社会保障と私的保障(企業・個人)の役割分担に関する実証研究

文献情報

文献番号
200500039A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障と私的保障(企業・個人)の役割分担に関する実証研究
課題番号
H15-政策-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
府川 哲夫(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大石亜希子(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 山本克也(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 菊地英明(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 佐藤格(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,699,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、社会保障と私的保障とのかかわりに着目し、公私の役割分担を明確にした社会保障パッケージのあり方について検討することを目的としている。
研究方法
本年度は、社会保障における企業負担について国際比較を行うとともに、前年度に実施したアンケート調査を用いて、社会保障や福利厚生制度に対する企業意識について分析した。また、国民年金の未加入行動の要因に関する実証分析を行うと同時に、国民年金保険料の多段階免除等の施策が経済厚生に与える効果についてシミュレーション分析を行った。
結果と考察
本年度の研究から得られる主な知見は以下の通りである。第1に、社会保障負担に関する国際比較の結果、個人負担、企業負担いずれでみても日本の負担は決して高く無いことが明らかとなった。第2に、アンケート調査より、多くの企業が社会保険料負担を高いと考えているが、一方で、企業には福利厚生制度を提供する誘因が存在することが明らかとなった。第3に、企業が福利厚生制度を提供する要因に関して経済理論分析を行った結果、企業の置かれている市場条件のみならず、企業の生産構造などの特性も福利厚生制度のあり方に影響を与えることが示された。第4に、国民年金未納行動の要因に関する実証分析の結果、その背景には逆選択や流動性制約が存在することが明らかとなった。第5に、国民年金保険料の多段階免除や基礎年金部分の消費税化が経済厚生に与える影響に関してシミュレーション分析を行った結果、これらの施策は経済厚生を悪化させる要因となりうることが示された。第6に、企業の財務戦略と厚生年金基金解散行動との関係について実証分析を行った結果、両者の間には有意な関係があることを示唆する結果が得られた。第7に、比較福祉国家論を応用した住宅政策の把握を試みた結果、わが国の住宅供給における公私の役割分担の構造は南欧諸国と類似する点が多いことなどが明らかとなった。第8に、米国の民間介護保険市場に関する文献調査を行った結果、公的プログラムの存在が民間保険市場の普及を阻害していることなどが明らかとなった。
結論
国民年金の未納・未加入対策が必要であるが、保険料の減免を行う場合には公平性を考慮した対応が求められる。また、優遇税制措置や様々な規制緩和によって企業の福祉プログラムが推進されれば、公的保障の役割を柔軟に考える余地が拡大するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200500039B
報告書区分
総合
研究課題名
社会保障と私的保障(企業・個人)の役割分担に関する実証研究
課題番号
H15-政策-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
府川 哲夫(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大石亜希子(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 山本克也(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 菊地英明(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 佐藤格(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、社会保障と私的保障とのかかわりに着目し、公私の役割分担を明確にした社会保障パッケージのあり方について検討することを目的としている。
研究方法
個別研究テーマに関して先行研究サーベイを行うと同時に、国際統計を用いた国際比較研究、独自のアンケート調査に基づく実証研究、指定・承認統計等の個票をデータの目的外申請による実証分析、シミュレーション分析、あるいは経済学、社会学の理論を用いた理論研究など多様なアプローチで研究を実施した。
結果と考察
本研究から得られる主な知見は以下の通りである。第1に、税制や社会保障制度が有配偶女性の労働供給を大きく阻害していることが明らかとなった。また、配偶者特別控除や第3号被保険者制度の恩恵を受けているのは比較的夫が高所得の世帯に多く、分配的な観点からの問題があることが明らかとなった。ただし、短時間労働者の厚生年金適用に関しては、必ずしも保険財政を改善させないことが明らかとなった。
 第2に、国民年金の未加入は、初めて加入するまでの未加入と、一度加入した後での未加入とに分類されるが、未加入者の大半が前者であり、その後加入に転じていることが明らかとなった。また、未加入問題の背景には流動性制約や逆選択の存在があることが明らかとなった。さらに、未加入問題対策としての国民年金保険料の多段階免除や基礎年金部分の消費税化は経済厚生を悪化させる要因となりうることが明らかとなった。
 第3に、社会保障における個人の負担に関して、国際統計を用いた国際比較を行った結果、個人負担、企業負担いずれから見ても日本の負担は決して高くないことが明らかとなった。一方で、企業アンケート調査の結果、多くの企業が社会保険料負担を高いと考えている実態が明らかとなった。ただし、企業自体には福利厚生制度を提供する誘因が存在することも明らかとなった。また、退職一時金制度を基礎とするCB類似制度は、従来の労働インセンティブを維持しつつ、年金財政、企業財務上の金利変動リスクを安定化するものであり、労使合意の最もしやすさという選択肢となりうることが示された。
結論
社会保障と私的保障全体でのパッケージを考えたとき、企業が正しいインセンティブに直面することが重要であり、優遇税制措置や様々な規制緩和によって企業の福祉プログラムが推進されれば、公的保障の役割を柔軟に考える余地が拡大するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
公私の役割分担を明確にした社会保障パッケージのあり方に関して検討し、それらの成果を『季刊社会保障研究』第39巻第3号に特集論文として掲載した。
臨床的観点からの成果
無し
ガイドライン等の開発
無し
その他行政的観点からの成果
無し
その他のインパクト
無し

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-