医科学研究用リソースとしてのカニクイザルの基盤高度化に関する研究

文献情報

文献番号
200500131A
報告書区分
総括
研究課題名
医科学研究用リソースとしてのカニクイザルの基盤高度化に関する研究
課題番号
H15-ゲノム-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 高志(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 山海 直(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 下澤 律浩(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 揚山 直英(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 吉川 泰弘(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 藤本 浩二(社団法人予防衛生協会)
  • 数藤 由美子(日赤中央血液研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、21世紀の医科学研究用リソースとしてのカニクイザルの基盤高度化を目的として、個体レベル、細胞レベル、遺伝子レベルでの汎用性の高いリソースの整備と質的向上を目的とする。
研究方法
主として国立感染症研究所・筑波医学実験用霊長類センター(現:独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)で維持されている繁殖育成群のカニクイザルを用いて実験を行った。一部の実験については、京都大学霊長類研究所で維持されている霊長類からの抹消血を用いた。個体レベルでの動物実験は国立感染症研究所・動物実験委員会により審査・承認された後実施した。また、動物の取り扱いにあたっては、動物に与える苦痛の軽減と排除に努めた。
結果と考察
個体レベルでのリソース整備に係わる研究は、実験用霊長類の微生物学的清浄度の向上をめざし、レトロウイルスフリーのSPFザルの供給体制の確立に向けて高感度検出法、モニタリングシステムを確立した。これにより、HBV、SVV、SIV、STLV、SRV/Dに加え、EBVやCMVなどのヘルペスウイルスフリーのサルの供給を可能とする体制が整備された。胚、配偶子、細胞レベルのリソース整備における発生工学技術の開発では、効率的にサル類の成熟卵を回収する技術を確立した。各種サル類由来細胞株を樹立した。今後は細胞バンクとして、供給体制の整備をすすめてゆく。遺伝子レベルの基盤的リソースはほぼ整備できた。今後は家系解析に必須の核DNAの整備を引き続き継続し、家系性疾患ザルの遺伝解析やSNIPsを利用した疾患感受性の解析などのモデル研究に供給を予定している。汎用性の高い基盤技術として、肥満度測定技術と脳梗塞モデル作成技術を開発した。虚血モデルの開発と平行して記憶などの高次脳機能および行動異常を評価するシステムも開発中であり、カニクイザルの虚血モデルをヒトの脳血管性痴呆の病態解析、予防、治療法開発に応用するために、虚血に伴う高次脳機能の変化を詳細に検討してゆく必要がある。
結論
レトロウイルスフリーのSPFパイロットコロニーを確立した。効率的にサル類の成熟卵を回収する技術を確立した。各種サル類由来細胞株を樹立した。遺伝子レベルの基盤的リソースはBACライブラリー、核DNAライブラリー、マイクロサテライトマーカーを整備した。肥満度測定技術と脳梗塞モデル作成技術を開発した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200500131B
報告書区分
総合
研究課題名
医科学研究用リソースとしてのカニクイザルの基盤高度化に関する研究
課題番号
H15-ゲノム-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 高志(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 山海 直(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 下澤 律浩(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 揚山 直英(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
  • 向井鐐三郎(国立感染症研究所筑波医学実験用霊長類センター)
  • 吉川 泰弘(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 藤本 浩二(社団法人予防衛生協会)
  • 小倉 淳郎(理化学研究所バイオリソースセンター)
  • 数藤 由美子(日本赤十字社中央血液研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、医科学研究用リソースとしてのカニクイザルの基盤高度化を目的として、個体レベル、細胞レベル、遺伝子レベルでの汎用性の高いリソースの整備と質的向上を目的とする。
研究方法
主として国立感染症研究所・筑波医学実験用霊長類センター(現:独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)で維持されている繁殖育成群のカニクイザルを用いて実験を行った。一部の実験については、京都大学霊長類研究所で維持されている霊長類からの抹消血を用いた。また、基礎技術の開発に関してはマウスを用いた技術開発をおこなった。画像診断技術の開発は、筑波霊長類センターで定期的に実施している定期健康診断時に集中的に行った。
結果と考察
サルレトロウイルス陰性個体を隔離して確立したSRV-SPFパイロットコロニーでは、EBV、SFV、CMVの抗体陽性率には人工保育群と実母保育群で著しい差が認められ、SPF化における早期離乳と隔離飼育の有効性が実証された。効率的にサル類の成熟卵を回収する技術を確立し、安定した体外受精、体外培養技術の確立をめざす。Herpesvirus saimiri(HVS)による不死化技術を用いて、10種のサル種で31株の細胞株の樹立に成功した。家系の明らかな500家系1500頭の育成カニクイザルの核DNAを抽出し凍結保存した。カニクイザルの全ゲノムを4倍カバーするBACライブラリーを作成するとともに、カニクイザルで多型性を示す66のマイクロサテライトマーカーを確立した。繁殖育成コロニーの生理学的モニタリング技術として、肥満度測定法を開発した。汎用性の高い基盤技術として、心筋梗塞および脳梗塞モデルの作成技術を開発するとともに、加齢に伴い自然発症する循環器疾患を抽出するための画像診断技術を確立した。脳梗塞やパーキンソン病モデルなどの高次脳機能障害を伴うモデルの機能評価を目的とした行動解析、記憶能評価システムを開発した。
