在宅要介護者に対するリハビリテーション医療介入-要介護状態が改善可能なケースの効率的スクリーニングと効果的介入のためのモデルシステム構築に関する研究-

文献情報

文献番号
200500297A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅要介護者に対するリハビリテーション医療介入-要介護状態が改善可能なケースの効率的スクリーニングと効果的介入のためのモデルシステム構築に関する研究-
課題番号
H16-長寿-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
里宇 明元(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷 公隆(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学)
  • 大塚 友吉(国立病院機構東埼玉病院)
  • 藤本 幹雄(美原記念病院)
  • 藤原 俊之(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学)
  • 出江 紳一(東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野)
  • 藤原 泰子(済生会三田訪問看護ステーション)
  • 沼田 美幸(セコム医療システム株式会社)
  • 太田 喜久子(慶應義塾大学看護医療学部)
  • ラウ 優紀子(慶應義塾大学SFC研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,593,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限られた専門的リハを提供するための人的・物的資源を有効に活用し、要介護者のニーズに応えていくためには、維持期においてリハ医療介入の必要性が高いケースを効率的にスクリーニングし、地域資源の連携による効果的な介入を保証するシステムが不可欠である。平成17年度はリハ適応判定の指標となる介入効果の実証と、リハの必要性を判断するスクリーニング法の開発をすすめるとともに、モデルシステムの試験的な運用を行い、その拡張へ向けた検討を開始した。
研究方法
1)介入モデル地域における訪問リハ事業の実態を調査した(n=499)。
2)FIM短縮版の得点分布からリハの必要性を判定する方法(mini FIMスクリーニング法)を考案し、その判定精度を検証した(n=32)。
3)「世田谷区在宅リハ相互補完モデルプロジェクト」を創設し、スクリーニングから介入、継続的アプローチに至るシステムの試験的運用をモニタリングした(n=119)。
結果と考察
1)日常生活自立度はA2からA1、B1からA2の改善が多く認められ、外出を可能とすることを目標とした介入が効果を挙げていた。訪問リハサービスの位置づけを浸透させることがスムーズな介護保険サービスの運用につながるものと考えられた。
2)FIM短縮版の得点分布が1ー3点、5ー7点から逸脱するケースをスクリーニング陽性としたところ、精度は感度0.71、特異度0.78であった。今後の活用が期待される。
3)スクリーニングモデルの運用
モデルには訪問リハ事業を中核とし、慶應義塾大学病院リハ科、3カ所の訪問看護ステーションが参加した。14名がリハの適応があると判断され、2名については訪問リハが開始された。介入に至った症例は限られていたが、サービス利用開始からリハを見据えたケアマネジメントを行うことの重要性が改めて示唆された。
4)リハ医療連携システムの提言
 これまでの一連の研究の成果をもとに、リハに関わる大規模な診療連携体制を構築するための研究を企画した。
結論
われわれが開発したADL評価尺度、リハ介入指標、スクリーニング手法は介護保険被保険者における生活機能の底上げに大きく寄与すること期待され、急性期から維持期にかけたリハの連携方策を検討する上で非常に重要な役割を果たすものと考える。今後はこれらを活用し、要介護度が改善しうる症例に関して集中的なリハ介入を進め、医療経済学的観点からもスクリーニングの有効性を検証していきたい。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200500297B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅要介護者に対するリハビリテーション医療介入-要介護状態が改善可能なケースの効率的スクリーニングと効果的介入のためのモデルシステム構築に関する研究-
課題番号
H16-長寿-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
里宇 明元(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷 公隆(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学)
  • 大塚 友吉(国立病院機構東埼玉病院)
  • 藤本 幹雄(美原記念病院)
  • 藤原 俊之(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学)
  • 出江 紳一(東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野)
  • 藤原 泰子(済生会三田訪問看護ステーション)
  • 沼田 美幸(セコム医療システム株式会社)
  • 大田 喜久子(慶應義塾大学看護医療学部)
  • ラウ 優紀子(慶應義塾大学SFC研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 仮の要介護状態スクリーニングとリハサービス提供を系統的に行う地域リハ体制の構築を目標とし、(1)在宅場面で簡便に利用できるADL評価尺度(FIM短縮版)の開発、(2)専門的リハの位置づけを明確にするための実態調査、(3)仮の要介護状態をスクリーニングする方法の開発に取り組み、これらの成果を統合してモデルシステムの試験的運用を行った。
研究方法
1) FIM短縮版を作成するために、FIM運動項目の中から7項目を選出して、13項目の評価点数を予測した期待値と実測値との一致率を比較した(n=398)。
2) 東京都世田谷区における訪問リハに関するカルテ調査を行った(n=449)。
3) リハ適応判定シートを作成し、感度、特異度を計算した(n=108)。また、モデル事業におけるリハ適応患者(n=32)のFIM短縮版得点分布をもとに、mini FIMスクリーニング法を開発した。
4) 仮の要介護者に対するスクリーニングのための地域リハモデルシステムを運用し、一連の過程をモニタリングした(n=32)。
結果と考察
1)FIM短縮版は、13項目の評価と高い一致率を示した。FIM短縮版は回復期から維持期にわたるADLの評価において、優れた一貫性を有する評価法であるといえる。
2) 訪問リハ介入期間の中央値は139.0日で、日常生活自立度はA2からA1、B1からA2への移行が多くみられ、59.0%の症例において改善が認められた。訪問リハの位置づけが地域に浸透することで、スムーズな介護保険の運用につながるものと期待される。
3)リハ適応判定シートの精度は感度0.54、特異度0.66、mini FIMスクリーニング法は感度0.71、特異度0.78であった。両者を組み合わせれば、より精度の高いスクリーニングを行うことが可能である。
4) モデル対象者のうち14名がリハ適応ありと判断されたが、介入が開始されたのは2名であった。介護保険サービス利用開始からリハを見据えたマネジメントを行うことの重要性が示唆された。
5) これまでの一連の研究の成果をもとに、リハに関わる大規模な診療連携体制を構築するための研究を企画した。
結論
 われわれが開発したADL評価尺度、リハ介入指標、スクリーニング手法は介護保険被保険者における生活機能の底上げに大きく寄与すること期待され、急性期から維持期にかけたリハの連携方策を検討する上で非常に重要な役割を果たすものと考える。今後はこれらを活用し、要介護度が改善しうる症例に関して集中的なリハ介入を進め、医療経済学的観点からもスクリーニングの有効性を検証していきたい。

