介護予防筋力向上トレーニングの効果の検討

文献情報

文献番号
200500296A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防筋力向上トレーニングの効果の検討
課題番号
H16-長寿-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大渕 修一(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団/東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古名 丈人(札幌医科大学 保健医療学部)
  • 渡辺 修一郎(桜美林大学大学院 国際学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、虚弱高齢者を含む地域在住高齢者を対象に大規模な無作為化比較対象実験(RCT)によって筋力向上トレーニングを主体とする包括的高齢者運動トレーニング(CGT)が及ぼす身体機能への影響に関して検討することを目的に実施された。本研究は、運動介入1年後の身体機能および健康関連QOL、IADL、認知機能について追跡調査を実施し、高齢者におけるCGTトレーニングの効果を検討した。
研究方法
対象者は平成16年度(平成16年11月から平成17年2月)の運動教室(CGTトレーニング)もしくは健康教室(対照群)に参加した高齢者138名とした(要支援および要介護1を含む65歳以上の地域在住高齢者:東京都板橋区、神奈川県相模原市・横須賀市)。測定項目は身体機能として握力、膝関節伸展筋力、開眼・閉眼片足立ち時間、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed Up & Go、普通・最大歩行速度を測定した。また、健康関連QOL(SF-36)、IADL(研式活動能力指標)および転倒歴について聴取を行った。認知機能テストには反応時間(前頭葉機能検査タスク・スイッチング課題)を用いた。実施機関は平成18年2月27日から3月9日とした。
結果と考察
本研究には、教室参加者138名中119名の高齢者に協力が得られた。分析の結果、トレーニング群は、快適歩行速度、最大歩行速度、開眼片足立ち時間、TUG最速度それぞれについて1年後に高い値を示した。しかしながら、対照群においても同様の結果が認められた。このことから、両群におけるこれらの値の向上は単なる測定上の環境要因などによる可能性も否めない。ところが、興味深いことに下肢筋力に関しては対照群の値の低下に比べて、トレーニング群の低下は緩やかである傾向が見られた。したがって、トレーニング群は、対照群に比べて筋力や筋量の低下を遅らせることができた可能性が考えられる。一方、健康関連QOL、IADL、および認知機能に関しては、1年後に大きな変化は認められなかった。
結論
トレーニング群において、1年後の身体機能への明らかな効果は認められなかった。しかしながら、下肢筋力、歩行速度およびTUG最速度について維持・改善傾向があったことから、何らかの積極的な効果があった可能性は否めない。一方、健康関連QOL、IADL、および認知機能について、CGTトレーニング1年後の明らかな維持・改善効果は認められなかった。

公開日・更新日

公開日
2006-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200500296B
報告書区分
総合
研究課題名
介護予防筋力向上トレーニングの効果の検討
課題番号
H16-長寿-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大渕 修一(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団/東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古名 丈人(札幌医科大学 保健医療学部)
  • 渡辺 修一郎(桜美林大学大学院 国際学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険施行以来、介護保険にかかる費用は増加を続けている。今後の高齢者数の増加を鑑みると、要介護率を低下させる予防的な介入の開発が急務である。中でも高齢者の身体機能低下は要介護へと至る主要因に挙げられているものの、身体機能を直接的に向上させることを目標とした高齢者に対する筋力向上トレーニングの有用性に関しては未だ議論を残したままである。本研究は、虚弱高齢者を含む地域在住高齢者を対象に大規模な無作為化比較対照実験によって筋力向上トレーニングが身体機能、健康関連QOL、IADLおよび認知機能に及ぼす影響に関して検討することを目的に実施された。
研究方法
本研究では、要支援および要介護1を含む65歳以上の地域在住高齢者240名を募集した。その内、本研究事業参加者は170名であった。参加者171名をトレーニング群85名と対照群86名に無作為に割り付けた。トレーニング群は、週2回、3ヶ月間の高負荷筋力トレーニングを中心とする運動介入を行い、対照群には月2回の頻度で健康・食事・認知機能に関する健康教室(運動介入は一切実施しない)を開催した。介入の前後および1年後に身体機能、健康関連QOL、IADL、および認知機能調査を行い、2群間の効果を比較検討した。
結果と考察
その結果、身体機能への効果は、介入直後ではトレーニング群および対象群ともに改善が見られる項目もあるが、悪化している項目もあり、効果は限定的であると考えられた。しかしながら、1年後のトレーニング群において下肢筋力、動的バランス能力が維持・改善傾向にあったことが認められた。健康関連QOL(SF-36)は、介入直後の調査で「心の健康」について顕著なトレーニング効果が認められた。しかしながら、1年後に同様の効果は得られなかった。一方、IADLおよび認知機能については、介入の効果は認められなかった。
結論
以上のことから、本研究の結果、地域在住高齢者に対する筋力向上トレーニングは、身体機能、IADLおよび認知機能に対して明確な効果は認められなかったものの、トレーニング直後の健康関連QOL、特に心の健康に著名な効果があるものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500296C