ES細胞からの腎臓細胞誘導法の開発

文献情報

文献番号
200500190A
報告書区分
総括
研究課題名
ES細胞からの腎臓細胞誘導法の開発
課題番号
H17-再生-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西中村 隆一(熊本大学発生医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 千余子(熊本大学発生医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本で腎不全により人工透析を受ける人は年々増加しているが、腎機能を回復させる画期的な治療法はいまだ存在しない。腎臓領域に再生医療を導入しようとするときに決定的に欠けているもの、それは腎臓前駆細胞を検定する系である。我々は、前駆細胞が存在する発生期腎臓を用いて、前駆細胞を同定する系を確立したので、これを基盤にES細胞からの誘導を試みる。より長期的には、腎臓誘導条件を広く開示すれば、骨髄間葉系幹細胞など多領域の研究者の参入が期待でき、飛躍的に実用性が増すであろう
研究方法
本計画ではES細胞から腎臓前駆細胞への誘導を目指す。前駆細胞の同定には上述のコロニーアッセイを使用する。ESの分化系としては2次元に展開する方法を主として使用する。この利点は、分化誘導後再解離が容易でFACSが可能であること、かつ側方中胚葉と沿軸中胚葉を誘導できることである。腎臓はこの2つに挟まれた中間中胚葉から生じるので、この方法で誘導された中に腎臓前駆細胞を含む集団があると考えている。
結果と考察
我々の単離したSall1は、腎臓前駆細胞集団である後腎間葉に発現し、かつノックアウトマウスは腎臓を欠損する。さらにSall1の遺伝子座にGFPを導入したマウスの胎児期腎臓からGFPが高発現する細胞群を選別し、Wnt4を発現するフィーダー上で培養すると、1個の細胞からコロニーが形成され、糸球体や尿細管という多系統へ分化することを見いだした。さらにGFP高発現の細胞群を再凝集させ器官培養すると、その中に糸球体様構造や尿細管様構造が認められた。よってSall1を高発現する後腎間葉細胞中に腎臓前駆細胞が存在し、これは3次元立体構造を再構築できることを証明した (Development, 2006)。これは腎臓前駆細胞をprospectiveに同定する初めての系である。さらにこの系を基盤にしてES細胞からの腎臓前駆細胞誘導を試みた。
結論
Sall1を高発現する後腎間葉細胞中に腎臓前駆細胞が存在し、これは3次元立体構造を再構築できることを証明した。さらにESを2次元で分化させる方法をほぼ再現し、分化誘導した各分画をコロニーアッセイと上述の器官培養に投入して検討を開始している。18年度はこれをさらに進めるとともに、腎臓発生カスケードの上流因子の導入によって誘導の効率をあげることを試みる。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-