居住環境に基づく感染性疾患とその管理に関する研究

文献情報

文献番号
200401315A
報告書区分
総括
研究課題名
居住環境に基づく感染性疾患とその管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
河野 茂(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口惠三(東邦大学 医学部)
  • 池田 耕一(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 鈴木 宏(新潟大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 御手洗 聡(結核予防会結核研究所抗酸菌 レファレンスセンター)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 高鳥 浩介(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 藤井 修二(東京工業大学大学院 情報理工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
居住環境中の病原微生物等の実態の把握、それによる疾病の予防を目的とした居住環境の維持管理の在り方について研究を行う。
研究方法
耐性菌の保菌調査、建築物の解体作業中の空中の粉塵・微生物の測定、角柱状酸化チタン光触媒空気浄化機の実用性の評価。稼動前後のICUや公園の空気中細菌の調査と遺伝子タイピング。パスツレラ属菌とネコアレルゲンを中心とした室内空気環境の調査。地理情報システムを用いたインフルエンザの流行、伝播状況の解析。一般家庭を対象にダニアレルゲンによる汚染のレベル,室内温湿度の1年間にわたる経時的な測定。Stachybotrys chartarumの病原性についての解析。生活環境中の真菌の具体的除去対策の検討。数値シミュレーション技術による、咳による微生物粒子の放出・拡散・輸送過程の把握、変動風吹き出しによる室内換気性能の向上と微生物排除性能向上の検討。
結果と考察
居住環境中へのメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌などの耐性菌の拡散が示唆され、保菌者の移動に伴って環境を汚染しうると考えられた。建築物の解体作業中には粉塵量が増加する傾向が認められた。角柱状酸化チタン光触媒空気浄化機は内視鏡保管庫内における細菌数を短時間の稼動で有意に減少させた。生活環境において掃除機ならびに空気清浄機で除真菌効果が高かった。S. chartarumの経気道投与により肺の間質を中心とした炎症性病変や肺動脈壁の肥厚など様々な病変を形成した。ダニによる室内環境汚染の低減化にはごく一般的な室内環境整備策が重要である。飼育ネコの80%からパスツレラ属菌が分離され、飼育するネコ数が多いほど,床堆積塵中および空中アレルゲン量が増加した。インフルエンザの流行と冬季の平均気温との関連は示されず、地理的条件や人口密度、交通網の発達関与が示唆された。微生物の拡散・輸送段階においては室内気流や換気状況が大きく関与している。
結論
各種微生物、ダニについて、疫学的調査も含めて居住環境中における実態などが具体的に明らかとなってきた。また、S. chartarumが乳児特発性肺胞出血以外の病態にも関与している可能性が示唆された。さらに数値シミュレーション技術による居住環境中の微生物の拡散様式の検討結果が、室内における微生物汚染制御に活用可能と考えられた。一部の細菌や居住環境中の真菌やダニなどの除去法についても具体的な結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200401315B
報告書区分
総合
研究課題名
居住環境に基づく感染性疾患とその管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
河野 茂(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 惠三(東邦大学医学部)
  • 池田 耕一(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 高鳥 浩介(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 鈴木 宏(新潟大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 藤井 修二(東京工業大学大学院 情報理工学研究科)
  • 御手洗 聡(結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンスセンター)
  • 高橋 光良(結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンスセンター)
  • 阿部 千代治(結核予防会結核研究所 基礎研究)
  • 岩本 愛吉(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
居住環境中の病原微生物等の実態の把握、疾病の予防を目的とした居住環境の維持管理の在り方について研究を行う。
研究方法
初年度にこの分野における国内外の文献のレビューを中心に行った後、研究者毎に具体的な調査・研究を行った。
結果と考察
国内における実態把握のための調査や、温度・湿度や空調と発症との関連性の調査、防御法に関する基礎研究が必須と考えられた。常在性の高い細菌は保菌者の行動に基づいて周辺環境を汚染し、居住環境中へのメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌などの耐性菌の拡散が示唆された。室内空気中の細菌の多くがviable but not cultivableの状態にあることが判明した。パスツレラ属菌を保有するペットを飼育している住宅の環境からは同菌は検出されなかった。角柱状酸化チタン光触媒空気浄化機は内視鏡保管庫内における細菌数を短時間の稼動で有意に減少させた。居住環境の約30%の箇所から非結核性抗酸菌が検出され、ヒトに病原性を示すものが含まれていた。インフルエンザの流行は交通網に沿って拡散する伝播様式が明らかとなり、冬季の平均気温との関連は示されなかった。居住環境中の真菌は環境により種類が異なり、簡便な方法で生細胞と死細胞との鑑別や形態の観察が可能となった。生活環境からは掃除機ならびに空気清浄機で除真菌効果が高かった。特発性乳児肺ヘモジデローシス(AIPH)の原因と考えられているStachybotrys chartarumが種々の生物活性を有し、マウスモデルで肺の間質を中心とした炎症性病変や肺動脈壁の肥厚などの病変を形成することが明らかとなった。ダニアレルゲンの簡易なサンプリング法が開発され、皮膚表面を含む種々の環境表面からのサンプリングが可能となった。室内空気環境中の微生物挙動のシミュレーションが可能となり、疾患の予防のための居住環境のあり方を考える上で有用と思われた。
結論
居住環境中における微生物やダニの実態などが具体的に明らかとなった。数値シミュレーション技術による居住環境中の微生物の拡散様式の検討結果が、室内における微生物汚染制御に活用可能と考えられた。一部の細菌や居住環境中の真菌やダニなどの除去法についても具体的な結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-