発達段階にある脳を対象とする携帯電話周波数帯電磁界曝露の血液脳関門に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
200401322A
報告書区分
総括
研究課題名
発達段階にある脳を対象とする携帯電話周波数帯電磁界曝露の血液脳関門に及ぼす影響に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 千代次(国立保健医療科学院(生活環境部))
研究分担者(所属機関)
  • 牛山 明(国立保健医療科学院(生活環境部))
  • 増田 宏(国立保健医療科学院(生活環境部))
  • 多氣 昌生(東京都立大学(工学研究科))
  • 渡邊 聡一(独立行政法人情報通信研究機構(無線通信部門))
  • 和氣 加奈子(独立行政法人情報通信研究機構(無線通信部門))
  • 花澤 理宏(独立行政法人情報通信研究機構(無線通信部門))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
携帯電話等の機器の安全性については、総務省の定めた電波防護指針等に則りそのガイドラインが示されているが、そのガイドラインは主に電波の発熱作用を根拠にしたものであり、非熱的あるいは長期的暴露の生体影響については、十分な科学的根拠がないため考慮されていない。一方、急速に普及している携帯電話を子供も使用していることから未完成な脳への暴露影響を懸念する研究者も存在している。本研究では、携帯電話においては頭部に接近して使用することから、高周波電磁界暴露の発育段階の脳への影響、その中でも脳の血液脳関門に対する影響の有無について脳深部で追究する。
研究方法
本研究では、ダイアリシスサンプリング法を用いて生体影響評価を行う。本法ではラットの側脳室または実質にプッシュプルカニューラを埋め込んで、側脳室からの脳髄液または間質液を経時的に回収し、回収した脳髄液に含まれるアルブミンの濃度を調べることで血液脳関門機能の障害の有無を検証する。そのためラットには予め、蛍光標識したアルブミンを血液中に流しておき、脳髄液中に漏出する蛍光を微弱蛍光検出器で定量し、脳髄液のアルブミン濃度を算出し各条件下で比較検討を行う。また本研究ではラットに最適化した高周波電磁界発生装置を使用し、その暴露評価を実験的またシュミレーションにより行うこととする。この発生装置を用いて実際にラットに暴露を行った際のバリア機能への影響を生理学的に検討する。
結果と考察
16年度においては、15年度に使用したアンテナと異なる、8の字ループアンテナを適用し、成体ラット(8週齢-)および幼若ラット(4週齢-)のラットを用いて実験を行った。本年度は、脳表面の平均SARで、2W/kg, 7.5W/kg, 35W/kgの暴露条件で30分間の連続暴露を行った際の急性影響を検討した。その結果、いずれの条件においても回収された脳髄液中にアルブミンの大量漏出は認められず、常態生理的条件と同様であった。この傾向は成体ラットのみならず、幼若ラットでも認められ、発達段階の脳においても電磁界の暴露影響は見られなかった。
結論
今年度は、8週齢以降のラットと4週-5週齢の幼齢ラットを用いて様々な暴露強度で暴露を行ったが脳髄液にアルブミンが漏出した所見は見られず、本実験条件の下では電波防護指針以下の強度の電磁界は生体影響は認められなかった。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-