結論
第一期3年間で、汎用性・多目的・高品質をキーワードとする基盤的霊長類研究リソースの整備がほぼ完了した。すなわち、SPFカニクイザル、細胞株、BACライブラリー、核DNAライブラリー、マイクロサテライトマーカーである。これらのリソースを基盤として、虚血や痴呆症などの戦略的疾患モデルの戦略的リソースの開発に着手する。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500131C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 次世代の医科学研究に資する実験用霊長類リソースを個体レベルから遺伝子レベルまで総合的に整備、維持、品質管理、供給、活用するシステムを総合的に構築することを目的として、多目的利用が可能な汎用性の高い霊長類リソースとして、SPFザル、不死化細株、各種遺伝子ライブラリーおよび基盤技術を開発した。
臨床的観点からの成果
 自然発症疾患モデルとして、代謝疾患(糖尿病、高脂血症)、網膜黄斑変性症、循環器疾患の抽出法及びヒト疾患との類似性解析法を確立し、次世代の医薬品、医療技術の有効性試験に提供するシステムを構築した。
ガイドライン等の開発
サル類を用いる動物実験指針および苦痛の評価に関わるガイドラインを策定した。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
本研究で得られた成果を広く公表するため、平成17年12月にサル類を用いた医科学実験を実施している研究者などを対象として「第一回霊長類医科学フォーラム」を筑波で開催し、医科学研究用霊長類リソース整備の現状と将来について議論した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ageyama N, Hanazono Y, Shibata H, et al.
Prevention of Immune Responses to Human Erythropoietin in Cynomolgus Monkeys (Macaca fascicularis).
). J Vet Med Sci -in press-  (2006)
原著論文2
Kikuchi T, Hara M and Terao K,
Development of microsatellite marker set applicable to genome-wide screening in cynomolgus monkeys (Macaca facicularis)
Primates, -in press-  (2006)
原著論文3
Ageyama N, Hanazono Y, Shibata H, et al.
Safe And Efficient Collection of Cytokine- Mobilized Peripheral Blood Cells From Cynomolgus Monkeys (Macaca fascicularis) with Human Newborn-Equivalent Body Weights.
Exp Anim , 54 (5) , 421-428  (2005)
原著論文4
Takano JI, Narita T, Tachibana H, et al.
Entamoeba histolytica and Entamoeba dispar infections in cynomolgus monkeys imported into Japan for research.
Parasitol Res , 97 , 255-257  (2005)
原著論文5
Hara M, Kikuchi T, Ono F, et al
Survey of Captive Cynomolgus Macaque Colonies for SRV/D Infection Using Polymerase Chain Reaction Assays.
Comp Med , 55 (2) , 145-147  (2005)
原著論文6
Kimura N, Yanagisawa K, Terao K, et al
Age-related changes of intracellular Abeta in cynomolgus monkey brains.
Neuropathol Appl Neurobiol. , 31 (2) , 170-180  (2005)
原著論文7
Yoshioka T, Ageyama N, Shibata H, et al
Repair of Infarcted Myocardium Mediated by Transplanted Bone Marrow-Derived CD34+ Stem Cells in a Nonhuman Primate Model
Stem Cells , 23 (3) , 355-364  (2005)
原著論文8
Uda A, Tanabayashi K, Fujita O, et al
Identification of the MHC class I B locus in cynomolgus monkeys.
Immunogenetics , 57 , 189-197  (2005)
原著論文9
Koie H, Ageyama N, Ono F, et al
Echocardiographic diagnosis of muscular ventricular septal defect in a cynomolgus monkey (Macaca fascicularis).
Contem Topics In Lab Anim Sci , 44 , 26-28  (2005)
原著論文10
Okada, H., Hirose, H., Periyasamy, M., et al
Characterization of an immortalized oviduct cell established from the cynomolgus (Macaca fascicularis).
J. Med. Primatol , 34 , 67-72  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-