生活習慣と健康、医療消費に関するミクロ計量分析

文献情報

文献番号
200500006A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣と健康、医療消費に関するミクロ計量分析
課題番号
H15-政策-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 正立(法政大学大学院エイジング総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 角田 保(大東文化大学 経済学部)
  • 佐藤 雅代(北海道大学 公共政策大学院)
  • 鈴木 玲子(日本経済研究センター)
  • 鈴木 亘(東京学芸大学 教育学部)
  • 妹尾 渉(平成国際大学 法学部)
  • 宮里 尚三(日本大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
8,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国のミクロ計量医療経済学の解明すべき課題は数多く残されている。第一は、医療機関の受診や健診の受診に関する制度間(企業間格差、保険制度間格差、地域間格差)の差異を発生させる社会・経済的要因の分析である。第二は、健診体制と医療保険制度間の連携効果の分析である。第三は、個人レベルで医療費に大きな影響を与えていると考えられる生活習慣の計量経済学的な分析である。喫煙や飲酒などの重要な生活習慣、個人の健康状態の自己認識、医療機関の受診行動、これらの相互の関係を社会経済的な世帯属性を踏まえて分析することは、わが国については、まだほとんど手付かずのまま、残されている。本研究では、個票データをもとに、ミクロ的な視点から生活習慣と医療サービスおよび医療費の複合的な関係を明らかにする。
研究方法
 医療費と生活習慣に関する大規模な個票データを用いた統計的または計量経済学的な分析を行った。本報告では、ストレス・健康の自己評価と医療費、生活習慣病と労働時間、傷病罹患と離職行動、介護者の生活習慣、生涯医療費の推計と医療貯蓄勘定の検討、医療費のリスク調整、家庭環境と生活習慣など、家計の視点から医療経済の重要な問題について計量経済分析を行った。また、同時に、介護保険制度の効果に関する本格的なサーベイ、喫煙と医療費の基礎理論の展開、健康診断検査結果によるホームレスの健康状態の分析、なども行った。
結果と考察
 本報告では、仕事、喫煙、飲酒、ストレス、健康の自己評価について、いくつかの重要な業績を残している。ストレスと健康の自己評価について、小椋論文は、医療費は健康の自己評価に、健康の自己評価はストレスに敏感に反応しており、ストレスが上昇すると健康の自己評価が低下し、医療費が上昇するという因果関係を確認した。これらの研究は、医療には心身両面からのアプローチが重要であることを示している。
結論
 本報告では、①「大データ」(新たな113組合健保のレセプトデータとマスターデータ、国民健康保険についての5県の大規模な地域医療費パネルデータ)を用いて、生活習慣病の罹病リスク等による保険者リスク調整の分析を行ったほか、②健康診断結果と医療レセプトだけでなく、さらに生活習慣に関するアンケート実施してそこから得られた情報を用いて、健康の自己評価、ストレス、労働時間等と医療費の関係を分析した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200500006B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣と健康、医療消費に関するミクロ計量分析
課題番号
H15-政策-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 正立(法政大学大学院エイジング総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 角田 保(大東文化大学 経済学部)
  • 河村 真(法政大学 経済学部)
  • 佐藤 雅代(北海道大学 公共政策大学院)
  • 鈴木 玲子(日本経済研究センター)
  • 鈴木 亘(東京学芸大学 教育学部)
  • 妹尾 渉(平成国際大学 法学部)
  • 宮里 尚三(日本大学 経済学部)
  • 山田 武(千葉商科大学 商経学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、個票データをもとに、①医療機関や健診の受診に関する制度間(企業間格差、保険制度間格差、地域間格差)の差異を発生させる社会経済的要因、②健診と医療保険間の連携効果、③個人の生活習慣(特に喫煙や飲酒などの危険行動)と健診や医療の受診行動、等に関する計量経済学的な分析を行うことを目指していた。これらの解明はわが国の医療経済にとって重要であるにもかかわらず、十分な既存研究が存在していないエアポケット的な分野であった。
研究方法
 本研究では、医療費と生活習慣に関する大規模な個票データをもとに、ミクロ的な視点から生活習慣と医療サービスおよび医療費の複合的な関係を分析した。初年度に必要な大量の個票データを収集し、2年目、3年目に本格的な統計的また計量経済学的分析を行った。
結果と考察
 初年度は、これまで使用してきた健康保険組合による健診・医療費接合データの分析を継続したほか、新たな大規模なレセプトデータの入手に成功した。これらのデータには、本人負担の引き上げなどの重要な「自然実験」が豊富に含まれている。この反面、国民生活基礎調査と国民栄養調査は、申請が難航し、入手できなかった。
 2年目は、初年度に引き続きこれまでの接合データを用いた分析を継続し、①新たに精神疾患に関する受診行動の追加、②医療機関の受診に関する経済的なインセンティブの分析について、公的データの入手の遅延に鑑みて、③生活習慣に関する調査票を作成して、1000標本ほどの分析を追加した。
