皮膚細胞を細胞源とする新規骨・軟骨産生法の開発と臨床応用

文献情報

文献番号
200500185A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚細胞を細胞源とする新規骨・軟骨産生法の開発と臨床応用
課題番号
H16-再生-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学大学医学部附属病院・整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 高戸 毅(東京大学医学部附属病院・口腔外科)
  • 大河内 仁志(国立国際医療センター研究所細胞組織再生医学研究部・ 再生医学)
  • 片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科ナノ工学)
  • 岡野 光夫(東京女子医科大学先端生命医科学研究所生体材料工学)
  • 川口 浩(東京大学医学部附属病院・整形外科)
  • 鄭 雄一(東京大学大学院医学系研究科骨再生医療)
  • 星 和人(東京大学大学院医学系研究科軟骨再生医療)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、量的限界のある骨髄間葉系幹細胞を細胞源とした従来の骨・軟骨誘導法に代わり、骨・軟骨分化に必要十分なシグナル伝達系を確定し、採取が容易で増殖能も高い皮膚線維芽細胞に骨・軟骨分化を誘導し、これを移植することで、新しい骨・軟骨再生治療法を確立することを目的としている。
研究方法
1.皮膚からの再生用細胞採取・培養法の開発と改良
SP細胞群と非SP細胞群に分けて細胞を分取し遺伝子発現並びに表面マーカーの解析を行った。
2.骨・軟骨分化に十分なシグナルの最適化と皮膚線維芽細胞の骨・軟骨形質転換
効率的に骨軟骨分化を誘導するシグナルの組合せをスクリーニングした。最適化シグナルによる皮膚線維芽細胞の骨軟骨形質転換を検証した。
3.人工ウイルスによる遺伝子導入法の開発と改良
人工ウィルスによる初代細胞への遺伝子導入・その細胞内挙動・遺伝子発現の持続性を検討した。
4.形質転換した皮膚線維芽細胞による細胞シートの作製法の開発
アテロコラーゲン膜上にて線維芽細胞の骨形質転換を誘導し、細胞シートを作製した。
5.骨・軟骨欠損大動物モデル(イヌ)の作製と基礎データ収集
健常ビーグル犬に骨欠損及び軟骨欠損を作製し、その自然経過を追った。
結果と考察
皮膚からSP細胞を単離・培養することができ、再生用細胞として有用であることが示唆された。分化シグナルに関しては、本研究で最適化された分化シグナルにより皮膚線維芽細胞からの効率的な骨軟骨分化誘導系を確立できる可能性が示唆された。ナノミセル型キャリアでは,核内転写レベルにおいても遺伝子発現が持続することにより,長期にわたる高い遺伝子発現の得られることが確認された.骨形質転換線維芽細胞シートにおいてはアテロコラーゲン膜を支持体として用いた。今後は温度感受性培養皿を用いて、担体を用いない方法を開発する予定である。骨・軟骨欠損大動物モデルの長期自然治癒過程を観察することで最適な臨界欠損モデルを確立でき、今後のin vivoの解析に有用であると考えられた。
結論
皮膚から色素排出能の高いSP細胞を単離・培養することができた。ナノミセル型遺伝子キャリアにより,皮膚線維芽細胞を含めた初代培養株細胞への低毒性かつ効率よい遺伝子導入が確認された.分化シグナルにより骨形質転換させた皮膚線維芽細胞シートを作製できた。また、骨・軟骨大動物欠損モデルの自然経過を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
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