低栄養状態の把握及び栄養改善に関するエビデンスを改正介護保険制度として提示できるシステムづくりに貢献した。
臨床的観点からの成果
本研究は、地域高齢者の低栄養状態の早期把握手法及び栄養改善の試行成果を提示した。当該成果をもとに制度化された、平成18年4月施行の地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付における栄養改善サービスは、地域高齢者の低栄養状態の早期改善を通じて筋^ンパク質及び体タンパク質を維持・改善し、生活機能の向上、免疫機能の向上を通じて感染症の予防に寄与すると考えられる。さらに、当該事例研究は慢性疾患も考慮した個別の栄養改善計画が作成されており、臨床的にも高齢者の健康寿命の延長に寄与することが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究成果である地域高齢者の低栄養状態の早期把握手法等によって、平成18年4月施行の地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付において活用される「基本チェックリスト」及び平成17年度厚生労働省老人保健健康増進等補助金「介護予防サービスの実施プログラムの開発及び提供支援体制の検証事業 介護予防サービスの提供に係るマニュアルの開発に関する研究 2」栄養改善マニュアルの作成」(主任研究者 杉山みち子)の開発が行われた。一方、当該マニュアルの実施可能性や課題は、本研究によって検証された。
その他行政的観点からの成果
本研究成果に基づいて、平成18年4月施行の地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付における要介護非認定者及び要支援者に対する低栄養状態のおそれのある者の把握及び栄養改善サービスの制度づくりが行われた。さらに、その業務のあり方を示した栄養改善マニュアル(主任研究者 杉山みち子)の開発が行われた。また、当該マニュアルに基づいた試行は、本研究において全国7市町村及び13通所サービス事業所において事例研究として行われ、これらの研究成果は、この度の介護保険制度改正に対して直接的に活用された。
その他のインパクト
本研究成果は、平成18年3月11日、財団法人 長寿科学振興財団 研究成果発表会(一般向け)「介護予防のための低栄養スクリーニングに関する研究報告「食べること」を通じて「活動的な85歳」になるために」(神奈川県立保健福祉大学)として、約600名の参加者を得て公表した。また、当日の教材である研究事例報告書は、平成18年度施行の地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付の担当関連者からの要望が多数あり、その円滑なる推進や啓発に寄与するための書籍として全国普及した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
地域支援事業特定高齢者施策及び新予防給付「栄養改善」事例研究集-介護予防ケアマネジメントから栄養改善サービスへ-、日本健康・栄養システム学会、東京、212頁、2006.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
財団法人長寿科学振興財団研究成果発表会(一般向け)「介護予防のための低栄養スクリーニングに関する研究報告「食べること」を通じて「活動的な85歳」になるために」(神奈川県立保健福祉大学)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-