 最終年は、①生活習慣病の罹病リスク等による保険者リスク調整の分析を行ったほか、②健診結果とレセプトだけでなく、さらに生活習慣に関するアンケートを実施して得られた情報を用いて、健康の自己評価、ストレス、労働時間等と医療費の関係を分析した。しかしながら、③国民栄養調査を用いた分析は、基礎調査の入手が間に合わず、最終報告書に間に合わせることができなかった。
結論
 3年間に本研究プロジェクトから14回の学会発表が行われ、学会誌や専門書に発表された論文はすでに17編に上る。こうした精力的な研究活動の成果は、12月に提出した研究成果抄録の高い学術評価に示されたように、質、量ともに十分であったと考えられる。
 しかしここで強調したいのは、これらの研究の大部分が政策的にも重要な意味を持つものであることである。この点については、研究成果抄録の行政評価が著しく低かった点は承服できない。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究では、個票データをもとに、①医療機関や健診の受診に関する制度間(企業間格差、保険制度間格差、地域間格差)の差異を発生させる社会経済的要因、②健診と医療保険間の連携効果、③個人の生活習慣(特に喫煙や飲酒などの危険行動)と健診や医療の受診行動、等に関する計量経済学的な分析を行った。これらの解明はわが国の医療経済にとって重要であるにもかかわらず、十分な既存研究が存在していないエアポケット的な分野であった。
臨床的観点からの成果
 本研究では、医療費と生活習慣に関する大規模な個票データをもとに、ミクロ的な視点から生活習慣と医療サービスおよび医療費の複合的な関係を分析した。3年間に本研究プロジェクトから14回の学会発表が行われ、学会誌や専門書に発表された論文はすでに17編に上る。こうした精力的な研究活動の成果は、2005年12月に提出した研究成果抄録の高い学術評価に示されたように、質、量ともに十分であったと考えられる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
 一般国民への知識の提供と関心の普及・啓発活動のため、4回の国際シンポジウム(2003年12月(東京)、2004年2月(東京)、2005年8月(上海)、2006年2月(福岡))を開催し、講演者を招いた公開セミナー(4回)を行うなど積極的に活動した。また、2006年3月には小椋正立が法政大学・ドイツ連邦労働社会省主催「日本とドイツの社会保障改革とその展望」でパネリストとして講演した。これらのセミナー・シンポジウムの開催日等は、法政大学大学院エイジング総合研究所のホームページにて公開している。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
・エイジング研究のフロンティア-世界の高齢化への挑戦-・退職制度の世界的危機と日本 ・東アジアにおける高齢化問題に関する国際シンポジウム・高齢化研究の分析手法に関する日韓第二回シンポジウム  等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
鈴木 亘
「老人医療の価格弾力性の計測と最適自己負担率-国保レセプトデータを用いた検証」
『医療と介護の世代間格差』 , 33-50  (2005)
原著論文2
鈴木 亘
「平成14年診察報酬マイナス改定は機能したのか?- 整形外科レセプトデータを利用した医師誘発需要の検証」
『医療と介護の世代間格差』 , 97-116  (2005)
原著論文3
鈴木 亘
「レセプトデータを用いたわが国の医療需要分析と医療制度改革の効果に関する再検証」
『国民医療年鑑〈平成16年度版〉医療改革の視点』  (2006)
原著論文4
泉田 信行
「患者の受診パターンの変化に関する分析」
『医療と社会』 , 14 (3) , 1-20  (2004)
原著論文5
山田 武
「健康の不確実性が医療サービスの受診行動に与える影響について」
『医療と社会』 , 14 (3) , 21-34  (2004)
原著論文6
小椋 正立
「健康診断の検査は医療費の予測に有効か」
『医療と社会』 , 14 (3) , 147-173  (2004)
原著論文7
鈴木 亘
「終末期医療の患者自己選択に関する実証分析」
『医療と社会』 , 14 (3) , 175-189  (2004)
原著論文8
泉田 信行
「入院医療サービスの利用に関する分析」
『季刊社会保障研究』 , 40 (3) , 214-223  (2004)
原著論文9
田中 健一、佐藤 雅代
「個票データを用いた歯科受診動向の考察」
『季刊社会保障研究』 , 40 (3) , 244-254  (2004)
原著論文10
鈴木 亘
「急がれるホームレスの健康・医療対策」
内閣府『ESP』 , 1 , 41-44  (2005)
原著論文11
佐藤 雅代
「生涯医療費の推計-リスクと負担-」
『大阪大学経済学』 , 54 (4) , 316-328  (2005)
原著論文12
菅 万理、鈴木 亘
「医療消費の集中と持続性に関する考察」
『医療と社会』 , 15 (1) , 129-146  (2005)
原著論文13
Suzuki,W.,S.Ogura and Y. Zhou
"Long-term Care Insurance of Japan:How it has changed the way we take care of the elderly"
Geneva Association Information Newsletter , 13 , 5-8  (2005)
原著論文14
鈴木 亘
研究ノート「仮設一時避難所検診データを利用したホームレスの健康状態の分析」
『医療と社会』 , 15 (3) , 53-74  (2006)
原著論文15
Kan,M. and W.Suzuki
"The Demand for Medical Care in Japan:Initial Findings from a Japanese natural experiments"
Applied Economics Letters  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-