就業形態の多様化に対応する年金制度に関する研究

文献情報

文献番号
200500048A
報告書区分
総括
研究課題名
就業形態の多様化に対応する年金制度に関する研究
課題番号
H17-政策-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
財団法人 年金総合研究センター(財団法人年金総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 駒村 康平(財団法人年金総合研究センター)
  • 山田 篤裕(慶應義塾大学経済学部)
  • 丸山 桂(成蹊大学経済学部)
  • 福山 圭一(財団法人年金総合研究センター)
  • 北野 敦也(財団法人年金総合研究センター)
  • 棚橋 俊介(財団法人年金総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで正規労働者を主流とする社会を前提として整備されてきた年金制度は、近年の雇用環境の変化への対応が迫られており、その一つの選択肢としてこれまで未適用であった非正規労働者への適用拡大が挙げられよう。このような認識のもと、就業形態の多様化の現状整理、要因分析、今後の方向性の考察を実施し、制度の一元化など就業形態多様化を包含する年金制度のあり方を検討し、提言する。
研究方法
1年目に当たる本年度においては、わが国における雇用の流動化、特に非典型労働の増加が年金制度に与える影響を検証すべくアンケート調査研究を実施し、同時に海外諸国における同様の状況への年金制度における対応方法やその現状を把握すべく調査研究を行った。
結果と考察
アンケート「年金等の意識調査」から、パート・アルバイトの被用者年金及び被用者医療保険における適用率が極めて低いことや、年金制度に対する無知による未納率上昇等の結果を把握することができた。次に、企業の社会保険料負担に対する行動に関する実証的な分析をした結果、社会保険料の増加が雇用に帰着していることが示された。さらに海外諸国の現状も踏まえた調査を実施した結果、各国ではその現状に合わせた各種の対応を行っていることが判明した。
翻ってわが国での年金改革における議論では、年金の基礎知識や、保険料負担をしても老後の年金額が増加することなど、年金のメリットを十分広報する必要がある。保険料負担ばかりが取り上げられたり、年金不信が現状以上に高まったりすれば、年金議論を「わからない」とする層が「適用回避」に転じる可能性は否定しえない。
結論
年金の未加入・未納の増加による空洞化は、労働市場の流動化、非典型労働者の増加により強制徴収対象者が減少し、自発的納付義務者が増加したことによるものである。
空洞化の原因となっている人は、現在の消費を過大に行い、老後の所得保障は不十分になることから生活保護の受給対象者になる可能性もあり、本人にとっても社会にとっても望ましくない結果をもたらす。このように個人の選択が時間不整合になる場合、公的年金加入を、一種の「価値財」として強制的に消費者に購入を義務づけること、すなわち強制徴収の強化が、長期的には未納者にとっても望ましい結果となる。今日の年金の空洞化は、労働市場の変化に社会保険が十分対応できなかったためであり、強制徴収の可能な範囲を拡大することが最優先の課題である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
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