公開日・更新日

公開日
2006-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500297C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)適切なリハビリテーション医療介入により要介護状態の改善が可能な「仮の要介護状態」の概念を提唱し、その実態を明らかにした。2)国際的に普及しているADL評価尺度であるFIMを元に、地域の現場で利用可能な必要最小限の項目から構成されるFIM短縮版(Min-FIM)を多数例の統計学的検証を通して開発し、その精度と交差妥当性を検証した。3)Min-FIMの項目別得点分布から「仮の要介護状態」をスクリーニングする手法を開発し、その精度をモデル作成群および独立した2つのサンプルで検証した。
臨床的観点からの成果
リハビリテーション専門医を含むリハビリテーション専門職の絶対数が不足する中で、地域の現場で直接利用者と接する機会の多い訪問看護師、ケアマネージャー等の地域リハビリテーション関連職種が、簡単かつ高い精度で「仮の要介護状態」をスクリーニングするためのツールが確立された。これをもとに、効率的に専門的リハビリテーション医療介入を提供するためのモデルシステムが構築され、対象者の機能・QOLの向上に役立てられた。
ガイドライン等の開発
該当せず。
その他行政的観点からの成果
1)世田谷区において行政と協力して「世田谷区在宅リハビリテーション相互補完モデルプロジェクト」を創設し、スクリーニングから介入、継続的アプローチに至るシステムの試験的運用を行った。2)モデルの長期運用による介入効果の検証を進めるべく、FIM採点機能を組み込んだオンライン登録システムを導入し、幅広い運用を開始した。3)「仮の要介護状態」の発生そのものを予防するために「大都市圏脳卒中診療連携体制の構築事業」を新たに提案し、厚生労働科学研究費の助成を受けて、研究事業を開始した。
その他のインパクト
研究成果を第13回高度先進リハビリテーション研究会(2005.2.26、東京)、脳卒中リハビリテーション研修会(2005.3.18、東京)、第67回尾道市医師会高齢者医療福祉問題・特別講演会(2005.4.15、尾道)、岡山県医師会主治医意見書・在宅医療研修会(2005.6.12、岡山)、世田谷区リハビリテーション講演会(2005.6.25、東京)、宮崎市郡医師会講演会(2005.10.7、宮崎市)にて紹介し、総計約1,000名の医療福祉関係者、市民への啓蒙活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山田深、里宇明元
仮の要介護状態とその対策
リハビリテーション医学 , 42 (10) , 690-696  (2005)
原著論文2
Yamada S., Liu M., Hase K., et al
Development of a short version of the motor FIM for use in long-term care settings.
J Rehabil Med , 37 (1) , 1-8  (2006)
原著論文3
山田深、大田哲生、里宇明元
FIMオンライン採点支援プログラム「iFIM」の開発
総合リハビリテーション , 34 (1) , 69-76  (2005)
原著論文4
山田深
廃用症候群の地域リハビリテーション
クリティカルプラクティス , 25 (5)  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-